コアを除去して根管治療を行うのが根本的な治療法です。
誤った歯根端切除術

日付、時間:Thu Mar 23 16:21:55 Japan 2000    氏名: a,k   
所在都道府県:兵庫   職 業:その他   年 齢:24歳      性別: male  

質問:
私は5年前、上の前歯〔1〕の根っこが化膿して掃除したり薬を入れたりして治療して いたのですが、なかなか治らなくて、歯医者さんに歯を抜いてしまったほうが良いと言われて、 歯並びの関係上、上の(1)と上の(2)の右を抜いて、(2)の左と(3)を削り、そこからブリッチ にしました。
ところが昨年の夏に上の(2)の左の根っこが化膿し、治療するときに、ブリッチをはずして治療 する方法か、歯茎を切って直接膿の袋を取り除く治療方法の二つがあるときいて、職業上、早く 治療をすませたいから、早くすむ、歯茎を切って直接取り除く方法を選択し、2月29日に歯茎を 切って取り除いてもらいました。
ところが、この2、3日以前化膿して腫れていたと思われる部分が再び腫れだし、さわったら痛く、 歯医者に行ったところ、治療から時間がたっていないので、今の状況だったら、わからなく、治療 方法がないといわれました。レントゲンも取ったのですが、これも時間がたっていないので、みて もわからないといわれました。仕事で楽器を吹いているのですが、以前腫れてふけなくて、時期を 選び早くすむこの方法を選んだのですが、歯の事が気になるので楽器が吹けません。どのように したらいいんでしょう。

メールアドレス: kymatuda@gol.com   ホームページURL: http://

回答  歯茎を切って排膿して一時的にしのぐ目的でしたら問題はありませんが、 歯根端切除術の積りで行った処置であれば“誤った選択”だったと思います。

 根尖病巣の原因は、根管内の汚物ですからこの汚物を排除すべくBridgeをはずして根管治療 すべきでした。それがどうしても不可能な場合に限って根尖部から逆根充して汚物を封じ込める 歯根端切除術が存在するのであって、綿密な封鎖を確実に行うことが難しい(不可能?)なものを あえて選択するのはいかがなものでしょうか。
 症状を拝読しまところ、場合によっては根尖部の掻爬だけで“逆根充”をしていないかしたとしても 不確実だったように思います。状態にもよりますが、今からでもBridgeをはずして根管治療をヤリ直 す以外に解決の道はないと思います。

返信:
さっそくお返事をいただき、ありがとうございました。たいへん感激しております。
先生のアドバイスを読み、今回のやり方では完全な治療にはなっていないらしい事がわかりました。 そこで、またお尋ねしたいことがあります。お聞きしたい事は、

  1. 今すぐするべき事は何でしょうか。2月末に歯茎を切り、膿の袋を取り除く手術をしていますが、 同じところがまた、痛み出しています。しかし、今行っている歯医者さんは、手術後まだ日数がたっ ていないため、レントゲンを見ても、手術が成功したかわからないし、治療方法もないとおっしゃい ますが、いつ頃になれば、わかると思われますか。
  2. もし、河田先生のアドバイスのように、Bridgeをはずして根管治療をやリ直すとすれば、どれくら い治療期間はかかるのでしょうか。また、それを行えば、今後痛むことはなくなるでしょうか。
回答:
 治療後痛みがあること自体、「すでにうまくいっていない」と判断します。
一度歯根端切除をした歯は、根尖部の切除の状態によっては根管治療が不可能な場合もあります。 また、根管治療しても根尖部の閉鎖が不完全になり易いので、恒久的な回復が不可能かも知れま せん。
それらの諸条件が、全てクリアできる状態であれば完全な回復の見込みもありますが、実際のモノ を診て、治療してみないと将来の予後は予測できません。また治療期間(回数)は、担当するドクター の経験と技術によって大きく異なりますので、それこそ全く予想不能です。

  診断:2000.4.11
 根管内の汚物が原因である以上、コアを除去して根管治療を行うのが根本的な治療法です。 確かに、太い金属ポストが挿入されているために除去にあたっては、相応の労力を要することと 歯根破折の危険性が高いことが予想されます。
 このたび行われた歯根端切除術では、汚染部分が金属ポストより下に限局されている状態で あれば成功の可能性もありますが、金属ポスト部分にも問題だあれば必ず失敗するというきわめて 予知性の悪い選択だったように思います。術後の経過は悪く、歯肉の腫脹もありますので、結果は 残念ながら不良です。

 今後の対応としては、歯牙保存を優先して、改めて歯根破折を覚悟で金属ポストを除去して根管 治療と言いたいところですが、残存する歯根の状態から根管の閉鎖も難しく生存確率のきわめて 低い選択となってしまいます。
 このような状況になってしまった現状では、隣在歯への炎症波及が懸念されますので、とりあえず Bridgeはそのままにして、|2の歯根だけを抜歯することをお勧めいたします。  といいますのが、他に問題が全くなくこの歯一本に集中することができる状態であれば良いのです が、このような悪条件の歯を生存させる労力があるのであれば、もっとそれ以外に労力を費やすべ きことが多分にあるからです。
 ムシ歯、歯周疾患、根尖病巣が多数ありますので、それらを徹底して治療し、長期間保存できれば 前歯の1本にこだわるよりもより大きな治療成果をあげることができると思います。

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