日付、時間:2004年1月16日 11:43
氏名: かず
所在都道府県: 広島
職 業: 主婦
年 齢: 30歳
性別: female
質問:
7年程前に抜髄した右上3番の歯根嚢胞について悩んでおります。
2年半前に検診で発覚。当時は圧迫感などの自覚症状はなかったのですが、妊娠を望んで
いたこともあり根管治療を始めました。約4ヶ月で終了したものの間もなく、笑ったりし
かめ面をすると小鼻の横に強い圧迫感を覚えるようになりました。
仕事が忙しいこともあり、治療終了後から1年後に再び根治を開始(担当は同じクリニック
の他の先生に。その際、根切を薦められましたが、完治の確率は低いものの根治も不可
能ではないとの話。別の医院でセカンドオピニオンを伺ったところ、これだけきれいに根
充してあるのだから根切という判断は妥当でしょうとのこと。しかし河田先生のHPを読ん
でいたので根治を選択)。
しかし今回は、2度目の治療を始めて1年以上経った今でもレントゲンから黒い影は消えま
せん。2ヶ月前に初めて該当歯の歯茎に漏孔?ができ、生食を使って根管から歯茎の外へ
膿を押し流す処置を受けました。しばらくは圧迫感などの違和感も全く消えたのですが、
レントゲンを撮るとそれでも黒い影が映り、最近また圧迫感が出てきました。
主治医の先生は、最終段階に入っているし閉じてもいいと思うが、歯への影響を考慮
(歯折)すると3回目の根治は難しいので、再々発を危惧し閉じることを躊躇しておられま
す。そこでまた別の医院(歯周病学会の指定医)でセカンドオピニオンを伺ったところ、
嚢胞の大きさも2年半前からあまり変わっていないとのことだし、腫れや炎症もなく落ち
着いているので閉じてもいいのでは。もし再々発したときは根治しても同じことの繰り
返しなので、違和感を我慢するか根切の選択でしょう。この程度の症状でおさまってい
るのだから良しとすべしとの話でした。そこで河田先生に質問です。
根管の清掃が完全で、根管充填が完璧であれば根尖病巣は見事に治癒します。特に根尖部
閉鎖(根管充填)の精度が重要です。とは言え、現実にそれらをパーフェクトに行なうのは
至難の業です。根尖部閉鎖が不完全だと血液等がその隙間に入り込んで貯留するため腐
ってしまいます。患者さんの抵抗力にも関係しますが、基本的にはその量に比例して炎
症の程度が決まります。従って古傷が痛む程度のものであれば、不
完全ながら一応の治癒とみなして受け入れることも必要な場合もあります。
排膿は如何なる場合も?医学的に有効な手段です。そのこと自体が健康な骨に感染し患部
が広がるという懸念はありません。願わくば排膿時にニキビの芯が取れるように原因も同時
に取り去ることができれば完全な治癒も望めますが、通常は原因まで取り去ることができな
いので、一時的な消炎処置に留まります。
貼薬を長く続けられているようですが、刺激の強い、時には有害と思われる薬の交換は
病巣の治癒には結びつきません。根管内の清掃が十分できたと判断された時点(1回の治療
でも可)で綿密な閉鎖を行なって始めて病巣の治癒が始まります。確かに度重なる再治療は
根破折リスク等を伴いますので極力避けたい所ですので、できるだけ1発で決めたい所です
が、もしそれで病巣の治癒がなかった場合は再度の根管治療・根管充填を試みるべきです。
如何にレントゲン的に完璧な充填であったとしても、治癒しないということは充填が不完全
だということです。充填が不完全なまま外科的な処置を試みても治癒は望めません。もし私
の医院にいらっしゃるのであれば、根管充填をしないで来てください。
最後の質問は意味不明でどう答えたら良いのかわかりませんが、遠方の場合はあとの処置
は地元で行なってもらいます。ただ、広島くらいだとあまり遠方という意識はありません。
先生のご回答と、そこに示されていたリンク先の相談「古傷が痛む
2003年2月25日」を拝見し、今後のことをとても迷っています。現在の違和感はどうして
も我慢できないものでもなく、先のご相談者のように様子をみようかとも思いますが、こ
の方と違って私の場合レントゲンにはっきりと黒い影があります。素人考えですが、根充
をすることで膿の袋の機密性が高くなり、違和感(圧迫感)が強まるのではと不安です。
また、これから妊娠・出産を迎えるとなると、体の抵抗力や免疫力が下がり、膿の袋が大
きくなるのではと危惧しております。
最後に、主治医ほかこれまでの先生方がおっしゃるには、根管にはレントゲンには写ら
ない細く小さな神経の管が枝葉のように存在することがあり、そういった場合は根治では
取りきれない=根切とのこと。こういった場合、河田先生であっても根切という判断でし
ょうか。「抜歯前のセレモニー? 2002年3月19日」を拝見した
私の勝手な推察ですが、河田先生の処置の場合、より深く太く根管を削ることで(レント
ゲンで見る限り、初診時より根充後のほうが根管の白い部分が太くなっていると思ったの
で。)、腐敗した根充剤などはもちろん、そういった枝葉の管も取り去ることができるの
では?と思ったのですが。それと麻酔が必要なのはやはり、根尖部まで太く削るため、リ
ーマが深く入って痛いからですか?
なにかと不安でたくさん質問をしてしまいます。お手数をおかけしますが、宜しくご回答
願います。
回答:
CR充填程度で済むくらいなら即日治療は完結します。
根尖部の病巣は、根管充填しないと何時までも治まりません。充填したのち“古傷が痛む”
程度だったら許容しなくてはならない場合もあるということです。一つの歯を完璧に治療
することも難しいけれど、全ての歯を完璧に治療することなど絶対に不可能です。従って、
万が一には懸念されるような事態も想定されます。だからと言ってためらう余地はありま
せん。もし仮にこのまま経過をみていても奇跡が起こらない限り改善の見込みがないのだ
から。万が一の懸念を心配して奇跡をまちますか?
小さな神経の管が枝葉のように存在してはいますが、現実にはそれが災いすることはほ
とんどありません。メインの根管さえ抑えておけば、あとは生体の防御反応で治癒を助け
てくれます。そのメインの根管清掃すらいい加減で、それを枝葉のせいにしているだけで
す。それが“より深く太く”という結果に現れているわけです。あれは枝葉を視野に入れ
ているのではなく、メインの根管の清掃を徹底すれば(状況によって)“より深く太く”
なるということです。
回答:
教科書的に根管充填の時期は、根管内の清掃が完了し、根尖部からの排膿や浸出液が消失
した時点とされています(病巣が消失した時点とは書かれていません)。大学卒業直後の数
か月間は私も病巣が消失した時点と勘違いしていました。卒業後何年経ってもそのように
勘違いされている歯科医も多いかも知れません。
根管清掃と根充の精度によっては、膿の消失もしくは古傷が痛む程度の不完全ながら治癒
とよべるレベルが望めるかもしれない、という理解で結構です。