歯科治療の正しい知識を身に付けてください。
治療の直後から

日付、時間:2003年12月9日 22:10   氏名:  S.T  
所在都道府県: 福岡    職 業:  主婦  年 齢: 30歳      性別: female 

治療の直後から 質問:
 はじめまして。私は現在、大学病院で治療を受けています。自分では歯磨きをきちんとし ていたつもりだったのですが、歯と歯の間の虫歯が8本もあると知って、とてもショックを 受けました。
 1週間前に右上の5,6番と6,7番の歯と歯の間の虫歯を治療しました。6番と7番は 昔、かみ合わせの部分の虫歯治療をして、銀を詰めていたのですが、今回の治療でそれをわ ざわざはずしてから虫歯を削られました。事前にきちんと説明がなかったので、削られた後 に質問したら、歯と歯の間からかみ合わせの部分まで銀のインレーをつなげてかぶせるとい うことでした。素人考えでは、歯と歯の間から削って、プラスチックを詰めればすむのでは ないかと思ったのですが・・・どうなんでしょうか?
 それから今回の治療の直後から痛みがでています。噛むと根っこに響く感じで、冷たいも のや熱いものがすごくしみます。なにもしなくても鈍痛があります。そのことを先生に言っ たのですが、削った刺激で一時的に神経が興奮しているんでしょうということで歯にお薬を 塗ってもらい、痛み止めを飲んでいます。先生はそれで1週間ぐらいで治まるでしょうと言 っていましたが、1週間たった今もまったく治まる気配がありません。小さい虫歯と言われ ましたが、かなり削られてて、ビックリしました。削り方が悪かったとかそんなことはない でしょうか?
 今レーザー治療とか削らない方法がありますが、そういう方法だったら神経に刺激を与え ず痛みもでなかったかもしれないなどと考えてしまいます。まだまだ虫歯があるので治療し なければいけませんが、また今回みたいなことになったらと思うと不安でたまりません。

回答  歯医者の方にも色々と問題があって、結構このホームページでは歯科医の批判もしており ます。しかし、お問い合わせの件については全面的に患者さんの理解不足というか知識不足 による誤解であって、この手の考え方の延長が多くの歯を失う結果をもたらします。

 まず30歳にもなれば治療すべき大きさかは別にして、むし歯のない歯なんてないと考える べきです。本来もっとマメに通ってもっと小さなうちに見つけて治療しておくべきです。ま た歯磨きをしていても現状のケアでは必ずその程度のむし歯ができてしまいますので、歯磨 き以上のケア(毎月歯石除去と検診)を行なって発生自体を抑制する必要性にも目覚めるべ きでしょう。これは今後必ず訪れる末期の歯槽膿漏に対しても非常に有効です。

 さて現状では患者さんが自分でも感じる必然性を感じた時点で歯医者に行くわけですが、 その時点ではすでに手遅れな状態が多く、我々としてもその状態に応じた治療を選択せざ るを得ないのが実情でしょう。「与えられた条件の下で最善を」というわけですが、それ は必ずしも満足の行くものばかりとは限りません。
 例えば治療後しみるという状況に関しても、もっと早ければしみなくて済む時期が必ず あるはずです。定期的に検診していれば「これ以上進行すると治療後がヤバイ」と判断し た時点で治療できます。ところが、来た時すでにヤバイ状態だったらどうでしょう。ヤバ イから見て見ぬふりをすることも選択肢としてはありますが、通常治療するでしょう。

 隣接面にあるむし歯は、前歯だと審美性を優先して歯と同色のレジンを詰めます。とこ ろが臼歯部は強度を優先して通常金属を詰めます。そのことを事前に説明すべきだとは 思いますが、処置自体は正当ですので不信感を持つほどでもないでしょう。
 レーザーは思っていらっしゃるほど有効な治療方法でない上に、保険適応外ですので 高額な治療費が必要になります。また今でも相応の苦痛はあるとは思いますが、それを 避けていてはもっと地獄みたいな治療が待ち受けていることを知識として知っておくべき です。このホームページに寄せられた質問をみれば、どれだけ多くの人がその出口のない 地獄をさまよっているかが分かっていただけると思います。
 歯医者が得意な治療というのは、今あなたが受けている治療が限界です。望むべきは もっと早期であることでしょう。切れば痛いのは当たり前、削ればしみるのも当たり前。 そんなレベルで不信感を募らせて、本来信頼できる治療を拒否したならば、これから先 本当に信頼できない治療ばかり受けなくてはなりませんよ。
 このホームページには色々な知識がイヤというほど詰まっていますので、是非しっか り勉強して歯医者を正しく利用するようにして下さい。


