日付、時間:Mon Nov 15 8:41:52 Japan 1999
氏名: E.A.
所在都道府県:東京
職 業:主婦
年 齢:43歳
性別: female
質問:
はじめまして。私は現在アメリカの歯医者に通っているのですが、納得できない事が
あるのでこのページで質問させてください。
少なからず歯槽骨の破壊もあり、歯茎もやせて歯根が露出している歯もあるので、歯の矯正を
しないと歯を失うといわれたので約2年間矯正装置を付けました。上の八重歯1本と下の
歯1本をなおしたのですが、その間は、3ヶ月に一度歯のクリーニングに行き、ブラッシングもき
ちんとしました。それにもかかわらず、矯正が終わってみると、矯正前はなんでもなかった歯が
ぐらぐらになってしまいました。
現在は取り外しのできるリテーナーを半年ほどはめていますが、いまだに矯正でなおした上の
歯1本と下の前の部分の歯6本がぐらぐらしています。
そこで歯周病の専門医に行ったところ、下の歯の内側に取り外しのできないretainer wireという
ものを1年ほど付けるようにすすめられました。かかりつけの歯医者にその事を話したところ、
歯がある限りretainer wireをつけたままにしておくように言われました。できたら歯が落ち着い
たら、歯周専門医の言うように、retainer wireをはずしたいのですが先生はどうお考えになりま
すか。
又私は歯の矯正をするのにそれほど積極的だった訳ではないのですが、歯並びをなおさない
と歯を失うと言われたので思い切ってしました。その結果矯正前は何でもなかった歯が矯正後
はぐらぐらになってしまい、矯正するようにすすめたかかりつけの歯医者に、今度はretainer wire
を付けないと歯を失う等といわれたので、何のために時間とお金をかけて矯正をしたのだろう、
という思いにとらわれています。
特に掲示板で歯肉疾患がある程度進行した人が矯正装置を長く付けることは、歯肉疾患を進行
させてしまうことがあるという先生の回答を読んで、とんでもない間違いをしてしまったのだろうか、
という気がしています。先生のお考えをお聞かせください。
矯正前には、歯肉疾患が進行するかもしれないとか、歯がぐらつくかもしれない等という説明は
全くありませんでした。
ご意見・ご感想:
外国に住んで歯で悩んでいる私にとって、このページは心の支えです。
先生、本当にありがとうございます。
“歯周疾患の原因は、歯石や歯石沈着によって変質した象牙細管内の有機質に対する
アレルギー反応の結果生じる炎症”という理論からすれば、歯並びの悪いことはマイナス
要因ではありますが直接の原因ではありません。マイナス要因を排除することは決して悪いこと
では無いのですが、矯正することによるリスクを考慮すればあまりお勧めできないと思っています。
しかし、これはあくまでも私個人の価値観であって、歯科界の常識とは相当の開きがあります。
学会発表でも、ハイレベルの歯周治療として、歯列矯正を併用した症例が注目されています。
歯列矯正を併用して良好な結果を出しているのも事実ですから、一概に否定は出来ないよう
ですが、何かポイントのズレを感じます。
それよりも現状を正しく認識して、今後の対応を前向きに考えなくてはいけませんね。
retainer wireは、歯周病の立場から考えると“永久固定”に相当します。一旦破壊された
歯槽骨は原則回復しませんので、単独の歯がしっかりしてくることはあまり見込めないと
思います。そう考えると、何らかの固定が必要ですのでretainer wireも選択肢の一つだと
思います。「舌感が悪い」「清掃し難い」などの不満が強いようですと、それを解消するような
方法に取り替えるのも一つですが除去するにはちょっと勇気のいる決断が必要かもしれません。
状況によっては、歯の神経を取って手術することが有効な手立てとなるかもしれません。
しかし、その辺の判断は歯周疾患の担当医と十分に話しをして今後の対応を考えるべきですね。
質問:
retainer wireのことでお世話になった者です。親切なお答えをありがとうございました。
もうひとつ質問させてください。
retainer wireは舌感が悪かったり、清掃し難い等の不満が強いそうですね。それを解消するような
方法で、retainer wireに替わるものというとどの様なものがあるのでしょうか。2年間矯正装置を
付けたので、できれば不快感のあるものは付けたくありません。
回答:
簡単なケースでは、歯牙色や透明の接着性レジンで歯をつないだりするのを見受けますが
すぐに壊れてしまうでしょうね。歯を少し削って金属の鋳造体を埋め込むのも一つですが、面倒な
割に脱落するケースが多いと思います。
最近ですと形状記憶合金を切削部位に埋め込んで、接着性レジンで封鎖する方法が最も
信頼性が高く、もしはずれたときも修理が容易ですのでお勧めです。ただし、医院ごとに置い
てあるものが違いますので、そこにある材料の範囲で対処するしかないと思います。
ちなみに私の医院では、上記の材料はほとんど置いていません。動揺歯を固定する能力に
疑問を感じているのと、抜髄による歯周疾患抑制効果を信じていますので、固定を必要とする
症例では抜髄のうえ補綴物による連結固定を行っています。