日付、時間:2004年7月14日 1:47
氏名: HK
所在都道府県: 愛知
職 業: 歯科衛生士
年 齢: 24歳
性別: female
質問:
初めまして。 患者さんについて私の知識だけではわからず、学生時代の教科書などを読
んでも解らず、先生のご意見を聞かせて頂きたくメールさせてもらいました。
31歳の女性の患者さんなのですが、上顎左側第1大臼歯の動揺が2、他の歯も動揺が1〜2て
いどある歯もあいますが、下顎は動揺している歯もなく、安定しているように思います。プ
ラークコントロールはTBI後大変良くなり、歯肉もしまってきました。そのことも手伝って
DRのこう合調整により初めの頃に比べて動揺も落ち着いてきたようにおもいます。
しかし、31歳の年齢の割には上顎の骨吸収が進みすぎているように思います。 ブラキシ
ズムあるそうで、今月始からマウスガードをされています。 院長は歯軋りと低血圧からき
ているのでは。と考えています。 骨吸収が上顎だけというのがひっかかりますが、侵襲性
歯周炎とゆう可能性はありますか?
また、衛生士でも解りやすい侵襲性歯周炎が載っている本がありましたら教えていただけな
いでしょうか?
お忙しい先生にこのような質問をするのは恐縮ですが、よろしくおねがいします。
“1999年に米国でワークショップが開催され,これまでの主として年齢に依存した分類法
が棄却され,新しい歯周病の分類法の完成をみた.旧分類では,歯周炎は,発症年代をもと
に早期発症型と成人型とに大別されていたが,新分類においては,発症した年代で区別する
のではなく,病変の進行が急速か緩慢かに主眼が置かれ,非常に合理的になった.”って
ことですよね。早期発症型とか若年性という表現が侵襲性歯周炎に変り、成人型が慢性歯周炎
に変っただけのことです。31歳でかなりの骨吸収が認められるということは、新しい分類では
侵襲性歯周炎になります。31歳ですから若年性という昔の表現より違和感が少なくなったかな。
“日本における侵襲性歯周炎は,A actinomycetemcomitansよりむしろP gingivalis感染型
が多いのではないかと考えられる.”とか、かつての若年性では、1番と6番に特異的に生息
する細菌がいるなどと色々取り沙汰されています。それ以外にも過剰咬合圧が関与していると
か言われていますが、私はそのような考え方を一切信じておりません。
元来病気の分類は、原因を特定するものであり、その病名によって治療方法が決定される
ものであるべきだと思っております。私が思うに、侵襲性歯周炎の特徴として著明な歯石沈
着が認められないケースが多いように思います。スケーリングしてもヤリガイが無いと実感
しませんか?
そのような経験からスケーリングは数か月ごとで良いとか、歯石以外の要素を取り去ろう
と一般的には考えられているように認識しております。しかし、そのような症例であっても
毎月のスケーリングを継続すれば疾患は見事にコントロールできます。歯周疾患の進行速度
は歯石(やプラーク)の沈着速度や程度に比例して決まると考えられます。しかし、同じ程
度の歯石が沈着しいるから同じ程度の炎症を起こすのではなく、個人の免疫抵抗力の違いに
より炎症程度が決まります。糖尿病の如き抵抗力が極端に低下するような基礎疾患を有する
患者さんであれば、わずかな汚れが致命的な炎症を起こして急激な骨破壊を招きます。糖尿
病でないにしても、アレルギー体質や化膿しやすい体質といわれる人は抵抗力が弱いために
骨破壊も著明となります。低血圧というと、何かひ弱で抵抗力が弱そうに思います。
抵抗力を高めることは我々にはできませんが、如何に抵抗力が弱い人であっても、炎症を
起こすべき原因が全くなければ炎症も起こらないし骨破壊も起こりません。原因といえば、
細菌を思い浮かべるかもしれませんが、所詮常在細菌による日和見感染です。炎症発生の
引き金となる歯石を始めとした汚物さえ完全無い状態を保ち続ければ理論的には炎症は成立
しません。
元々上顎大臼歯部は骨破壊が起こりやすい部位ですので、他に比べて破壊が早く進んだ
だけで今まで通りのケアを続ける限り破壊を阻止することは難しいでしょう。ブラッシング
指導は当然有効な手段ではありますが、それだけでは抑制しきれないことは過去の症例が
物語っています。私の経験を通して、唯一目に見える抑制効果が得られる方法は毎月の歯石
除去であることを改めて強調しておきます。