医学部では当然の摂理なのですが、歯学部では異端的発想。

毎回「様子をみましょう」

日付、時間:2004年12月14日 20:34  氏名:  S・M   
所在都道府県: 群馬   職 業:  主婦  年 齢: 34歳      性別:   female  

毎回「様子をみましょう」 質問:
 初めて質問させて頂きます。同じ様な質問が既に公開されておりましたら申し訳ありません。
右下7番の大臼歯についてですが、今年6月に銀の冠が取れてしまったためA医院(神奈川)で 診てもらいましたが、新たな冠を被せる処置中に痛くて被せることが出来ず抜髄となりました。 しかし最終段階(次回土台を作りますと言われた)にきて医師の治療に不満があったため、近所 で評判の良かったB医院に転院しました。
その時は全く症状は無く7月3日が初診となりましたが、9月25日主人の転勤により群馬に引っ 越すことになり現在群馬のC医院に通院しています。B医院から紹介状を2通もらったので1通 を開封してみましたら以下のように記されていました。

傷病名:右下7番Per
6月 某歯科にてRCF後処置中断
7/3 初診急患来院(Per:症状は無いものの再根治必要)
7/31 感染根管処置
8/21 RCT
8/31 急性症状(開放、投薬)
9/3 RCT(親戚に不幸があったため帰省(滋賀県)痛む)
9/8 帰省先にてRCT(Perforationの疑いありとのこと)
9/15 現在に至る、現状では噛合せ痛程度)

結局現在のC医院への初診は10月16日となってしまいました。
痛みとしては、なぜか9月末頃からC医院での初診までほとんど感じませんでしたが、治療が 始まってから打診痛、違和感があります(食事中はなぜか痛みません)。C医院の治療ですが、 先生は説明があまり無いためはっきりしたことは言えませんが、初診から11月中頃までガリ ガリ(リーマ?)→薬を詰めるといった具合で、その後1ヶ月は他の感染根治の治療だけで毎 回「様子をみましょう」と言われるだけです。週一回の治療ですが、毎回「様子をみて痛くな ければ土台を入れるし、痛むようなら抜歯した方がいいね」と言われるだけです。

 打診痛も違和感も治まる感じではありませんが、河田先生がおっしゃる通り根管治療の不備 なのか、この程度で譲歩するべきか、はたまた今後の為に抜歯した方が良いのか、それとも転 院して他の先生の治療に望みを繋ぐべきか・・・・本当に困り果てています。

 引越しや諸事情があったため、転院、中断を繰り返し半年も経ってしまいました。小さな子 供もいますし、預けるあても無いので週1回のペースでしか治療が受けられないのですが、先 の見えない治療に疲れてきました。河田先生はどのように思われますか?
なお、診ていただいている先生はもし抜歯した場合義歯は入れられないし、入れなくても大丈 夫とのことですが本当に大丈夫なのでしょうか?
長々と分かりづらい文章での質問申し訳ありません。年末近くでお忙しいとは思いますが、よ ろしくお願いします。

感想:
   河田先生のホームページとても分かりやすく信頼出来ます。歯の大事さ改めて痛感してお ります。

回答
 穿孔(Perforation)があるならあるで、根管内を綺麗に清掃したのち速やかに根管充填 を行なえば閉鎖の完成度に応じて治るものは治るし不完全な閉鎖であればいつまでも治りま せん。それがどうしても閉鎖不可能ということであれば、ヘミセクション なり抜歯を決断しなくてはなりませんが勝負は簡単です。

 何故根尖部に炎症(痛み)が発生するか、それは根管内に異物と認識されるような汚物が 存在するからです。綿密に閉鎖(根管充填)を行なっても無用な空間が残ってしまうとそこ に血液などが流入して腐りますので新たな異物が発生してしまいます。私の提唱する炎症発 生のメカニズムです。医学部では当然の摂理なのですが、歯学部では異端的発想のようです。
 バイ菌が存在するから炎症が発生する。だからバイ菌を殺す為に何処までも消毒を繰り返 すのが歯学部の発想です。バイ菌を殺す為には毒薬みたいな薬も使いますので周囲組織に新 たな炎症が起こっていつまでも痛みがなくならない。痛みがなくならないものだから、更に 強力な毒薬を使うので治療は永遠に続く可能性があります。汚物が排除されて、毒薬にも 打ち勝った場合にのみ根管充填が施されます。その根管充填がたまたましっかり封鎖された 場合に根管治療が成功したと評価されるのが現状でしょう。今の歯科界ではこれが正しい治 療方法だとされているので諦めるしかないのかもしれません。

 余計な薬を使わないで、早くキッチリした根管充填をしていただくようお願いして、回復 した状態が許容範囲であればそれを受け止めるのが現実的な対応ではないでしょうか。もし 抜歯された場合、確かにそこには何もしないのが良いでしょう。それよりも、早くその一本 の呪縛から抜け出して、それ以外の歯に存在するであろう小さなむし歯や異常を摘み取って 再び抜髄になることを回避するほうがはるかに有意義だと思います。
 “銀の冠が取れてしまった”というところまで放置しておいたことが最大の誤りです。 そうなれば抜髄はやむを得ない処置であったし、現状の歯科医療水準では現在の状況は当然 予想されることです。反面、初期のむし歯治療であれば現在の医療水準でも十分な効果が得 られます。そのために毎月の歯石除去と検診が驚くほどの効果をもたらしてくれます。


