日付、時間:2003年11月25日 11:38
氏名: Y.S
所在都道府県: 東京
職 業: 会社員
年 齢: 39歳
性別: female
質問:
はじめまして。右下7番の歯周病についてです。最初は10年前炎症を起こし簡単な歯石
除去をしてもらいました。その6年後に再度炎症を起こしました。そこで群馬県にある「歯
周病は治る」という本も出版され、全国から重症患者の集まる有名な医院で切開手術を受け
「骨もできて完治した」ということで、そのまま放置しておりました。
しかし先月、再度炎症を起こし腫れてはいませんが、痛みが出てまた別の病院で診てもら
ったところ、「頬側の歯槽骨だけが、かなり減っている。他の部分はしっかりしている」と
いう所見で現在経過をみているところです。なお、この歯は虫歯により根管治療までしてい
ます。また転居のため歯科医を変えました。
質問ですが、手術後本当に完治していたのでしょうか?
また一方向だけの歯槽骨吸収の原因は何でしょうか?
もし咬合からくるのであっても、先生のおっしゃられる毎月歯石除去で現状維持が出来るの
でしょうか?
あと、他の歯茎は正常のようですが、虫歯治療歯が多く左上下567ブリッジ、根管治療も
4本あります。毎月の検診では必ずパノラマX線を撮らなければならないのでしょうか?
今後妊娠を考えていますので、被爆が気になります。よろしくお願いします。
感想:
子供の頃から歯には悩まされ続けてきました。それは通って治療した歯から悪くなるからです。
もっと早く先生の存在を知りたかったです。
現状の如何なる治療方法であっても、歯周病が完治ということはあり得ません。またその
ようなものがあると信じていたとすれば取り返しのつかない過ちを犯してしまいます。
歯茎が腫れたり痛むというような臨床症状は、歯石除去を始めとした処置により消失します
が、歯槽膿漏の本体である歯槽骨の破壊は基本的には回復しませんし、あとあとのメインテ
ナンスがなければ必ず進行していきます。反対に、或る一定以内(歯槽骨破壊1/2)であれば
メインテナンス次第で永遠に保つことができるし、1/2以上であっても相当期間機能保持する
ことができます。つまり如何なる処置よりもメインテナンスが大切ということです。
問題の歯は、当時の年齢などから推測して歯槽膿漏ではなく根管治療の不備だったのでは
ないかと思われます。そして、現在の症状はその再発。根管治療の不備から来る歯槽骨の破壊
であれば骨再生の可能性はあります。根尖部の病巣が典型的な根尖病巣の形態をとらずに、
歯槽膿漏の破壊に似た形態をとった場合にはよく混同されてしまいます。基本的には歯石除去
を始めとした歯槽膿漏の処置およびメインテナンスが必要ですが、当面の対処としては当該歯
の根管治療が必要ではないかと思われます。
症状の全くない無髄歯は無理やり治療する必要はありませんが、将来にかけて何らかのトラ
ブルを引き起こす可能性は否定できません。また、毎月のメインテナンスに際してその都度
パノラマを撮ることはあり得ないことです。
感想:
お忙しい中、迅速な回答ありがたいです。国内の歯科医がみな先生のように患者中心に考え
てくれるようあって欲しいものです。
回答:
検診の効果だけを優先させれば毎月でもレントゲンは欲しいものです。しかし被爆のことを
考えれば、全体をみるパノラマ撮影はせいぜい1年に1度が限度でしょう。保険請求規則でも
1年に1度が限度です。更に現実の問題としては、異常を疑う場所についてはその都度小さ
なデンタルサイズで確認する以外に、総覧的なパノラマ撮影は数年に一度程度という対処に
なるでしょう。
毎月歯石除去を主体としたメインテナンスを行なっていれば、むし歯の発生や進行を抑制す
るだけではなく、ブリッジ破壊の最大要因である“片側脱離”も効率良く見つけ出すことも
できますので非常に有益です。