Mooreら(1986)の研究によるば、歯周疾患に罹患した歯を抜歯し、水道水で洗浄しただけで
セメント質中の内毒素が除去された。そして、水道水で洗浄しながら柔らかい歯ブラシ
でブラッシングところ、内毒素が99%除去された。従って、内毒素は表在性にしか存在しない
と解釈されるのでルートプレーニングは必要ないとしています。
また、除去されなかったセメント質が、歯周疾患の進行に関与していないことが
Nymanら(1986)のイヌを用いた実験によって確認された。
以上の結果、「歯肉縁下の処置において、必要なのは根面の細菌の除去であって、歯質まで
除去する必要はないことが裏付けられた。」として世間の指示を得ていますが、本当でしょうか?
歯槽骨の破壊が“炎症”の結果生じることは私も承知しています。また、炎症の成立に“細菌”
の存在が不可欠であることも事実です。しかし、ここで見逃されている重要なファクターがあります。
それは、“アレルギー反応”の存在です。
アレルギー反応を引き起こす元となる物質をアレルゲンといいます。歯槽膿漏の進行に関係する
最強のアレルゲンは歯石です。従って、歯石さえ除去すれば炎症は治まります。
内毒素もアレルゲンの一つには違いありませんが、内毒素以外にもアレルゲンは存在するはずです
(例えば私の提唱する象牙細管内の変質しているであろう有機質など)。
内毒素だけをターゲットにして処置の必要性を云々するのは間違っているように思います。
現実に、歯槽膿漏の進行は停止(抑制)するけれども、組織の再生には至らないのですから。
歯槽膿漏の進行抑制と歯周組織の再生は区別して考える必要があります。
例えば、70歳・80歳になっても30代の状態を維持し続けることは重要な治療方法です。その
ためには、“徹底した歯石の除去と継続した歯石の除去”で十分です。
ところが、大きく破壊された部分の組織再生となると根面、或は変質しているであろう歯質
の改善が必要となってきます。