「折角来たのだから、もっと沢山治療して!」「毎日でも通うから、早く治して!」
案外多い患者さんからの希望です。
型を採って“かぶせ”を作るのに1週間。治療の直後は一過性の痛みが出るのでしばらく
日にちを置いて治療した方が…。これは、歯医者の言い分です。ところが、もっと根底には、
厚生省の指導があるからです。「患者さんの要求を無視して、ゆっくり治療しなさい」
勿論、厚生省はこんな指導は一切していません!! と反論するでしょう。
患者さんのニーズに応じた治療をするのが、自由経済社会の常道のようですが、医療の現場は
医療費削減を最重要課題とした社会主義的経済です。“みんなで渡れば恐くない”“一人目立つ
と明日はない”みたいな感覚がズッシリと支配しています。
3日おきに2本づつムシ歯の治療をしたとします。1ヵ月に10数本の治療をした計算になります。
そうすると“お上”から問い合わせや呼び出しがかかってしまいます。「指導にも関わらず改善し
ない者は保険医の取り消し」の切り札を散らせ尽かせながら…。
他の医院では1月に数本なのに本当に10数本のムシ歯があるの…といった単純な正義からの問い合
わせなのでしょうが、私たち保険医にとっては無言の恐怖となります。
来月から出張とか、特殊なケースでは患者さんの要望に応えて治療する場合もありますが、
ご用とお急ぎでない場合はちょっとゆっくり目の治療をお願いしているのが現状です。