日付、時間:2003年9月24日 15:19
氏名: A.M
所在都道府県: 東京
職 業: 会社員
年 齢: 32歳
性別: female
質問:
最近、歯科治療を受けて以来、歯の治療・ケアに関心を持っています。先生の御著書やこ
のHPも参考にさせて頂いています。今回先生に質問したいことは、第一大臼歯を抜歯した後
の処置についてです。
なくなった歯を補うには、どの方法を選択するにしても一長一短があることは多くの先生
方が指摘されているようですが、そのなかでインプラントを薦める方が多いのが一般的かと
思います。先生も御著書の中でインプラントの保険適用を指摘されていたかと思います。
そうした中で疑問に思いますのは、なぜ多くの先生方が8番の再植について触れる方が少な
いのかということです。素人ながら、歯根膜が活かせるこの治療が何故あまり触れられない
のか少々違和感があります。
先生も予後が悪いということを指摘されていますが、根本的な問題はどういう点にあるのか、
いろいろ関心を持って調べてみたのですが、いまいち分かりません。よろしければ、もう少
々説明を加えていただければと思い、質問させていただきます。
感想:
先生の御著書、大変参考になりました。特に、日頃からのケアの重要性が、臨床例からも
詳細に判り役立ちました。一人の患者さんのパントモ写真が時間軸を於いて掲載されている
ことで、口の中に問題を抱えていることが将来どのようになるのかが、よく分かりました、
こうした時間経過を示した本はなかなかありませんので、先生の長年のご経験が活かされた、
患者にとって本当にしりたいことが書かれた本であると思います。
今回の質問は単なる疑問で、今現在の私の問題ではないのですが、よろしくお願いいたしま
す。
とんでもなく良い質問です。この回答は、おそらく世界中の歯医者がまともに答えられない
と思います。もし歯医者があなたと同じような疑問をもったとすれば、そして、真実を見つけ
出したとすればおそらく移植歯の寿命をもっと延ばす有効な手段を導き出すことができたでし
ょう。そして、症例によってはインプラント以上に有効な治療方法としての地位を確立してい
たかもしれません。
歯槽膿漏罹患歯は移植歯として適さないという周知の事実。そして私だけの経験ではない
はずですが、他家移植の場合、若い人の歯は寿命が短いという事実が重要なヒントになると
確信しています。歯槽膿漏罹患部分には骨が寄り付かない、若い人の歯は移植に一旦成功し
ても乳歯の歯根が吸収されるが如く歯根部分の吸収が早く5年も経たないうちにダメになっ
てしまいます。
この事実を私の理論に照らし合わせてみると、歯槽膿漏罹患部分は象牙細管内のタンパク
質が腐敗して汚物となり生体にとって異物と認識されるために炎症が成立して骨を寄せ付け
ることができません。一方歯は経年的に象牙質の石灰化程度を更新してタンパク質の含有量
が減少していきます。若い人の歯というのは当然このタンパク質の含有量が多いために、
移植後タンパク質が腐敗していきます。この腐敗したタンパク質を含む歯根部分は生体に
とって異物と認識されますので炎症を起こして、異物である歯根部分を貪触(どんしょく)
していきます。これが歯根吸収です。
ではどうすればこれを解消することができるか。タンパク質を科学的に無機質に置換する
とか、親和性の良いプラスティックなどに置き換えてやるなどの方法が考えられます。しかし、
残念なことに歯科界の異端児が唱えるたわごとですので日の目を浴びることはないでしょう。
根本的な解決が図られるまでは「移植歯の寿命は5年」その範囲内で有効と思われる場合にの
み適応症となる現実を容認しなくてはいけないと思います。