日付、時間:2004年11月16日 9:39
氏名: JT
所在都道府県: 千葉
職 業: 主婦
年 齢: 30歳
性別: female
質問:
こんにちわ。私の歯のことで質問があります。よろしくお願いいたします。
左上7にクラウンがかぶっています。最近、キシリトールガムをこの歯で噛むと、その
瞬間ジーンとしみる感覚があります。最初の一噛みのその時だけです。他の甘い菓子な
どではこのような症状はありません。
クラウンの下で虫歯になっているのでは、と思い歯科医院で診察(レントゲンも)受
けましたが、特に治療は必要ないとのことでした。不安で、他院でセカンドオピニオン・
サードオピニオンも受けましたが、同様の診断でした。クラウンは装着してから少なくと
も、8年以上は 経過していると思います。
このまま様子をみるのが良いでしょうか?
それとも念のため、クラウンを外して確かめてもらう方が良いでしょうか?
アドバイスを頂けましたら幸いです。よろしくお願いいたします。
感想:
先生のこのホームページに出会ってから、自分の歯・家族の歯に対する姿勢が明らかに
かわりました。これからも、勉強させていただきたいです。よろしくお願いいたします。
まず行なうべきは歯石除去でしょうね。徹底して歯石除去を行なった上で、定期的に
歯石除去を継続すれば歯肉状態が良くなって原因不明の不快症状の多くが消失します。
また、その経過を追うことにより見つかる異常というものもあります。
懸念されているクラウン内の虫歯や歯髄の異常、もしくは根尖病巣の存在があとから
見つかるケースもあります。9割方の異常は1枚のレントゲンで見つけることができます
が、1割程度のものについては角度を変えたり濃度を調整したりしないと見つからない
ように思います。保険規則で枚数も制限されていますので、納得できるまで撮るというこ
とはできません。違和感がある限り何か原因があるはずですが、そのような疑いをもって
やっと半年後にみつかる虫歯というものも現実に存在します。私がメンテナンスをお勧め
している理由の一つがこのような見過ごされた異常の発見です。
クラウン除去は決定的な疑いがある場合で十分でしょう。違和感の原因が歯髄の炎症由来
のものであれば、急いでも抜髄は免れません。すでに抜髄済みで根尖病巣由来のものであれ
ば何時治療しても結果は同じです。それよりもクラウンを除去した限り何かをしないといけ
ないという気持ちから、余計なことをしてかえって悪化する可能性を懸念します。このまま
様子をみるのではなく、メンテナンスを行ないながら経過をみるのが最善だと思います。
回答:
歯髄の炎症症状の一つとして知覚過敏があります。原因が虫歯であれば知覚過敏もしくは
虫歯の痛みという表現になります。また、原因としては過剰なかみ合わせや外傷によって
歯髄の炎症(知覚過敏)を起こすこともあります。一方歯槽膿漏進行に伴う知覚過敏を
これらと区別して象牙質知覚過敏症と言うこともありますが、歯髄の炎症という意味では
全て同じです。
歯槽膿漏進行やかみ合わせ、あるいは根尖病巣から歯根膜や歯周組織に炎症を起こした
場合、例え歯の神経がない場合も知覚過敏様の症状を呈することもあります。以上しみると
いう症状を総称して知覚過敏と言いますが、原因は多様です。また何に反応するか、熱い・
冷たい・甘いなども多様です。とにかく異常を感じる限り、何らかの炎症が存在するはず
だし、その炎症の原因となるモノが必ずあるはずです。しかし原因があるからといっても
現在の医療水準で全てが分かるわけではありません。特に複数の先生に聞いても分からない
ということであれば、現在の医療水準では分からないような原因だと納得するしかないよう
に思います。私も即答できません。そこで経過や症状の変化を長期にわたって診ることによ
り判別できる可能性があるかもという見解です。
歯茎が下がったからしみるという一般的な認識は、病因の説明として間違っていると
思いますがその説明はご勘弁願います。膨大な論文になってしまいます。
↑上記のような御回答を昨日頂いたのですが、素朴な疑問があります。レントゲンではクラ
ウンなどの金属は黒く映りますよね。ということは例えばクラウンの中にできた虫歯などは
金属の黒に隠れてしまって映らないのではないか?と、思ってしまうのですが、実際は先生
方はどのようにレントゲン診断なさっておられるのですか?
