必要なことは、より完成度の高い根管治療
10mmの膿胞

日付、時間:2003年9月30日 6:33   氏名: A.T    
所在都道府県: 東京    職 業:  主婦  年 齢: 39歳      性別: female 

10mmの膿胞 質問:
 毎日上左1番によると思われる得体の知れない鈍痛と偏頭痛に悩まされています。よろし くお願いします。
1990年に上左1番右1番を虫歯にして削って詰め物をしました。1995年左1番がしみるので詰 め物を入れなおしました。2年前子供を出産後突然痛み出し近くの歯科医院へ行きました。 レントゲンを取り、膿胞、虫歯はないとことでした。けれども「こんな大きなものが入って いては抜髄以外の治療は出来ない」とのことで左1番を抜髄しました。ところが1週間、2、3、 4週間と抜髄の治療を行っても一向に痛みが治まらず歯科医も首を傾げていました。5週目に 不安に思って近くの大学病院の歯学部を受診しました。そこで総合診断部、虫歯科、口腔外 科と回され4人目の先生まで異常はないといわれました(上左右1番とも虫歯、膿胞は無し)。 5人目の口腔外科医に「歯根部に影がある。10mmの膿胞がある。7mm以下だと根管治療 も効果が期待できるがあなたのは10mmなので歯茎と根を切って膿を出したほうがいい。」 と言われました。  まず途中だった抜髄、充填を行いその後に手術をする予定でした。ところが充填後痛みが 軽くなったことと(違和感、軽い痛みがなくなったわけではない)口腔外科医が異動になって しまったこと、充填してくれた虫歯科の医師が充填後のレントゲンを見て「異常はないように 見えるけれど。」と言ったことで現在まで放置しています。その間もずっと軽い痛みはあった のですがそれまでに何度も膿胞になってしまいつらい治療の思い出があったので恐怖から受診 せずにいてしまいました。
 けれども先日9月2日長崎の「さんちゃん」(妹です)が先生のところでお世話になりまして 先生のことを知りました。最近ここ1ヶ月ほどは痛みがひどく唇がしびれたようになったり、頭 のてっぺんまで突き抜けるような焼けるような違和感があります。東京からですが受診も考えて おります。質問があります。よろしくお願いします。

  1. 以前膿胞になったとき治療には数ヶ月もかかったのですがなぜ先生の病院では治療回数が 少なくて済むのでしょうか?
  2. 虫歯治療後神経がある状態で、自発痛があると言うのはどのような状態なのでしょうか? (実は右1番も軽い痛みがあります)
  3. レントゲンをご覧にならないと診断できないと思いますが現在の私の左1番はどのような可 能性が考えられますでしょうか?その場合どのような治療が適切でしょうか?
    お忙しいところお手数お掛けしますがよろしくお願いします。
感想:
 子供のころ歯磨きをしなかったのでと毎日暗く落ち込んでおりました。でもHPを拝見して これからのことをがんばろうと気持ちを切り替えられました。ありがとうございます。

回答  嚢胞と言えども炎症が起こった結果です。炎症が起こった原因を除去して、二度と原因が 発生しないようにしてやれば永遠に炎症は発生しません。炎症によって破壊された部位は生体 の治癒能力で回復します。これが生体を扱う医療の原則です。
 この場合の原因は根管内の汚物。汚物を完全に除去して、そこに再び汚物が貯留しないよう、 完全密封してやれば嚢胞の大きさに関係なく治癒します。何処まで完璧にできるかが治療の技術 ですが、基本的に1日あれば十分なはずです。この医療の原則を多くの歯科医が知らないために 原因を完全に除去しないで薬に頼ったり、結果である嚢胞を原因と勘違いして除去したり、更に は不完全な密封を行なっているのが現代歯科治療の実態だと思います。

 今回の経緯は手にとるように理解できます。つまり、すでに痛みがあって歯髄炎症を起こして いる歯に虫歯治療をしても回復の可能性は低い。これはやむを得ないこととして、歯髄が壊死し て根尖部に炎症を起こしてしまった。その際の根管治療が不完全であったためになかなか症状が とれなかったものの、不完全な根管充填でもそれなりに症状が安定したというか軽減したと推測 されます。必要なことは、より完成度の高い根管治療の一言です。

 虫歯治療後の痛みについては、歯髄に炎症が存在するということです。

初診時パノラマ
|1初診時j
|1根管充填後


返信:2003年10月1日 13:13
 お忙しいところ早速にメールをいただきまして本当にありがとうございました。
抜髄は必要なかったのではないか、痛みは原因はストレスなのではなどと悶々としていました。 今までの医院、病院ではこのようなはっきりとした説明を頂いたことがありませんでした。 やっと胸のつかえが下りた気持ちです。家族と日程を調整して予約を入れさせていただきたい と考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 もうひとつ質問させてください。
痛みを我慢できるような場合放置しておくのは構わないでしょうか?
いずれ、炎症→嚢胞→歯を失う、と言う経過をたどるしかないのでしょうか?
軽い痛みのまま付き合って行けるような場合もあるのでしょうか?

回答:
 痛みがあるということは、そこに炎症が成立しているということです。その炎症を起こすべき 原因が何であるかが特定され、それが除去できる状態であれば即刻除去するのが医療の原則です。 “痛みを我慢できるような場合”ということは原因がそれだけ小さいということです。その場合、 原因が特定できない、特定できたとしても様々な条件によって除去できなければ、「使える所ま で」とか「病気と仲良く付き合いながら」という表現の下経過観察の対象になります。
 今回のように根管治療に問題があって仮にそれが治療不可能ということであれば、経過観察の 末最終的に炎症を起こすべき原因をもった歯を抜くことにより原因の除去が完了します。何度も 治療を重ねて残存歯の状態が非常に劣悪な場合には、治療しても二度と元の状態に回復させる 見込みのない状況があります。そのような場合には、軽い痛みのまま付き合って行けるような ケースといえるでしょう。


診断:2003年10月21日 13:13
 10mmの膿胞はレントゲン的には消失しています。2年前に根管治療をされて、のう胞を 成長させるほどの汚物が除去され、それなりに適切な根管充填が為された結果だと 思います。レントゲン的には問題のないように見える根管充填も、それなりの症状が残って いる事実からそれなりの不備があるものと推定されます。
 実際に根管治療を行い過去の充填物を除去した結果、少なからずの汚物が根充剤に混入し ていました。それらを完璧に取り去り綿密な充填を行いましたので、術直後の痛みはともか く経時的に回復していくことと思われます。


返信:2003年10月24日 5:52
 お忙しいところ本当にありがとうございました。まだ痛みがありますが、ご説明を頂いて いるので不安はありません。今まで何本も抜髄してその後のう胞になり再度治療をしてきま したが、今回先生にしていただいたような根管治療を受けたことがありません。思い切って 伺わせて頂いて本当に良かったと思います。
 また先生のお話を伺って定期的に歯科を受診することの大切さを身にしみました。もし、 20年前せめて10年前に知っていたらと思いますが、これからケアをして今ある歯を大切 にしてゆこうと思いました。私だけでなく、子供にもそうさせます。もしできたら年内にも う一度、無理でも一年に一度は受診させていただきたくこれからもどうぞよろしくお願いい たします。

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