下手な根管充填であれば、1年以内に症状を現します。

リーマ根充

日付、時間:2004年8月10日 12:07  氏名:   E.A.   
所在都道府県:  東京  職 業:  会社員  年 齢: 36歳      性別:   female  

リーマ根充 質問:
 はじめまして。根管治療関連のページ(Q&Aと解説)を隅々まで拝読させていただき ましたが、自分の症例の場合、この先どうしたものかと思いあぐね、直接質問させていた だきご相談に乗っていただけたらありがたいと思いまして、投稿させていただきます。 長くなりますが、先に状況説明だけさせていただきます。

 自分でも「いつ」「どの歯科で」を覚えてないほど以前に、右上の第1臼歯(以後「6 番」)は、神経を抜きクラウンをかぶせました。それから数年後、別の歯の治療で歯科に 通った際、レントゲンに影が映り「根の先が炎症を起こしているので根管治療をやり直し をする」と言われ、(「炎症を起こしている」といっても自覚症状はありませんでしたが) お任せしてやり直していただきました。その数年前に別の歯科(当時の職場の近く)でや はり別の歯の根管治療をきちんとしていただき「根管治療」のことを知り感動したので、 治療のやり直しをしてくれるなんて意識の高い良い歯医者さんだと思ったからです。

 それから6年近く経ち(2週間前に)急にこの歯が浮くような、噛むとうずくような 痛みを感じ先日歯科に行きました。この歯科は1年前から家の引越しを機に通い始めて る近所の歯科です。昨年写したパノラマ写真ではきちんと「治療済み」(きれいに薬が 入っている)ように見えていたので見逃していた(というか全く判らない)のですが、 今回この「右上6番」の詳細レントゲンを撮って、なんと、歯根の一本にきれいに入っ ているのは、薬ではなく金属破片(治療するときに使う器具(ファイルというのでしょう か?)であることが判明しました。詳細写真でも本当によーーーく目をこらさないとわ からないくらいの線の「ズレ」を若い先生が発見してくださったのです。
 初診当日と1週間後で今までに2時間(2回)超音波などでなんとかこの金属片を取 り出すべく頑張っていただいているのですが、金属が根管の壁に食い込んでいるようで、 2度(2時間)の試みは今のところ、難航しています。ただし、炎症は、最初の3日間で (抗生物質を飲んだ所為か)収まって、今は何事もなかったように何も感じません(影は あるようですが)。

 金属の状態ですが、根管そのものは、自然のカーブはあるものの私の目で見る限りま っすぐで「特殊例」ではないように思われます。金属片は根管(のひとつ)のちょうど3 分の1〜2のあたり(根を3分割するとその真中の3分の1部分)を占めています。そ のあたり、ゆるーーいカーブになっています。その他の2本は今回もついでに根管治療 したところきちんとしていたそうですが、この問題の根管のみ針が奥に進めないとのこ と。
 先生は、「金属片が出せない限り、この「歯」を温存させるためにも問題の根のみを 抜くしかない」とおっしゃっています。その弊害としては、「歯の形がかわり、ものが 詰まりやすくなる」ことがあるが、痛みの原因が取り除けるのが最大の利点ということ。 長くなりましたが、ここまでが状況説明です。 河田先生のHPでは「歯根端切除」はオススメにならないとのこと、このことはとても 説得力があって、なるほどと思いましたが、この根っこの一を抜歯する(「ヘミセクシ ョン」というのに当たるのでしょうか?)についてはどのようなご意見をお持ちでしょ うか。私としては、今、炎症が治まってしまったこともあり、あまり気が進みません。 「できれば歯は抜きたくない」というのが最終目標なので、「そのために仕方が無い」 と言われると「根っこ一本は仕方がないのかな」と思わなくもないのですが、この数年 間とくになにも自覚症状もなかったのだから、あえて今、危険な賭けをしたくないとい うのが本音です。
一番怖いのは、
「1つの根のみの抜歯」⇒「歯の変形」⇒「虫歯になりやすいもしくはバランスが悪く なる」⇒「結局その歯(本体)の寿命が短くなり抜歯が早まる」ということにならないか。 ということです。そんなことになるなら、このまま放っておいていよいよのときまで 根を温存するという方法もありなのでしょうか?
最後に、金属片を取り除くなにか良い手、アイディアはお持ちではありませんか?
もうすこし根気よくがんばればどうにかなる可能性があるでしょうか。

感想:
 ここ一週間くらい、毎日先生のサイトに訪れ、とくに「根管治療」関連のページはほとん ど隅々まで読ませて頂いています。素人にもわかりやすい説明文や、図解入りの専門用語の 解説に助けられて、自分の歯の状況が手にとるようにわかってきました。こんなページがあ って、本当によかった。ありがとうございます。

回答
 おそらくそれ程ガッチリ食い込んだ金属片を除去することは不可能でしょう。最終的に どうしても炎症がどうにもならない状況であれば、提案通りヘミセクシ ョンが妥当な選択です。歯の形態が不自然であることによる多少の弊害は、それ以上 に良い方法がない状況ですので受け入れるしかないでしょう。そんなに大きな不自由はない ように思います。

 さて現状の選択ですが、6年間痛みがなかったということから推測してそこそこの根管 充填が施されているものと推測いたします。下手な根管充填であれば、1年以内に症状を 現します。日常臨床では、このホームページでも数多く見られるようにとんでもなく悲惨 な現状です。その中にあって、金属片による根管充填(リーマ根充:これは皮肉)も決し て捨てたものでもありません。かつては銀線みたいなもので充填した時代もあるくらいで すから。普通はガッタパーチャー(ゴム)とシーラー(セメント)を用いて綿密に閉鎖す る訳ですがその精度に比例して予後が決定されます。  金属が食い込むほどに充填されているわけですから、それなりの精度で閉鎖されている ということです。つまり6年で初期症状を起こす程度の精度ということになります。場合 によっては、すでに根尖病巣ができていたのを6年間先延ばしにしたのかもしれません。

 リーマ根充の欠点は閉鎖精度が劣ることと、除去できないので再治療が不可能なこと です。将来ヘミセクションを行なうことを前提に、中の土台の構造を考慮してそのまま 被せて使えるだけ使われたらどうでしょうか。時々炎症を起こすとは思いますが、その 都度抗生物質でごまかしながら使って、ゴマカシが効かなくなったらヘミセクションと いう選択も悪くはないと思います。歯根端切除は全く論外 です。


返信:2004年8月11日 15:01
 河田先生
お忙しい中、早速のご回答をありがとうございました。
先生のお言葉で、ここ2週間近くずっと悶々としていた気持ちがすっきり晴れて、気が 楽になりました。金属片(リーマーというのですね)が入りっぱなしなのを告知もされ ず、そのまま治療を終えてしまった先生へぶつけたくても(それこそすぐに症状がでて いればすぐに訴えることもできたかもしれませんが)、幸い6年も気付かないでいられ たので、もう今更文句をぶつける気にもなれず、かといって、やり場の無い気持ちに悶 々としていました。
 今週末また予約を入れているので、「金属片は取れなくてももうがっかりしないで、 ヘミセクションについては「そのとき」が来たらきちんと受け入れる心の準備をしてお きつつ、今は騙し騙しでもそのままの歯を使いつづけてみたい」ということを、自信を 持って担当の先生にお願いすることにしました。(当然ですが)自分が素人なので、そ れが可能なのか無理なのかすら判断できず、困っていましたので本当に助かりました。
 また、ご報告メールさせていただきます。そして、まだ読んでない部分もたくさんあ るので、引き続きホームページ読ませていただきます。

どうもありがとうございました。