日付、時間:2003年12月16日 1:05
氏名: A.T
所在都道府県: 東京
職 業: 主婦
年 齢: 39歳
性別: female
質問:
ご無沙汰いたしております。10月21日(火)に東京から受診させ
ていただきましたA.Tです。その節は本当にありがとうございました。その後ようやく地元の
歯科医院に通い始め新たに虫歯が見つかり治療をしています。今回はそのことで質問させて
ください。よろしくお願いいたします。
感想:
このHPがあって本当に良かったです。予防を怠りそうになったときはここへ来たいです。
審美に関する価値観は個人によって大きく異なりますので、最終判断は患者さん自身に決め
ていただくものです。前歯部に近く、相当大きなインレーですので審美的な価値は大きいと
思います。しかし機能的な側面からみれば圧倒的に金属の方が有為です。「レジンの構成構成
部分であるモノマーが象牙細管を伝って歯の神経を腐らせる」と言うのは歯に直接レジンを詰
める場合(質問2のケース)であって白いインレーそのものは為害作用はないと考えても大丈
夫です。ところが、何と言っても破折し易い。その欠点をカバーするために多くの場合レジン
系のセメントを使って歯と一体化を図ります。そのレジン系セメント自体に少なくなったとは
いえ、モノマーによる為害作用があります。また、装着時にはみ出したセメントを完全に除去
することが困難なために歯肉縁下の歯根などにこびりついて歯石同様、炎症を起こす原因にな
ってしまいます。
最大の危惧はインレーの破折です。破折しても気付かず数ヵ月経過すれば、急激にむし歯が
進行して簡単に抜髄になってしまいます。最近の材質はかなり強くなったとは思いますが、
そのリスクの高さは他を圧倒しています。
上34の楔状欠損は、充填の必要はありません。歯槽膿漏進行に伴って弱い歯根部が露出した
ために磨耗したものです。今後も徐々に磨耗していくものと思われますが、そのスピードは遅
く急激な破壊はありません。将来的には楔状欠損が著しくなって汚れが貯留し易い形態になっ
た場合やむし歯が発生した時点でレジン充填を行います。今すぐ充填すれば、二次カリエスが
発生しやすいだけでなく歯肉辺縁部に汚れの貯留を招き歯周疾患の進行を助長します。
歯石除去後の知覚過敏については一時的なものだと思いますので、もう少し気長に経過をみて
下さい。
また滲みていた歯はよくなってきました。
実は左上一番の変色等も指摘され「抜髄してあるので早めにかぶせた方がいい。歯が横に折れ
る分には治療できるけど縦に折れると大変だから」と言われました。
私としてはいずれはと考えていましたが、まだ数年はこのままで持たせたいと思っていたのに
ショックでした。
回答:
いかにも東京らしく、あの手この手と保険外治療を勧めてきますねぇ。一面をとらえれば、
説明の内容にも真実はありますが、たて割れたって、さし歯にするためにポストでも入れよ
うものならリスクは更に高まってしまいます。第一、10mmののう胞があって治療不可能と言
われたものを、なんとか根管治療して経過観察中なのに被せてどうするの。あとで根管治療
のトラブルが生じたら自分でも治せないのに無責任な!
根管治療の結果を十分確認して、色調が耐えられないほど変化した時点でさし歯にするべ
きです。確かに無髄歯は破折リスクがあるけれど、さし歯にはそれ以上に二次カリエス、
歯槽膿漏、たて割れリスクなどもっと大きなリスクを背負い込むことになってしまいます。
検診でインレーの破折を早期に見つけられるかどうかは確率1/2くらいです。
結局「きれいなのにしたい気持ちはあるのですが丈夫なほうがいいので」と金属をお願い
しました。えっ!ここまで説明しているのにどうしてというお顔でした。^_^;
河田先生に教えていただいてなかったら間違いなくレジンを入れていました。
正しい情報の下患者が自分で選択できるのは本当に大切なことです。私なりの選択が出来
たのは本当にお陰さまです。ありがとうございました。