しみるので虫歯ではないですか?と受診すると、『レントゲンには虫歯の像はないから大丈
夫』とおっしゃる先生と、『金属の影になって映らない虫歯もありますから実際は金属の下(
中)はどうなっているか分かりませんが。』とおっしゃる先生もいます。
先生の場合は、どのような診断基準?に基づいて診断をされておられますか?
質問ばかりで申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
感想:
今日、図書館で、先生がかかれた本『あなたは一生自分の歯で食べられますか』
を借りてまいりました。早速読ませていただきます!先生の顔写真も初めて
拝見いたしました!
回答:
クラウンの被った虫歯は、通常クラウンと歯の境目にできますのでかなりの確率で診断
できます。稀に存在するクラウン内部の虫歯はコントラストの加減で発見できることもある
という程度です。クラウンは白、虫歯は黒ですので念力をかければ見えてくる場合がありま
す。念力とは…過去の経過と現在の症状などです。これがなければ、レントゲンもなくこん
な質問に答えることはできません。
新しく新潮新書から出版した「さらば歯周病」も('-'*)ヨロシク♪
回答:
“ハブラシの毛先が引っかかり”ということは、段差やムシ歯など何らかの問題があるので
しょうね。汚れが貯留し易くなっていることは間違いないでしょう。治療する側とすれば、何
か決定的な確証が得られないと治療に踏み切りにくいものです。クラウンの再製がこの度の違
和感を解消するものかどうかは保証できるものではないけれど、一度はずして確かめてみる価
値はありそうに思います。患者さんからの強い要望ということになれば、結果に対する責任逃
れもできるので、強く要望すれば応じてくれるのではないでしょうか。
甘いのがしみるのはキシリトールガムのみで、他の甘味はしみない、ということもあり、しば
らく様子を見ようかな、という方向性に自分の中ではなっていました。かかりつけ医は、確証
もないのに外してみて、それが刺激になってしみるようになったり他の症状が新たに出てしま
うことを懸念していました。
でも河田先生からの『一度はずして確かめてみる価値はありそうに思います』とのお答えに、
気持ちが揺らいできました。クラウンをかぶせて、おそらく7〜8年は経過していると思いま
すがそれくらい経過したものは、そろそろやり直しの時期ですか?
クラウンと歯の境目あたりには虫歯の所見はないそうです。でももっと中の奥の方で虫歯がで
きている可能性もありますか?
度々申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
回答:
私は実際の状況を診ていないので、発言権は少ないと自覚しております。ただし、私も含めて
全員が確証もないので、説明された通りのリスクがあるのでしばらく経過観察しましょうという
意見です。その上で、“もっと中の奥の方で虫歯ができている可能性”も否定できないので、そ
こまで気になるのであればリスクを覚悟で一度はずして確かめてみても良いかもという助言です。
痛みを感じる限りな何か原因が存在するはずというのが私の持論ですが、現代歯科医療の設備と
レベルで全てが分かるものではないということも理解して下さい。
結果をみてあの時こうだったと言うのは簡単です。個々の歯に厳密でなくても、トータルの
メンテナンスにわずかな愛情を注ぐことで生涯歯は守れると確信しています。
回答:
理想的には“寸部の狂いもなく”ということですが、実際にはいくらかの段差などが
あります。余りにもヒドイ(1mm程度)の段差だあれば再製の対象にもなりますが、周囲の
状況やその歯の状態によって判断はまちまちです。担当医の価値観にも左右される許容範囲
を言葉で表現することはできません。また明確な基準というものもありません。
回答:
歯槽膿漏や根管治療に関しては、他の先生と考え方が大きく異なります。それ以前の
治療となると、細かい判断基準に個人差はあると思いますが大きくは変わらないと思い
ます。一応の選択基準として削除量の少ないインレーを優先させますが、それが叶わな
い場合にはやむを得ずクラウンにすることもあります。