返信:2004年12月15日 11:59
 12月14日、右下7番大臼歯の穿孔の質問をさせていただいた者です。迅速な回答をいただ いて大変感謝しております。
「“銀の冠が取れてしまった”というところまで放置しておいたことが最大の誤り」確かに そうですね・・・全く自覚が無く取れてしまったものですから・・・検診がいかに大切かと いうこと、自分の歯の悪さを自覚し毎月予防に取り組みたいと思います。この歯については もう暫らく様子をみて、先生から「抜きましょう」言われたら抜歯を前向きに考えたいと思 います。

 あともう一つ質問なのですが、現在もう一本右上7番大臼歯(抜髄済み)に違和感を感じた ためレントゲンを撮ったところ根の下の方が黒く写っており、病巣があるとのことで感染根 治をしたところ7番は良くなりましたが隣の6番に疼痛が起こりました。先生曰く「病巣が 6番の近くまできている為、根の方から菌が入り込むかもしれない」とのこと、治療として は症状が無くなった7番の根治?(薬の入れ替えだけ?)を現在まで3回行い、「様子をみま しょう、痛みが取れないようなら抜髄になるかもね」とのことです。半月ほど経ちますが、 最初の週は痛み止め(ロキソニン)を飲まないと何も手につかない程でしたが、今では浮い た感じがあるのと噛合せ時に少し痛む程度です。
このまま痛みが取れたとしても今後のため抜髄した方が良いのでしょうか?
良くなった?7番も歯周病で少し骨の吸収がみられ抜髄済み、おまけに根の下の方にある病 巣は治らないとのことなので、現在の根治前にも先生曰く「この歯も良くならなければ右下 と同じで抜歯になるかも」とのことでした。この右上2本の歯、河田先生ならどのような治 療をなさいますか?
また今後もし右上下の歯を失った場合、やはり義歯は必要ありませんか?
何度もご面倒をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。

感想:
 お忙しい中、これ程迅速かつ丁寧な回答がいただけたことに大変感謝しております。 先生の芯の通った考えと合理的な治療方法に感動です。街中に歯医者さんの看板を沢山見掛 けますが、いかに歯医者さん選びが難しく大切かを感じました。

回答:
 6番に関しては、歯髄炎を起こしてついに歯髄壊死となって症状が一旦小休止なのかもしれ ません。レントゲンなどで歯髄の壊死は確認できないので、経過を見守って診断するしかない でしょう。症状が治まった今、あえて抜髄を決断することはできませんが、今後の経過如何で は抜髄…というか壊死した歯髄の除去が必要になるかもしれません。いずれにしても的確な根 管治療がほどこされれば治る可能性のあるものばかりです。  私だったら…? 根管治療の成功率95%ですので全て根管治療を行ないます。少なくとも 2本は救うことができると思います。問題は、現状の歯科レベルが50%以下だということ。 20%以下の先生もいれば、70%以上の先生もいるはずです。数は少ないと思いますが、成功率 の高い先生を捜し当てるかあきらめるか。少なくとも早々と抜歯の方向に伏線を引いている先生 では多くを望めないでしょう。

 7番一本抜歯だと放置。67二本抜歯だとインプラントか部分入れ歯という選択になります。


返信:2004年12月21日 11:24
 12月15日 右上6番7番の大臼歯について質問させていただいた者です。御礼が遅くな りましたが、的確で丁寧な回答をいただき有り難うございました。

18日に診察に行ってきましたが、6番については快方に向かっているならいじらない方が良い とのことでそのまま様子をみることになりました。河田先生も「あえて抜髄を決断することはで きません」とおっしゃっておられますが、壊死した歯髄をそのままにしておいて何か悪い影響は 無いのでしょうか?
あと、右下7番大臼歯の抜歯(12月14日の質問の続き)についても聞いてみたのですが、 「孔があいてるから痛みが少しでも有る様なら”全部”抜かないとダメ」だと言われました。 何度も同じ様な質問で申し訳ないのですが、もし抜歯したとしてそのまま放置しても7番なら 問題ないのはどうしてでしょうか?
6番が空いてる7番側に寄ってきて歯並びがわるくなったり、歯茎が痩せて6番の歯が抜けて きたりしないのでしょうか?
本当に河田先生なら信頼、納得の上で診療が受けられるのに・・・とジレンマを感じますが、 現実そうもいかず・・・(遠方から出向かれる方の気持ちがよく分かります)ここでのQ&A のみが今の治療において納得出来る材料となっております。何日にもわたって同じ様な質問で 申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

回答:
 近心移動傾向といって、歯は手前に移動してくる習性があります。6番を抜いたままにし ておくと、後ろの7番が手前に倒れこみながら移動するでしょう。反対に7番を抜歯した 場合は、微妙な変化は別にして移動は起こりません。ただし、対合する歯があれば挺出する 可能性が高いと思います。しからば何か補綴処置を行うとすれば、手前の歯2本を削って 延長ブリッジか一本だけの部分入れ歯となりますが、そうすれば手前の歯をかえって傷める 結果になります。補綴的な共通見解として6番まであれば十分噛めるので、7番欠損に対し ては補綴を行なわないというのが一般的です。

 6番に歯髄壊死があればいずれ根尖病巣に発展して症状を現すでしょう。そうなってから でも的確な根管治療が行なわれれば治癒します。不完全な根管治療や抜髄を行なった歯と同 様に考えて下さい。不完全かもしれないという疑いがあっても、それがレントゲンや臨床症 状として明らかになってから治療するのと同じです。3か月に一度くらいはレントゲンを撮 ってとんでもなくヒドイ状況になる前に見つけ出す姿勢が必要です。