このコーナーが身近な体験として、日常臨床に役立つことを願います。

トピックス

トピックス   脱 離

Topic No.33
'97.11.2
“脱離”も立派な疾患!!!  
66歳 男性 「34 連結冠
「34 Dental写真 主訴は4番、原因は3番

「入れ歯を入れてしまうと何ともないのですが、入れるときに少し痛いのですが…。」と訴えて来院。

口腔内所見:
 口腔清掃状態は比較的良好で、メインテナンスにもキッチリ応じるまじめな患者さんである。 「34周囲の歯肉がわずかに腫脹しているものの、義歯による外傷は見あたらない。また、義歯は 装着後1年以上経過しておりその間の異常は記憶にないとのことであった。 「34連結冠には、わずかな動揺が認められた。

処置および経過:
 X線診査の結果、「3のポストコアー周囲に脱離が原因と思われる二次カリエスが認められたので、 冠除去のうえ補綴物再製。経過良好。

考察:
 「3脱離にともなう辺縁歯肉の炎症と、「4負担過重による歯根膜炎が痛みの原因と考えられる。 「4歯根膜腔の拡大に気をとられていると、「3の脱離を見落とす可能性がある!! 原因不明の痛みに際して、歯石やセメントの残留と冠脱離を疑う習慣が必要である。 また一方で、“脱離”が歯牙喪失原因に占める割合が無視できないことを認識する必要がある。
本症例では、かなり強引な触診(ピンセットで冠を激しく上下に引っ張る)によりあらかじめ 「3の脱離が確認されたうえでのX線診査で、しかも二次カリエスが比較的明瞭なため 診断が容易であった。

感想:
 「患者さんの訴えには必ず原因がある」そんな信念で診断をしています。原因が分からない時には、 「あなたが痛いと言われる処には、必ず異常があるはずですが私にはわかりません。」と素直に 謝っています。「気のせいでしょうか?」と患者さんが助け船を出してくれるのですが、 医療の限界を説明したうえで、力不足を謝罪するようにしています。 患者さんの訴えと過去の履歴は大きな診断の助けとなることを痛感しています。


Topic No.34
'97.11.9
“脱離”も立派な疾患!!!  

60歳 男性 54 連結冠
初診時 Dental写真 主訴は5番の咬合痛

「他の歯医者で治療中なんですが…」ととまどいながらの来院。

診断:
 5番のクラウンには根管治療の形跡と思われる穴があり、ストッピングの仮封が施されていた。 ところが、以前に来院された際のレントゲンと比較して、根管治療の形跡はなく、また 根尖病巣を疑わせる所見もない。X線所見からは脱離を裏付ける所見が得られないまま口腔内 を観察。動揺や辺縁歯肉の腫脹等の脱離所見もなく、やや途方にくれた感じが漂うなか、 咬合紙を使った咬合診査を行っていた。その時、4番の補綴辺縁部からわずかな気泡を確認。 90%確証を得て“4番脱離”と診断。

処置および経過:
 患者さんの了解を得て、クラウンを除去することとした。結果は、予想通り脱離。 通法に従いコアーを再製し、延長を排除した連結冠を装着して治療を終了。経過良好。

考察:
 過去のレントゲンと気泡が決め手となった診断ではあるが、執拗に“脱離”を疑ったことが 診断の根底にあると思われる。 歯冠部分に綿栓を詰めただけの治療形跡が、前医の苦しい心境を物語っている。

感想:
 “脱離”が確認された瞬間、内心ほっとする一方、胸のつっかえが一瞬に無くなった感じが しました。“脱離”が以外と見過ごされることの多い疾患であることを再認識させられた 症例でした。


Topic No.40
'97.12.21
やっぱり脱離!!!  

