歯槽膿漏とは、歯を支えている周囲の骨(歯槽骨)が経年的に破壊され最後には激しい
動揺のために大切な歯が脱落してしまう疾患です。
永久歯における歯槽膿漏の始まりは、歯牙萠出の止まった15〜16歳頃から始まり、症状が
著明になる(患者さんが自覚する)のは平均的には50歳を過ぎた頃からです。
歯槽骨破壊の原因は、長年にわたる歯牙周辺の炎症です。この炎症の成立にはいわゆる
“歯周病菌”とか最近脚光を浴びている“カンジダ菌”が関与しているものと思われます。
関与している細菌を全て口腔内から排除できるものであれば、それらの菌を排除すること
が“根本的原因除去療法”として決定的な治療方法になるはずですが、無数に生息する
口腔内常在菌の中から、同じ常在菌である複数の菌種だけを排除することは不可能である
と考えております。
一方で、歯周病菌を含む口腔内常在菌が存在しても炎症を起こさない(起こしにくい)
歯牙とか人もいます。炎症を起こすかどうかは、個体別には免疫抵抗力の強弱が影響して
いるものと思われますが、同じ個体の中で炎症を起こすかどうかは、炎症部位に存在する
歯石の量に比例します。つまり、免疫抵抗力の強弱や存在する菌種や細菌数に関係なく
生体にとって異物である歯石の量ににより炎症の発生が左右されるということです。
見落としてはならないのは、生体内に異物が存在すれば必ず免疫反応は起こり、免疫
反応の起こった部位に炎症が成立するという事実です。従って、免疫抵抗力の強弱や存在
する菌種や細菌数に関係なく、歯石が全く存在しない環境では骨破壊の原因である炎症が
成立しません。免疫抵抗力を高める食事指導や、特定菌種の排除には限界がありますが、
常に異物(歯石)のない環境を作ることは可能です。
ブラッシングによる歯石沈着阻止も有効ですが、ブラッシングだけでは歯肉縁下に沈着
する歯石の除去は不十分です。そこで、とにかく現在沈着した歯石を方法はともかく全て
(できるだけ)除去した上で、新たに沈着する歯石を毎月取り続けることが最善の方法と
言えます。
事実私の医院では10〜20年間におよび、単に歯石を取り続けただけで歯槽骨破壊を完璧
に抑制しています。
参考:炎症とアレルギー