36歳・男性 | 1年7ヶ月後 |
4│根管治療終了時 |
こんなに大きな嚢胞に成長して! |
再診時所見および処置:
4│根尖部の腫脹と疼痛を主訴に来院。根管治療には自信があるのに…と思いながらもクラウンを
除去し根管治療を行う。予想通り舌側にもう1根! 十分排膿を行い再び根充。
感想:2根管であったことで再発の原因がハッキリして一安心。それにしても1年7ヶ月で
こんなに大きくなるものかと驚くことしきり。患者さんの納得も得られて一件落着。
36歳・男性 | 抜髄後 1年7カ月後 | 再治療後 2年9カ月後 |
4│根管治療終了時 | こんなに大きな嚢胞に成長して! | 成長も早いが治癒も早い! |
初診時所見および処置:
右下4番に歯髄壊死に伴う根尖病巣を確認。通法に従い根管治療(失即充)を行い、
症状の消退確認して補綴物を装着。
再診時処置および経過:
1年7カ月後、再び右下4番根尖部の腫脹と疼痛を主訴に来院。レントゲン的にも根管充填には
問題がないように思われたが、根尖部の病巣は明らかであった。根管治療には自信があるのに…
と思いながらもクラウンを除去し根管治療を行う。予想通り舌側にもう1根! 十分排膿を行い再び
根充を行った。
その後は順調な経過をたどり、2年9カ月後にはほとんど根尖部の病巣は消失した。
考察:
根尖部に病巣がある限り、根管治療に何らかの不備があると
思います。嚢胞摘出や根尖部の掻爬をする前に必ず根管治療を確かめる必要が
あります。
本症例では、根管充填した1根についてはレントゲン所見通り何も問題はなかったが、もう1根の
存在が比較的容易に確認できたので治療には迷いはありません。ただ、根尖部の病巣があまり
にも大きかったので根尖部の掻爬を念頭には置いていましたが、幸いにも術後の疼痛もなく手術
には至りませんでした。
感想:
病巣がどんなに大きくても、根管治療がしっかりしていれば必ず治るものなんですね。
それにしても回復が早い!
52歳・女性 | 嚢胞摘出直後 | 1年後 |
根管治療時 | 根管治療だけでは排膿が止まらず手術 | 案外早く骨ができたなぁ! |
初診時所見:
2〜2根尖病巣によると思われる腫脹を主訴に来院。オトガイ部にできた外歯瘻は臨床経過の長さを
物語っているように思われる。前医にて根管治療を行った形跡はなく、切開による排膿を行って
いたものと思われる。
処置および経過:
下顎全歯の根管治療を行いしばらく経過観察したが、オトガイ部にできた外歯瘻に変化はなく、
根尖部の症状にも変化が認められなかった。嚢胞摘出後の経過は良好で、臨床症状の消失を待ち、
最終補綴物を装着し、経過観察を行うこととした。
1年後のデンタルX線写真では骨の造成が確認された。一方、オトガイ部にできた外歯瘻は
瘢痕を残すものの治癒したものと思われる。
感想:歯根嚢胞の根本的な治療は根管治療であるが、或る一定以上大きくなった嚢胞では
根管治療だけでは不十分である。反対に、いくら根尖部の掻爬を行っても根管治療が不十分であれば
治癒は一切望めない!!
38歳・男性 | 嚢胞摘出後1年 | 11年後 |
根管治療時 | 骨の回復は遅いが経過良好 | X線上の回復に5年の歳月を要した |
初診時所見:
2│根尖部の腫脹と排膿が認められ、治療中と思われる綿栓を除去すると相当量の
排膿があった。
処置および経過:
32│の根管治療終了後、嚢胞摘出術施行。術後の経過は良好で、3ヵ月後に補綴物を
装着し治療を終了。9年後に補綴物を再製し現在に至るが、その間臨床症状もなく経過良好。
現在、歯周疾患のメインテナンス継続中。
感想:X線的には回復が遅く、少しいらだちを感じる症例ではあったが、術直後から
不快症状が消失しなんとなく安心して経過を観察することができた。それにしても、抜歯を
行わなかった前医に感謝!