返信:2003年12月10日 16:49
 昨日質問した者です。早速、ご回答いただきましてありがとうございました。
今日は、大学病院の予約日だったので行ってきました。昨夜気づいたのですが、痛む歯(右 上6,7番)の歯茎よりもっと上の骨あたりが押すと痛むので、先生に質問したら、麻酔の せいかもしれないと言われました。今まで麻酔は何度もうけたことがありますが、骨のあた りが痛むのは初めてです。こういうことってあるのでしょうか?
 私は今年の9月から大学病院に行ってます。その直前までは、開業医の歯医者さんに2年 ほど前からかかっていました。しかし、根管治療の不備、麻酔の失敗による知覚麻痺、誤診 などが相次ぎ、信用できなくなりやめました。その歯医者では隣接面の虫歯が2本あると言 われ、でもそんなに大きくないからフッ素を塗って進行しないようにしたほうがいいという ことでそのままにしていました。でも大学病院では8本も指摘され、すべて治療が必要とい うことで、なぜこんなに違いがあるのかと思いました。歯に関する本をいろいろだしている 医療ジャーナリストに紹介してもらった、福岡では5本の指に入る名医?にかかって大変な 目にあいました。そういう経験からどうしてもちょっと何かあると、先生に不信感をもって しまうのです。しかし、治療はしていかないといけないので、自分自身、もっと勉強して正 しい知識を身に付けなければいけないと思います。こちらのホームページで勉強させていた だきます。お忙しい中、ご丁寧にご回答いただきまして、本当にありがとうございました。

回答:
 例えば集団検診で予防注射をした場合、内出血で患部が紫色になる人がいます。何処にどの ような血管が走っているかわからない状況で注射をするわけですから確率はともかく必ず数% の人に起こり得るリスクです。同じように麻酔注射をする限り少ない確率ですが、必ず何らか のトラブルが生じることは明らかです。但し、麻酔によるトラブルは通常無視できる範囲であ り、しかもその程度のトラブルがあるからと麻酔なしで処置を行うことはできません。また、 麻酔に代わるより安全な方法もありません。
 “痛むのは初めてです”程度の確率で起こる避け様のないトラブルだという認識が必要でし ょう。私の医院でも同様のトラブルはあります。「こんなこと初めてだ」と怒って来なくなっ た人もいらっしゃいます。私の立場からすれば、治療の良し悪しを判断する基準でない出来事 で大きな判断ミスをされたと思います。


返信:2004年1月20日 15:56
 こんにちは。去年12月9日に虫歯治療後の歯の痛みに関する質問をした者です。相変わら ず、右上6番と7番が痛いです。金属を被せてから、冷たいものや熱いものの凍み方が酷くな りましたが、1ヶ月ぐらいでだいぶ治まりました。でも、ひとつ気になることがあります。そ の治療した歯の歯茎に硬い米粒ぐらいの大きさの膨らみができて、すごく痛みます。 先生はその部分から膿や出血があるわけじゃないし、どうして痛むのかわからないと言われま した。でも痛いのだから何か原因があると思うのですが、河田先生はどう思われますか?

 それとまた別の歯なんですが、今一番悩んでいるのが左下7番です。大学病院で再々根管治 療中です。最初は近所の歯医者で抜髄しましたが、根充材が根っこの先までぜんぜん入ってな く、痛みも治まらなかったので、歯内療法認定医の先生を探して、再根管治療してもらいまし た。でも1年後痛みだして、またその先生の所に行きましたが異常なしと言われ、その後も痛 みが治まらなかったので、大学病院に行きました。レントゲンの結果、根っこの先に病巣がで きていて、根充材が根っこからかなり漏れていました。3回目の根管治療はうまくいくかわか らないけど、やってみてダメだったら、再植か最悪抜歯と言われました。今は根っこから漏れ た根充材はとれたのですが、その後出血するようになって、出血が治まらないと掃除ができな いということで、そこから先にすすみません。痛みがひどくてリンパ腺も腫れて、なんとか痛 み止めでしのいでいます。なぜ出血するのでしょうか?このままだと抜歯になるかもと言われ、 大変ショックを受けています。担当の先生が歯内治療科ではなく、歯周病科の先生なので技術 的にどうなのかと思います。左下6番の抜髄もその先生が担当でしたが、レントゲンを見ると 根充材がきっちり入ってなく、隙間があったのが気になりました。でも先生は成功したと言う ので、何も言えませんでした。仮歯を今日入れましたが、痛くて噛めません。もうかれこれ大 学病院での治療は4ヶ月経とうとしています。この先どうなっていくのか不安でたまりません。

感想:
 河田先生のホームペ−ジは本当に勉強になります。近くであれば先生にすぐにでも診てい ただきたいのですが、遠いので残念です。

回答:
 右上6番と7番は歯髄壊死を起こして、根尖病巣に発展している可能性が高そうですね。 “膿や出血があるわけじゃない”のと、日にちが経っていないのでレントゲンでも確認し 難いとは思いますが、状況からは明らかに歯髄壊死です。確認が取れ次第根管治療を行なう 必要がありそうです。
 歯周病認定医の私が言うのも何ですが、専門の歯内療法認定医ですら怪しげな治療および 治療結果です。日本の(世界も似たようなもの)最高水準がその程度だという認識をあなた に限らず国民全てが認識すべきです。“神経をとったら痛みもなく生涯使えるはず”と思う 気持ちが様々なトラブルや損失を招いています。そのような現実の中で最善の方法が神経を 取らずに健やかな歯を生涯残す努力(夢じゃなく本当にあるのだから)だというのが私の持 論です。これはすでに神経を取った歯にはあてはまりませんが、おそらく多数残っているは ずの健全歯については今からでも間に合います。
 その上でトラブった歯については、認定医に限らずそれ以上の能力をもった歯科医を探し 当てるか、偶然のラッキー(治療が下手でもたまには結果オーライ)を期待するか、あきら めるかの何れかしかないでしょう。