炎症を起こすべき原因を排除しない限り、根本的な治癒は見込めない。
根管治療のやり直し

日付、時間:2004年1月13日 12:23  氏名:  K.N  
所在都道府県: 東京    職 業:  その他  年 齢: 40歳      性別: male 

根管治療のやり直し
初診時パノラマ
|4Dental写真
|4穿孔閉鎖術後
質問:
 第2小臼歯の根管治療のやり直しに入り土台を取ることになったのですが、細く長くセメ ントが入っており根の先の所は破折の恐れがあるということで残った状態なんです。そし て、根の先は見えているので消毒剤を入れたということです。
このHPを見ると、ほとんどの土台が取れるということなんですが、こんな先だけ残った状態 でも河田先生だったら取れるということはありますか。取れない場合は消毒剤だけでリーマ できちんと根管治療をしなくてもいいものなのでしょうか。よろしくお願いします。

回答  土台の除去は結構なリスクを伴うものの、98%程度の確率で除去することが可能です。 “細く長くセメントが入っており”というのが金属ポストなのか、その先に残った根管充填材 なのか状況の把握ができません。いずれにしても、それらを除去して異物を排除することこそ 唯一の解決策ですので、それが為されていない消毒は全く無意味です。
 他の先生が試みて無理というからにはそれなりの理由があるはずです。それを確実に可能だと 言い切る自信はありません。しかし、信念と熱意が違いますので、より完璧な処置ができる可能 性はあると思います。いずれにしても、炎症を起こすべき原因を排除しない限り、根本的な治癒 は見込めないことだけは間違いないでしょう。

 


診断:
 15年前に装着したブリッジが脱離し、新たなブリッジを作り直したあとから頭痛を伴う激しい 痛みに襲われたという既往と、脱離するまでは痛みがなかったというのがキーポイントです。 問題の|4には根尖病巣らしき陰影が認められるものの、15年以上前に行なった根管治療 の割には小さく治療としては成功の部類に入ります。一方、初診時のDental写真には、金属ポス トを除去した際に、方向を誤ったことが伺われます。また、その方向の先に穿孔らしき陰影が 認められます。
 これらの状況を基に推測して|4近心側の穿孔を疑って診査した結果、予想通りの結果 が得られました。問題は穿孔の閉鎖方法です。|42根のうち頬側根管には金属ポスト、 口蓋側には穿孔があり、外科的な穿孔閉鎖が難しい状況です。また穿孔した穴が大きく、残存 歯質が少ないことから再植は抜歯時の根破折リスクが高くできるだけ避けたい選択です。結局、 通法の根管治療に準じて、穿孔を規格の大きさに拡大したのちに、根管充填を行なうこととし ました。この閉鎖の完成度に応じて予後が決定されるでしょう。完璧な治癒が見込めない場合 でも、許容範囲の痛みであればよしとしなければならないと思います。

 右下の親知らずは抜髄しなくてはならないほどの二次カリエスがありますが、それ以外の歯 に関してはむし歯・歯槽膿漏伴に年齢より数段優れた状態です。今後はケアに努め、同じ過ち を繰り返さなければ、問題の歯(右下6・左上46)以外の歯については、生涯機能する可能 性が十分あります。


報告:
 先日は河田先生をはじめスタッフの皆様には大変丁寧な診療をしていただきまして、本当に ありがとうございました(1/13 質問)。
 その後の経過なのですが、第1小臼歯の痛みはまだあるものの徐々に軽くなってはきていま す。ところが一番悩みの、不快な頭痛と体の不調がぶり返してきたんです。よくよく考えてブ リッジがはずれた頃のことを思い出してみると、新しいブリッジが入る3ヶ月余りの間仮歯もな い状態の時、歯の先の方が徐々にヒリヒリした感じで痛くなっていました。頭痛は全くありま せんでしたが。やはり根尖病巣も原因なのでしょうか。また第1大臼歯も穿孔してそれが原因 の可能性もあるけれども取れば抜歯とのことで、どちらにしても触れば抜歯になってもおかし くない状態にあるんですよね。
 それでこれからのことですが、第1大臼歯はもともと相当悪いと言われていたのでいっその こと抜歯してしまって、それでもよくならなければ河田先生に一か八か第2小臼歯の根管治療 をしていただくか。それとも逆の方がいいのでしょうか?
それか第1小臼歯が完全に痛みのひくのを待つためにもうしばらく様子を見た方がいいのでし ょうか、それとも何か他に考えられる選択肢はあるのでしょうか。よろしくお願いします。

回答:
 穿孔した第1小臼歯には2根管あります。金属ポストの入った頬側根管は何とか治療できる としても、穿孔によって方向を見失った口蓋根の方は治療できないかもしれません。近くだっ たらダメ元で何度でもやり直してみることも出来るかもしれませんが、わざわざ遠くから来て 頂くには相当勇気のいる話しです。また原因が第1小臼歯だと確定した段階ではもう少し根性 が入ると思いますが、疑わしい程度で行なえばかえって状況の悪化が懸念されます。
 かと言って、6番を抜歯した後というのももっと考え物です。穿孔確実で、根尖病巣も疑わ れる4番を残した場合、両方を失ってしまう可能性もあります。

 6番に穿孔があれば、その部位に相当する歯茎が腫れてくるはずです。4番の穿孔部分は ともかく、4番の根尖部付近および6番の周囲の歯肉を押さえて痛む場所を確認してみて 下さい。今すぐわからない場合はもう少し経過をみながらできるだけはっきり分かるまで我慢 してみて下さい。