41歳 男性 | 1年8ヵ月後 | 2年10か月後 | 3年5か月後 |
1990年1月8日 | 1991年8月1日 | 1992年11月9日 | 1993年6月14日 |
初診時口腔内所見:
ブリッジ脱落に伴う歯牙鋭縁部接触により左側舌縁部に潰瘍を形成。
口腔清掃状態は比較的良好で、全体に咬耗が著明ではあるが他に特記事項なし。
処置および経過:
残根状態であった「8を抜歯し「6の歯冠修復を行う傍ら、口腔内全体の清掃と舌縁部に対して
貼薬をおこない症状の改善をみた。病理検査の結果、悪性を確認できなかったが、前癌病変であること
と経過観察の必要性を十分説明し一旦治療を終了した。
その後、潰瘍が全く消失することはないものの、改善と増悪を繰り返し約3年が経過。そのわずか半年
後には明らかに“癌”と確認できる状態に変化していた。
急きょ、大学病院に紹介し、各種治療と病巣部の摘出を行った。摘出後4年を経過した現在
再発傾向はなく経過は良好。
感想:
症状が一進一退を繰り返している間は、一応悪性の疑いが薄れてはいたものの、一向に完全治癒
のない状態にいらだちを感じながらの観察であった。毎回病理検査にだすわけにもいかず、さりとて
著変のない症状に、今更大学病院に行きなさいとも言えず苦悩の日々が続いた。
それにしても、大学に送る前の半年間の急変にはあわてふためくばかりであった。
患者さんは、「6の修復終了後どの位の間隔で来院したのですか?
ご意見・ご感想:急変するまでの3年近く、一進一退が続いたということで、河田先生の奮闘が感じられました。術後再発は無い、という事で安心しました。
基本的には、3か月に1度ですが時には6か月のときもありました。特に、急変し
た時には6か月まるまる開いていました。
10歳 女性 | 4年後 |
初診時パノラマ(一部) | 下顎智歯上方に母指頭大の嚢胞出現 |
再初診時口腔内所見(右レントゲン):
口腔内の所見としては、智歯遠心に腫脹・圧痛等の症状はなく、特記事項なし。
レントゲン診査により右側下顎智歯上方に母指頭大の嚢胞を確認。“濾胞性歯嚢胞”と診断。
処置および経過:
即刻、大学病院に紹介し、約1週間の入院の上、局所麻酔下にて、智歯および嚢胞摘出。
術後の経過は良好で、8年を経過した現在再発傾向なし。
感想:
14歳で大学病院に入院した時には、「短い人生の終わり」と落ち込んでいた少女も、今は22歳で
早々と結婚して幸せそうな人生を送っているようです。
それにしても、術前4年のレントゲンでは何んらの兆候もなく、また、その間も臨床症状もなく…
何時の間に?…いきなり巨大な嚢胞になってしまったのだろうと感心してしまいました。
術前のレントゲンと経過が比較的整備されていることから、当時小児歯科学会に発表しました。
大学病院へ入院して手術という事を説明する時は、どんな事に気を使っていますか? (両親、本人)
ご意見・ご感想:はやく「参考意見を言えるように」と思っています。
良性と悪性ではおのずと対応が異なります。しかし、いずれの場合も本人にかかる
負担が大きいのは同じだと思います。
良性の場合(本症例)は、「通院での治療も可能ですが、遠隔地でもあるのでホテ
ル代わりに入院したほうが本人にも家族にとっても楽ですから」と緊張しないよう
に話しを進めます。
悪性の場合は、当院から本人に告知しないことを前提としていますので、「ちゃん
とした検査をして治療を進める必要がありますので入院設備の整ったところでの手
術が必要です。」と本人をさとした後、家族に連絡をとって悪性である旨を告げ確
実に大学病院に行くことを約束します。
17歳 女性 | 術後 1年後 |
初診時 パノラマ | わずかに痕跡が残るものの経過良好 |
初診時口腔内所見:
清掃状態は不良で、全体にカリエスと根尖病巣が認められ、両側頸部リンパ節の腫脹が触知される。
処置および経過:
レントゲン診査の結果、左側下顎枝関節突起部に腫瘍性のX線透過像を認めた。
両側頸部リンパ節の腫脹は、残根に存在する根尖病巣による反応と思われ、当院で処置することとし、
即刻、大学病院に紹介し、精査と処置を依頼した。
入院までの間に左側の疼痛の原因と成りうる「67は抜歯、│56の根管治療を行い、
2か月後、大学病院にて腫瘍摘出術施行。入院期間は、約3週間。病理検査の結果、腫瘍は、良性。
感想:
数ヶ月前に、弟が脳腫瘍のため手術を行い、今度は姉も腫瘍。歯はボロボロだけど可愛い
女の子なのに…不幸な家族と暗い気持ちになってしまいましたが、良性と診断され、また、順調な
術後経過を確認して一安心。
耳鼻科で何ともないと言われたのは当然として、これだけ悪いところがあって、症状もあるのに
前の歯医者では、パノラマを撮らなかったのかしら?
