日付、時間:2003年12月24日 11:19
氏名: RR
所在都道府県: アメリカ
職 業: 主婦
年 齢: 32歳
性別: female
質問:
初めてお便りさせて頂きます。今はアメリカに住んでいますが、田舎でなかなか腕の良い歯
医者もいない様に感じられます。
さて以前からちょくちょく疼く歯があるのですが、徐々に痛さが増して来て、歯もぐらぐらし
てきて、我慢できなくなり歯医者にいきました。レントゲンを撮り、右上第二小臼歯の歯の根
っこの周りに膿があるとの事。1週間の抗生物質と痛み止めが処方されました。その時は右上
犬歯も痛く感じられ、これをどうにかして下さいと頼んだのですが、次回にということでその
日は終わりました。
次回行った時その2本の歯の神経が抜かれました。犬歯はなぜ抜かれたのか分りません。第二
臼歯のほうは死んだ神経を見せてくれました。その後多分奇麗に掃除してくれたと思うのですが、
白い詰め物をしてそれで終わってしまいました。いろいろ調べてみたら神経を取った場合は何
度か消毒掃除をすると書いてあり、不安になり何度か聞いたのですがやっぱりそれで処置は終
わりとの事です。次回の時に痛みがあるかどうか教えてくれとのこと。その後、歯の痛みはな
くぐらぐらと揺れる程度でした。あ、でも、歯がむず痒い感じはありました。その事を伝えた
ら、それは歯が当たるからということで少し削られました。また膿は無くなったのかどうか聞
いてみたら、薬を全部飲んだのなら大丈夫との事。
その時は平気だったのですが1ヶ月たった現在、2本とも鈍い痛さが出てきました。日に日に
増してるような気がします。熱い物を飲んだり、アルコールを飲んだりすると鈍い痛さが増す
ような気がします。不安になりいろいろ調べていたらこのHPを見つけました。私の英語力の無
さもあるのですが、英語での会話はこまかいニュアンスがどうも上手く伝えられず、歯医者に
行くことがとても憂鬱です。
私の様なケースはどのような問題がありますか?
死んだ神経を取ったにも関わらず、取ったその日に白い詰め物をして終わりということはあり
えるのでしょうか?
また歯の根元の膿は、抗生物質を1週間飲んだだけでなくなるのでしょうか?
それから犬歯は何の問題があったのか分りませんが、痛いというだけで神経を取られましたが、
そんな事はありえるのでしょうか?
最後に、未だ歯がぐらぐらしてますし、痛さも出てきましたが、これは何が原因なのでしょう
か?
なんとなく不安で歯医者に行く気になれません。また他の歯の神経が抜かれるのではと不安で
す。なんだかいろいろと質問してしまいましたが、毎日歯の事を考えると憂鬱です。お忙しい
中大変恐縮ですが、お返事お待ちしています。宜しくお願い致します。
感想:
素晴らしいHPだと思いました。本当に助かった!という感じです。
“歯もぐらぐらしてきて、我慢できなくなり”という状態は、歯の神経がとっくに死んで腐っ
てしまったということです。その前段階の“痛く感じられ”という状態は、すでに神経が炎症を
起こし死に行く一歩手前だと想像できます。生体の末端で、限られた血流によって細々生きてい
る歯の神経は、一度炎症を起こし始めるとまず回復の見込みがありません。そして処置としては
通常抜髄になってしまうことを、本来は患者さん自身が知っておくべきだと思います。
更に神経をとった歯の予後が非常に悪い(日本では成功率50%)という背筋が寒くなるような
実態であることも知っておいて欲しいと思います。ですから、そのような不幸な処置を受けなく
て済むように手入れに行くのが歯医者だという認識をもってください。アメリカでは年2回の
歯科検診が半ば習慣化されていると聞いています。折角アメリカに住んでいらっしゃるのです
から、その良い習慣を身に付けて二度と同じ過ちを繰り返さないようにして欲しいものです。
言葉の問題もあって、抜髄の必然性がどのように説明されたかはわかりませんが、処置その
ものは正かったと思います。確かに日本では抜髄後、消毒と称して毒薬とも思える薬を数ヵ月、
時には数年にわたって貼薬するのが一般的です。私はこのような根管治療を誤った方法だと考
えています。あくまでもリーマなどにより機械的に神経を取り去ったあとは、即刻根管充填を
行なうべきです。私の医院では原則として、これらの処置を一日で済ませております。要はこ
の処置が完璧であれば100%成功と予想されますが、“完璧”は現実問題不可能です。今後痛
みが継続するようであれば、再度の根管治療が必要だと思います。もしばらく様子をみて、
どうしても痛みを感じるようなら再度の根管治療を申し出てください。
回答:
根管治療の成功率50%は、10年後に根尖病巣や臨床症状があるかどうかで判定します。10年
後は成功でも20年後がどうなるかを保証するものではありません。反対に術直後の状態も○か
