異物がなければ、炎症は成立しない!! 根の治療

根の治療

日付、時間:2004年2月25日 13:59  氏名:   ひろ   
所在都道府県:  東京  職 業:  会社員  年 齢: 28歳      性別:  male 

質問:
 先生はじめまして。このHPを見つけ最近歯に気を使うようになった私にはとても勉強にな ることばかり。嬉しいかぎりです、ありがとうございます。
ところでご質問なのですが、現在前歯の差し歯を変えようと歯医者へ行き、根の治療をして います。ですが普通にしていると何ともないのですが、たたくと少し痛みがあるのですがそ れはどうなのでしょうか?
以前封印されたものをきれいにしないで治療し、違う薬を使ったから混ぜ合わさって痛いとか? (封印する薬はいろいろと種類がありますよね)それとも失敗なのか?いろいろ疑問に思って います。
根の治療というのは具体的にどういうふうにするのでしょうか?
先生のご意見よろしくお願いいたします。

回答

根管治療
処置内容
ポイント
【天蓋除去】
麻酔をして歯髄部分を露出させます。
根管の位置を明示・確認。
歯根の長さを計測します。
(レントゲン撮影)
根管位置の明示には超音波スケーラーが便利です。
【機械的清掃】
リーマやファイルで機械的に腐敗した歯髄腔を拡大・清掃します。
拡大の目安は、周囲の健全牙質が削りとれるまで。
この操作が治療の決め手!
以後の根管充填・コア形成を楽にします。
【化学的清掃】
薬品を使って清掃・消毒します。
消毒はともかく、清掃効果は“?”。
洗浄に使用する次亜塩素酸ソーダは考え物。
【根管貼薬】
根管内の殺菌と、根尖病巣治療のため薬剤を詰めて仮封します。
症状によって数回薬剤を詰め替えます。
機械的清掃が完璧であれば
排膿や出血が著しい場合を除いて、貼薬は不要の行為と思います。
また汎用されるホルマリン製剤(FC)は考え物。
【根管充填】
清掃された根管腔に再び汚物が貯留しないように(レントゲンで確認の上)綿密に封鎖します。
親和性の良いとされるガッタパーチャー(ゴム様)とシーラー(セメント様)を用いて、いかに根尖部分を綿密に封鎖するかがポイント。
上層部の封鎖は問題にならない。

 根管治療の手順は上記に示した通りです。
根管治療のポイントは、根管内に貯留した汚物(汚物となり得る神経組織などの有機質)を 完全に除去して、除去したあとの空間(歯髄腔)に二度と汚物(血液などが隙間から入り込む と腐敗して汚物となる)が入り込まないよう完全密封(根管充填)することです。

    トラブルとなる原因を順追って整理してみます。
  1. 機械的清掃の段階で神経のとり残しや過去の腐敗した充填物のとり残し。
  2. それを補うために化学的清掃を行ないますが、この時使う薬剤がキッチンハイターやブリー チと同じ漂白剤ですので周囲の骨組織に与えるダメージが問題です。おまけに化学的清掃はほと んど清掃の役目を果たさないので、機械的清掃をおろそかにする口実となっているようです。
  3. 根管貼薬は炎症の原因となる細菌を殺す目的で行なわれますが、これも殺菌力が強いとし てもホルマリンを主体としたキツイ薬剤を使いますので周囲の骨組織に相当なダメージを与えて いるように思います。また、アレルギー症状の原因にもなっているようです。これらの薬剤が 治癒を遅らせている可能性も十分考えられます。
  4. 化学的清掃や根管貼薬に頼るあまり腐敗物の機械的清掃がおろそかになって、いつまでも 経過が良くないというのが代表的なトラブルです。
  5. 次に考えられるのが、機械的清掃に使うリーマなどの金属器具の破折です。破折した位置 にもよりますが、細い根管の先端部分で破折した金属片はほとんど除去することが不可能です。 破折を医療ミスと考えられがちですが、細く曲がった根管形態を考えれば確率数%程度の破折 は現状の方法しかない現代歯科治療ではやむを得ないものと考えております。
     問題はその時の考え方と対処だと思います。金属が折れるほどの細い管ですので、残存腐敗 物の量も少ないと考えられますのでそのまま放置しておいても全くトラブルを生じないか、あ っても緩やかな炎症の進展です。軽い違和感程度の後遺症であれば、それを許容して付き合う しかないと考えるべきでしょう。それをヤッキになって先ほどの有害とも思える貼薬を続ける ものですので、かえって症状を呼び起こしているケースを多く見受けます。
  6. 虫歯が深いとか破折した金属片をとるために、また歪な形態をした根管であるがために、 関係のない場所に穴を開けてしまった(穿孔)場合や歯根に亀裂がある場合の対処にも問題 があります。この場合には、汚物が存在しないと考えられますので、閉鎖できる状態にある 場合には速やかに閉鎖して二度と汚物が貯留しないようにしてやるのが適切な対処です。 それに対しても、殺菌という名目で見込みのない有害な貼薬を繰り返して何時までも治らない というケースを多く見かけます。

 根管治療のトラブルはおそらく以上のどれかに属するものと思われます。あなたの原因が どれであるかは、実際に診て、治療してみないとどれが原因であるかは分かりません。