日付、時間:Sun Oct 5 14:35:00 Japan 1997
発信地:埼玉
氏名: 浅野 威
職業:歯科医
年齢:44歳
性別:male
ご意見・ご感想:
パノラマレントゲンの必要性を見せつけられました(基本的な事ですが) 。
患者さん の訴えをよく聞くのも大切とあらためて感じ入りました。
初診時口腔内写真 | 3年後口腔内写真 | 5年後口腔内写真 |
74歳 女性 | 白板症状に変化なし | 頬部に拡大傾向が認められた |
口腔内およびX線所見:
上顎の前歯部に残根上の義歯が装着されておりカリエスによる歯牙破壊が随所に
認められた。歯槽骨の破壊は年齢の割に少なく骨植は全般に堅固であった。
初診当時より、下顎前歯部の唇側歯肉を中心に広範囲の白板症状が認められたが
悪性を疑わせる所見は存在しなかった。
処置および経過:
歯肉の異常に関しては、“本人は気にしていない”のと74歳と高齢であったこともあり経過監察
の約束を取りつけただけで特に治療は行っていない。 歯周初期治療終了後、通法に従って
根管治療および補綴治療を行い月に1度のメインテナンスに移行した。
術後数年間、白板症状に変化はなく経過したが、本年に入って若干の拡大傾向が認められるように
なったので、精査と加療を大学病院に依頼することとした。
考察:
大学病院での生検の結果、予想通り悪性所見もなく“白板症”と診断され一応安堵の
胸をなでおろした。白板症は一般に5%程度の悪性転化が報告されており注意深い経過の
観察が必要な疾患である。今後は3か月に1度程度大学病院で経過監察する予定である。
感想:
粘膜疾患は、誰もが癌の心配が頭を横切るものですが過剰に反応するのも考えものですし、
といって安易に処理するのも恐い疾患です。ちなみに、開業以来17年経過した時点で、
初発の癌腫に遭遇したのは2例です。
口腔内写真 正面 | 口腔内写真 右頬部 |
歯周疾患術後 メインテナンス中 69歳 男性 |
左右頬部を中心に白板出現 |
口腔内および既往症:
歯周疾患末期の患者さんで、16年前の初診時より歯周外科手術を含む処置を行い、
メインテナンス継続中の患者さんである。上顎歯牙がほとんど残存しているのに対し、
下顎の残存歯牙は2本で義歯を装着している。
口腔清掃状態は決して良好とはいえないが、1月に1回のメインテナンスにより
歯肉状態は比較的良好。また、1ヵ月前の受診時に歯肉腫脹をみとめたので、抗生剤を
5日分投与の既往があったが、頬粘膜の異常は認められなかった。
今回も定期的なメインテナンスのため来院。その時に左右頬部を中心とした白板様の
異常を発見した。
処置および経過:
カンジダ症または、白板症の診断の下に大学病院へ精査と治療を依頼した。
大学病院において、細菌検査を行い“カンジダ”を検出。処置としては、ファンギゾン含漱剤
の投与を受け、2週間後には症状は消退した。
そののち、約1ヵ月を経過したが再発傾向は認められない。
考察:
抗生物質の大量投与による“菌交代現象”の結果出現することで有名な“カンジダ症”である。
名前だけはほとんどの歯科医が知っている粘膜疾患であるが、私の場合実物を見たのは初めて
の経験であった。
カンジダが歯周疾患の原因だと主張する歯科医もいて、カンジダの撲滅を提唱されているようだが
口腔内細菌叢の破壊は決して良い結果を生まないと思います。
感想:
最近の診療で、舌癌・白板症と立て続けに経験した直後の粘膜疾患で、思わず何のためらいもなく
