金属ポストに関しては正しい理解と免罪符みたいなものが欲しい医療行為です。

金属ポスト

(オーストラリア)

日付、時間:2004年6月22日 11:36  氏名:  C.A.   
所在都道府県:  オセアニア  職 業:  主婦  年 齢: 37歳      性別:  female  

金属ポスト 質問:
 現在オーストラリアに住んでいます。右上6番クラウンのある歯の歯茎が腫れて痛くなっ たことで相談があります。
私の歯は、親知らず8番は4本ともすでに抜歯済み。学生時代のブラッシングがよくなかっ たために、ほとんどの奥歯はクラウンか治療済みです。右上7番は8年くらい前におそらく は歯根のあたりに病巣があったためにこのままにしておくと蓄膿症になる可能性さえあると の事でそのときに抜歯しました。そのときに診てもらった歯医者では今痛みの出てきた右上 6番の根管治療が不十分で、神経の先まで詰め物がしっかり入っていないといわれ、王冠を はずし、根管治療を試みたのですが、すでに入っているところがあまりにもきっちり入って いるので、数回トライしましたが結局諦めて王冠をかぶせました。
 その後は数年とくに症状はでていませんでした。出国前(4ヶ月前)に日本で歯石を取って もらうのと同時に全体を見てもらいましたが、右上6番の具合が余りよくないといわれたも のの、レントゲンを見ながら様子を見ましょうといっておしまいになってしまいました。最 近になって、右上6番の歯茎が痛み、腫れたりニキビができたようになっているので、オー ストラリアの歯科に駆け込みましたが、とりあえず、一度目は、歯茎に穴を開けて消毒して もらい抗生物質で可能を抑える応急処置をしてもらいました。しばらく痛みは収まっていま したが、それから一ヶ月経ち、同じところが同じように痛んだのでもう一度同じ歯医者に行 ったのですが、歯の根っこの周りに病巣があって影があります。この歯の根っこは三本あっ て、その中央の一番とがった根っこに、かなり太くがちっと王冠を支える棒が入っているん です。この歯科は個人の歯医者なのですが、この王冠を取って支え棒を取るときに、歯の根 っこが折れるか、だめになってしまう危険性がぜんぜんないとはいえないと言うのです。
右上の奥歯は歯医者にとってやりにくい場所のようですが、とてもむずかしい処置になりま すでしょうか?
レントゲン写真を今お見せできないのですが、この歯医者が言うには、真ん中の口蓋根が折 れたりしたら、両側の2根を残しておく意味はないから抜歯をすることになってしまうよと いわれとてもショックです。そのような場合、ヘミセクションを考えてもらう意味はありま すか?
根管治療の成功率がどのくらいの確率かは分からないですが、日本で根管治療を試みてもら ったときにいま入っている神経の詰め物ががっちりしていて根幹を通せなかったのですが、 同じようなことになってしまうでしょうか?
また、すでに右上7番も抜けているので、万一6番が抜けた場合、そのままにしておくと右 下から歯が上がってくる可能性もあるので(現在は右上7番には何も入れていません)かみ合 わせからしてもどういう方法をとったらよいのか、、、右上4,5番も被せ物をしてあったり でよい状態ではないからブリッジングに耐えうる体力があるとは考えにくいのですが、インプ ラント以外で簡単な義歯をいれるようなことは可能なのでしょうか?
先生、外国におり心細くぜひこれから行うべき治療についてアドバイスをお願いいたします。

感想:
 できれば今すぐ先生に診ていただきたいくらいです。先生のホームページはとても参考に なりました。

回答
 世界的に大臼歯の根管治療は敬遠されています。時間がかかって不採算な上に様々な障害 があって思惑の結果が得られないことが多いからです。日本の根管治療成功率は50%程度だと 思います。アメリカはもう少し上。オーストラリアも日本よりは(値段が高い分)少し上だろ うと想像しております。

 金属ポストによる破折リスクはせいぜい5%以内ですが、根管治療と違って直接歯医者の 責任問題を追及される行為であるためにどうしても大げさに説明する傾向があります。歯医者側 の言い分としては、金属ポストに関しては正しい理解と免罪符みたいなものが欲しい医療行為 です。金属ポストが入っていたら絶対治療しない国や歯医者もいるくらいですので、手間隙・不 採算を覚悟で除去に踏み切った熱意に免じて結果に対してはもっと寛容な対応が望まれます。

 口蓋根がダメだった場合のヘミセクションですが、これは残った根 の状況によります。納得できる根管治療ができて良好な経過が予測できるときには多少無理 してでも保存の方向で考えるべきです。おそらく状況は、残る根っこの状況がかんばしくない のでしょう。本来は頬側根こそヘミセクションしたい状況ではないでしょうか。勿論あくまで も想像です。一番頼りになる口蓋根がダメだった残す熱意と値打ちがないという判断のように 思います。

 6・7欠損の場合の部分入れ歯は可能です。インプラントができればそちらを選択すべきで、 この場合のブリッジは設計的にも絶対不可能です。


返信:2004年6月23日 10:06
 河田先生、お忙しいところをご丁寧に回答ありがとうございました。今回歯茎が痛んだこと で根管治療について勉強することになり、よい機会だったと思っています。根管治療が思った よりも十分にされていない現実も知ることができました。スケーリングの大事さもわかりまし たし、これ以上歯をなくさぬ努力をしようと思います。
 一度は日本に帰国しての治療も考えましたが、もし、オーストラリアの治療レベルもさほど 低いものでないならば試す価値がありそうに思え、こちらの先生にお願いしてみようと思いま す。現在は、先月と同様、再度歯茎に穴を開けてもらって消毒してもらい抗生物質で化膿をと めて、腫れも引いてさほど痛みもなく、ブラッシングに努めていますが、根管治療そのものは、 すぐにでも行ったほうがよいのでしょうか?よろしくアドバイスをお願いいたします。

回答:
 基本的には病巣の大きさに関係なく、根本的な治癒のためには的確な根管治療が不 可欠です。その意味では、根管治療は急がなくても良いといえます。治療にあたっては破折 リスクに加えて、的確でない根管治療による症状の増悪という二つの関門があって、“治療 開始=抜歯”の可能性もあります。現在行なわれている治療は一時しのぎで決して根本的な 治療ではありませんが、それにより長期間の安静が得られるのであればリスクの先延ばしが 可能です。「急がなくても、経過をみて」ということで宜しいかと存じます。


返信:2004年6月24日 8:21
 河田先生、適切なアドバイスをありがとうございました。症状がしばらくおさまっていま すので、しばらくは様子を見たいと思います。次に症状がでたときは、やはりあまり先延ば しにもせずに治療するときかな、、とも感じています。ほんとうにありがとうございました。