困難を極めたにしても抜歯したとなれば解決すべき症例です。

残歯がある可能性

日付、時間:2004年6月22日 20:41  氏名:  山根   
所在都道府県:  東京  職 業:  会社員  年 齢: 30歳      性別:  female  

残歯がある可能性 質問:
 今年の5月中旬より、左奥歯の痛み・頭痛・めまいが出現しました。歯医者に行ったとこ ろ、左第1大臼歯(5年前に根管治療済み)が原因であろうとの事で、5月24日抜歯をし ました。抜歯には2時間ほど時間を要し、かなり出血しました。抜いた歯はバリバリに割れ ていました。抜歯後3週間で、歯茎も問題ないとの事でブリッジを入れました。
 しかし、1ヶ月経った今でも、抜歯前と同じ痛みが続いています。左下顎〜左こめかみ〜 左側頭部に、ズキンズキンという痛みがあります。また、抜歯後周辺の歯茎から口臭が出て きています(苦い味あり)。8時間おきに鎮痛剤を内服しています。この1ヶ月、鎮痛剤を 飲まない日はなかったです。

歯医者の先生は「ここでは原因がわからない。顎関節症なのでは?」と。
そして先日、総合病院の口腔外科に受診してきました。
レントゲンと診察の結果、残歯がある可能性がある・痛みは骨髄炎であろうと言われました。 その結果を抜歯した歯医者に伝えましたが「そんなはずはない!」と、逆に怒られました。 ちなみに、そこの歯医者では抜歯後レントゲンは撮っていません。現在、抗生剤を飲んでい ますが、痛みはいっこうに良くなりません。
残歯がある場合、切開してまた抜かなくてはいけませんか?
残歯なのか、根管治療後の薬剤の抜歯窩残留なのか、レントゲンでわかるのでしょうか?
もし、根管治療の薬剤の残りであったら、それも切開して取り除く必要がありますか?

感想:
 とても詳しいHPで感激しました! もっと早く知ってれば良かったと思いました。

回答
 推理ゲームみたいですが、原因が左第1大臼歯であり、困難を極めたにしても抜歯したと なれば解決すべき症例です。結果として解決していないわけですので、どこかに間違いが潜 んでいることになります。

 私が診断して治療したとしても、過去に抜髄した左第1大臼歯に疑いが集中すると思います。 “抜いた歯はバリバリに割れ”という歯を抜歯することには大きな疑問を感じます。根管治療 による保存的な手法を優先すべきだったと思います。“1ヶ月経った今でも、抜歯前と同じ痛 みが続いています”ということは炎症を起こすべき原因が排除されていないことを意味します。

 元々生体の一部である歯のカケラが生体内に残留したとしても炎症を起こす可能性は非常に 低いはずです。でも炎症を起こすべき原因を秘めた根っこの場合は条件が異なります。肝心の 原因を除去できなければ当然の如く炎症は治まりません。
 今回のケース、規制の事実として症状が改善されていないわけですので、本当の原因が排除 されていないであろう事だけは確かな事実だと思います。原因と思われたモノが間違っていた か、取り去ったはずの原因が排除されていないかの何れかだと思います。“根管治療後の薬剤 の抜歯窩残留”であれば一時的な炎症はともかく最終的に必ず自然吸収されるはずです。その 意味では経過観察という期間も必要ですが、1カ月の観察期間は十分だと思います。

 アナログ的なレントゲンの診断は、疑いをもつには十分な情報ではありますが、決定を下す には余りにも不十分な精度です。最終的には実際に触って、治療してみないと確信的な診断は 下せるものではありません。
 以上、状況と治療後の経過、更に第三者のレントゲン診断を総合して、残根を疑うのに十分 な証拠が整ったように思います。設備とスタッフの揃った大学病院での診断を仰ぐのが解決の 最短コースだと思います。