大学病院に行っていただきました。カンジダが確定してホッとしたのが正直な感想です。
カンジダに有効な薬が医院に無いことに初めて気が付きました。
初診時 パノラマ | 17年後 パノラマ |
年齢の割に虫歯が多く、根尖病巣も多発 18歳 男性 |
全体としてはまずまず |
初診時口腔内およびX線所見:
清掃状態は不良で、口腔内のいたるところにカリエスが存在していた。カリエスの進行も著明で
、すでに根尖病巣が数多くみられた。
歯槽骨吸収は、初診時18歳ということでもあり特に認められない。
処置および経過:
下顎左右6・6の根管治療を行うとともに、「5にたいして根管治療終了後、歯根端切除術を施行。
2年後、「5根尖病巣は治癒したものの、左右6・6に新たな根尖病巣が発症したので「5同様
歯根端切除術を行った(右側に対しては人工骨移植を併用)。
その後、1〜2年毎に来院してカリエスの治療を行うとともにスケーリングを実施して現在に至る。
17年を経過した現在、「6に根尖病巣の再発傾向が認められるが、歯槽骨の著明な吸収はなく
経過は比較的良好。
考察:
根尖病巣の原因は、根管治療の不備によるもので、完璧な根管治療を行えば通常治癒する
ことが多い。本症例のように根管治療を行ったうえでの歯根端切除術は不必要な処置であった
かも知れない。ましてや、人工骨移植は結果は良好ではあるが全く不必要な処置であったように
思われる。
感想:
口腔外科を卒業して、開業直後だったのでちょっとやりすぎたかな?でも結果はまずまず。
あとは、歯周疾患をコントロールして生涯入れ歯にしない努力をしなければ…
初診時 Dental写真 | 6年後 Dental写真 | 9年後 Dental写真 |
連結固定のため抜髄 60歳 男性 |
根尖病巣ができてしまった!! | あれ? 根尖病巣は? |
初診時口腔内およびX線所見:
「50歳頃までは、歯がほとんどあったのに、60歳になる頃はほとんど総入れ歯」と私が口癖の
ように言う言葉を地でいくような状況であった。残存歯はわずかに下顎の2本を残すのみで、
カリエス・歯槽骨吸収ともに"風前の灯火"状態。
処置および経過:
最後に残った歯を有効利用するために、徹底したスケーリングを行ったのち抜髄→連結固定して、
上下義歯を作成。
「せめて今からでも最後に残った歯を大切にしようね」とさとしてメインテナンスに移行。以後9年間
欠かすことなくメインテナンスを継続中。
途中撮ったレントゲンを見てガッカリ…"根尖病巣"。それ以来レントゲンを撮る気力もなく、
ただひたすらメインテナンスを継続していたが、何気なく撮ったレントゲンをみて驚きました。
根尖病巣が消失!前のレントゲンが間違いなのか、今回が間違いなのか。
考察:
自分の行った治療で根尖病巣ができることは決して稀なことではありませんが、
たった2本残った残存歯…しかも治療の簡単な前歯に根尖病巣ができたときのショックは
隠しようもありません。何の処置も行っていないので自然治癒とは考えられないので、
レントゲンのイタズラということで一応は納得しています。
感想:
たった2本のメインテナンス。この症例は保険審査の方でも目を付けられている症例です。
私自身も、何か後ろめたい気持ちもありますが、メインテナンスの効果は歴然です。
歯がたくさん残った人も、少しの人も平等にメインテナンスを受ける権利があるはず!!
ちょっと苦しいでしょうか(^_^;)?