×かではありません。術後直後の数日を除いて、その後何ら痛みもないものはかなりの確率で
成功に分類されることになるでしょう。しかし、根管治療および根管充填の完成度に比例して
それなりの臨床症状を呈します。何もしないのに痛むとか、柔らかいものを咬むと痛むなどか
ら、飲み物を飲んだ時に痛いとかもその範疇にはいります。本当に犬歯も神経を抜いたのとい
う疑問も残りますが、もし抜髄したのに熱い&冷たいものに反応しているとなると、改めて
根管治療をやり直す必然性を感じます。
歯医者は、抗生物質でごまかしきれればラッキーと思っているかも知れません。しばらく経
過をみて、思わしくないようなら再度の根管治療をお願いしてみてください。
10月には日本に帰る予定なのですが、あと8ヶ月ほどこのままにしておいても大丈夫な
のでしょうか?”うずき”は死んだ神経を抜く前に比べたら、我慢できます。
回答:
とにかく治療の基本は的確な根管治療です。それができれば治癒の可能性があります。
もしどうしても口腔内では“的確な根管治療”ができない場合に限って、一旦抜いて手元
で“的確な根管治療”を行なって再植するという手段があります。
日本でもそこそこに行なわれている手法ですが、現実は“的確な根管治療”という概念
がないためにほとんど失敗です。根管治療が不備であるために根尖病巣があるにもかかわ
らず根管治療はそのままで、歯を抜いて根尖病巣を掻爬してもう一度植えるわけですから
何の問題の解決にもなりません。
今から8か月、病巣が成長して隣の歯を巻き添えにする可能性は否定できません。その
場合、隣の5番も抜髄ということになりますが、4番を抜いてブリッジにする場合も5番
の抜髄になってしまいますので結果は同じようなものかもしれません。
回答:
この状況での再植は症状の改善がなく、さしずめ抜歯前のセレモニー。「色々と最善を尽
くしてみましたが…」という結果が多いようです。的確な根管治療とは、1回か2回の処置で
明らかな改善が認められるような処置をさします。具体的な術式等につきましては、本ホーム
ページの随所で申し上げておりますのでご容赦ください。
抜歯をされた場合は、症状は速やかに改善されるでしょう。しかし、ブリッジを選択した場
合には、通常隣の歯を抜髄しますので同じ問題が将来降りかかってくる可能性が高くなります。
植えられるものであれば、インプラントが最も適切な選択になると思います。放置した場合は、
それなりに問題なく経過する可能性もありますが、歯牙傾斜やかみ合わせの狂いなどの懸念が
ありますので、専門家としては正面切ってお勧めするわけにはいきません。
回答:
申し訳ありませんが、お勧めの歯医者はありません。治療日数も医院によって異なります。
早ければ根管治療だけで2・3回というのもありますが、下手をしたら数ヵ月になることも
ありますので、どちらかと言えば日本に長期滞在もしくは帰国されてからの方が良いのでは
ないでしょうか。その間、ズーと抗生物質を飲みつづけるのは問題ですが、現実問題としては、
今のように症状の落ち着いている時期もあると思いますので月に数回程度なら問題はないでし
ょう。その程度なら胎児に与える影響はないと考えても良いと思いますが、如何なる薬も絶対
影響がないとは言い切れないので少ないに越したことはないでしょう。
回答:
「治るモノは治る」納得のいく治療ができた場合には、確率90%以上で回復が見込まれます。
納得のいく治療ができるかどうか、これも確率90%です。そのために必要な治療回数は、原則
1日です。宜しければ電話で予約してください。2週間くらい先なら取れると思います。
回答:
異種金属によるガルバニー電流は有名ですが、通常すっぱい味がするとか、かみ合わせた時
に痛む程度で激痛までは起こらないと思います。該当歯の歯髄炎だと思いますがねぇ。未だに
アマルガムを使うところは如何にもアメリカらしいけど、本当に電流だったらシルバーに代え
ただけでも治る可能性はあると思いますが、どんなもんでしょう。根管治療の専門医に相談さ
れてみてはいかがでしょうか。
“むづがゆさ”は時々聞きます。冗談に「ウナコーアでも塗っといて」と言いますが、本当
の原因はわかりません。ただ、痛みを感じるほどではない炎症が存在すれば、それを痒いと
感じたりしみると感じたりすることがあるみたいです。そんなときは、まず歯石除去を行い
ますが、今回のケースでは根管治療の不備が最も疑われる炎症の原因です。
回答:
通常レントゲンでは歯髄の生死や炎症の状態はわかりません。現症と症状の発端や推移か
ら類推して判断します。1本の急性歯髄炎が起こった場合、何処が痛いか特定できないとか、
上下全てが痛い様な気がするという特徴をもっています。私の場合、そこから推定して一番
可能性のある歯が治療しなおした歯という結論です。