日付、時間:2004年7月20日 11:06
氏名: 望月京子
所在都道府県: 京都
職 業: その他
年 齢: 19歳
性別: female
質問:
私は3年ほど前から電動歯ブラシを使っていたのですが、現在歯肉が後退してしまいました。
なぜ電動歯ブラシを使うと歯肉が後退してしまうのですか?
また、この場合も原因は歯槽骨の破壊にあるのでしょうか?
感想:
私は今歯学部を目指しているのですが、もし合格したら大学でより利用しやすい歯肉再生の方
法を見つけたいな、と思っています。ただ、それは物理的に実現可能なことなのか、素人の私に
は全く分からないので不安です。そこでこのサイトで色々勉強させていただいてるのですが、歯
のことで悩んでる人本当に大勢いて、またその悩みも人それぞれなんだなといつも感じます。そ
れに分かりやすく、きちんとお答えしている先生の姿勢には感銘を受けました。私も先生のよう
に一つ一つの疑問に丁寧に答えられるような歯科医師になりたいです。下手な文章で申し訳ござ
いません。これからも私の教本としてこのページを活用していきたいと思っています。がんばっ
てください。
医療とは、生体の摂理に従って回復しようとする機能を最大限に引き出して、治癒の促進
と増強を計るものです。生体の摂理を考慮しない治療方法は満足な効果をもたらすことは期待
できません。
抽象的な表現で理解できないかもしれませんが、具体的に言い出すと1冊の本では表しきれ
ない内容(2冊書いたけど真髄に迫るには10冊ほど必要?)です。要所はこのホームページ
に全て掲載していますので、大学に入ってからでもゆっくり考察してみてください。
歯肉退縮の元凶は歯槽骨の破壊です。歯周組織(歯肉と歯槽骨)に炎症か起これば、歯槽骨
は破壊され歯肉は腫れます。従って、少々炎症が存在しても見た目の歯肉位置は変りません。
従って、通常に歯磨きをしている場合ですと、歯肉退縮が気になりだすのは30歳ころです。
このホームページに寄せられるし肉退縮の悩みはほとんど30歳頃の女性です(男性は鏡を見
ないのでそんなことに無頓着なだけ)。もし歯肉の腫れが無ければ20歳くらいで兆候がある
はずです。電動ブラシが悪いわけではありません。電動ブラシの効果によって歯肉の腫れが
消退して健全な歯肉を獲得すると、それまでに破壊された歯槽骨の形態を正直に反映した
景観をアラワにしただけのことです。
つまり、歯槽骨の破壊は15歳頃から始まったということの立証にもなります。順調な骨破壊
、と健全な歯肉維持が獲得された結果、30歳で気付く症状が20歳で気付いたということです。
良かったね、さすが歯科医志望生!!
清掃効率は間違いなく電動歯ブラシの方が上。それでも歯肉炎症は抑制できても歯槽骨破壊
までは抑制不可能(限定的)だという結論が導きだせます。歯槽骨破壊まで抑制するためには
それ以上に清掃効率の良い手段を見つけ出せれば…しかも手軽な…。そこで、20年の実績をも
って、現状では最善と推奨している方法が毎月の歯石除去という次第です。
私よりも若い…ということは先人の経験を踏まえた研究のできる立場にある…あなたが、そ
れ以上に手軽で有効性のある方法を研究してくれることを心より願っております。ちなみに、
生体の摂理を考慮しない現代歯科医学(大学の講義)に立脚した発想では、物理的に実現は
不可能だと確信しております。
現代歯科医学を根底から否定する異端児より。
回答:
「歯肉復活方法は絶対見つけ出します!」という目的をもって、その手段として歯学部を
選ばれたことについては立派な選択だと賞賛いたします。目的が不順であったり、目的がな
い学生が多い中、将来性を大いに期待いたします。また是非研究の成果が挙がることも期待
しています。
審美的な歯肉回復方法としては、歯肉移植再建法というものもございます。しかしこれは
生体のメカニズムを無視した誤った治療方法だと思っています。歯肉退縮、即ち歯槽骨の破壊
が原因ですので歯槽骨再建こそ本来の回復方法です。しからば歯槽骨の破壊の原因は何かと言
えば歯槽膿漏ですね。歯槽骨再生法というものも歯科界にもございます。しかし全く成果が挙
がっていません。それはおそらく歯槽骨破壊のメカニズムが正しく解明されていなっからだと
思います。
その理由を更に追求するならば、炎症発生のメカニズムがどうも歯科界では正しく認識され
ていないのではないかという疑問にぶち当たってしまいます。そのような状況で出版された
書物をいくら読んでも無駄。それよりも大学に入って、歯学部の基礎過程の講義が始まる前に
医学部の基礎系科目の専門書を熟読されることをお勧めいたします。とりわけ、生理学・細菌
学・病理学でしょうか。そこら辺をしっかり押さえておくと、生体の摂理というものが正しく
理解できるのでは内科と思います。
さしあたって誠に我田引水ですが、
『さらば歯周病』(新潮新書)でも読んで見て下さい。