日付、時間:2004年11月2日 8:55
氏名: TK
所在都道府県: 石川
職 業: 会社員
年 齢: 32歳
性別: female
仮にしっかりした逆根充ができたとすれば、嚢胞が縮小して
治る見込みはあります。でも全国の実績をみる限り、簡単な前歯
でも成功率10%以下、操作の困難な大臼歯に至っては成功する可能性は限りなくゼロに
近いと思います。
最も成功率の高い正規の根管治療でさえ80%程度だと見積もっています。通常80%も成
功が見込めるものであれば第一選択として推奨し、また実際に治療したはずです。ところが、
単に嚢胞が大きいだけでなく、すでに下顎神経を圧迫している状態なのです。下顎神経は、
変形してかろうじて逃げている状態なので、わずかな炎症が神経を死に追いやる可能性が高
いのです。神経を引っかいてちょっと傷つけたくらいなら、しびれもその内回復しますが、
一旦炎症を起こして腐ってしまえば再生はほとんど見込めません。つまり片側の唇が一生し
びれっ放しという最悪のシナリオが考えられます。ですから80%の成功よりも、この際20%
のリスクを回避する方法を選択すべきだと判断しました。日本一歯を抜かないと自負する私
が、珍しく選択した抜歯です。“同じ繰り返しになるのではないの?”なんて余裕が全くな
いことを前提に考えるべき状況です。
失敗が絶対許されない状況で、一番確実な方法は抜歯です。それと、炎症を起こすべき原因
を除去してやれば、この程度の骨欠損であれば必ず回復します。上手くいけば根管治療でも回
復可能な大きさですので、原因を確実に除去する抜歯によって回復しないと考えるのも疑問で
すが、もっともっと不確実な歯根端切除で骨回復を望むのは矛盾もはなはだしいと思います。
その程度の骨欠損で腰骨移植を考えるのはもっと理解できません。生体の摂理を無視した外科
手腕の乱用のように思えます。
私の外科的常識では、抜歯と嚢胞摘出後の傷口を閉鎖創にするか開放創にするかを迷うくら
いです。平たく言うと、嚢胞を完全に取り除いて傷口をしっかり縫い合わせるか(神経を傷つ
ける可能性あり)、治癒に多少時間を要するが抜歯だけして嚢胞に手をつけず傷口を開いたま
まにするかという判断です。どちらを選ぶかは術者の経験と価値観によって異なります。
回答:
何事も担当する本人にとってはプレッシャーですが、抜歯と嚢胞摘出は口腔外科の処置として
は初心者コースです。レントゲンの照射は少ないほど良いけれど、的確な処置と判断を妨げるよ
うだと重大な損失を招きます。何百枚か何千枚も撮れば何らかの障害が現れると思いますが、常
識の範囲だと何も問題はないでしょう。