56歳 女性 Bridge切断除去 │4除去後
初診時 │4の疼痛を訴える │4頬側coreに陰影像 │4は脱離・二次カリエス

「先日から歯が少し痛いのですが…」と来院。

口腔内およびX線所見:
 │4周囲歯肉の軽度な腫脹と疼痛、│C56FBrに多少の動揺が認められた。 Dental写真では特に異常が確認できなかったが、│4では縦方向の動揺が認められたので │4脱離を疑い、その旨と│3を含めた補綴設計の必要性を患者さんに説明。

処置および治療経過:
 Bridgeを切断しても│4クラウンの脱離は確認できず、更にクラウンを除去しても脱離が 確認できない状態であった。“誤診”の言葉が横切る中、最終的な補綴設計の必要性から │3の抜髄を行った。抜髄中のレントゲン写真に│4の脱離を疑わせる 陰影像が確認できたことから、再度│4coreの除去を試みた。その結果、予想通り │4は脱離しており、胸のつっかえが取れた思いで治療を終了。

感想:
 患者さんが、「とれました」と言った補綴物を再装着するのが“脱離”と解釈する傾向が強い ように思います。ところが、歯肉は腫れる・痛む、歯が滲みる、臭うなどの臨床症状とともに、 歯を再生不可能なまでに破壊する立派な疾患であることを認識しておく必要があるようです。


Topic No.41
'97.12.28
“脱離”を笑う者は!!!  

47歳 女性 「8二次カリエス
初診時 パノラマ写真 主訴は左側の口臭

「前の歯医者で何ともないと言われたんですが、左の奥歯が臭うんです。」ととまどいながらの来院。

口腔内およびX線所見:
 │7の深い二次カリエスと、「8周囲歯肉の腫脹と排膿が確認された。 歯周疾患の進行程度は中程度で、全体に不良補綴物があり、歯肉からの排膿が若干認められた。 当初、歯周疾患進行に伴う口臭を疑いながら、X線および診査を開始。現像し終わった パノラマ写真を見て、一目瞭然、「8クラウン脱離と二次カリエスと診断。

処置および経過:
 早急に、「8を除去し、周囲の増殖歯肉を切除するとともに軟化象牙質を除去。 かろうじて残った歯根にコアーを植立してBridge再製。経過良好。

考察:
 口臭を訴える患者さんのほとんどが歯周疾患によることが多い反面、本症例のように脱離にともなう 二次カリエスや深いカリエスによるケースがしばしば見受けられる。本症例の場合、 二次カリエスの進行が著明で、パノラマ写真でも容易に確認できたが、比較的早期の脱離は余程、 術者が疑いの目で見なければ確認できない。

感想:
 「口臭をいくら訴えても相手にしてくれないんです。」と最近遠方からの来院があった。その ケースは不良補綴物と縁下歯石による排膿が原因であったが、本症例同様“口臭”を軽視すると 患者さんを失うことを思い知らされた感じです。口臭と日常接している我々と違い、“口臭”を訴える 患者さんにとって、口臭は重大な問題であり悩みのようです。また、そこには必ず原因が隠れて いるようです。


Topic No107
'99.4.4
わずか1年足らずで!!!

初診時 パノラマ 8ヵ月後 Dental写真
カリエスの進行傾向は強い
47歳 男性
Bridge特有の二次カリエス発生

「奥歯で噛むとちょっと痛いような…」

初診時口腔内およびX線所見:
 元々清掃状態が不良で、カリエスの進行傾向が強いようであった。歯肉状態も不良で出血が著しい 割に縁下歯石が少なく、歯槽骨の吸収も軽度。

処置および経過:
 ブラッシング指導の甲斐もなくプラークの減少が認められないままカリエスの治療を終了し、 メインテナンスに移行した直後の出来事でした。「奥歯で噛むとちょっと痛いような…」という 訴えを受けてレントゲン撮影を行い、即座に納得。
Bridge脱離→二次カリエス→歯肉炎。

考察:
 抜髄→補綴後の歯痛で一番多いのが根尖病巣。それに次いで補綴周囲の歯肉炎です。 歯肉炎の原因としては、歯石やプラークの沈着や装着時のセメント残留。それと今回のような 二次カリエスが考えられます。補綴物脱離に伴う二次カリエスは、歯牙存続に大きくかかわる 一大事だけに特に重大です。補綴物脱離に伴う二次カリエスを早期発見するだけでも、喪失する 歯牙の数を大きく減少させることが可能です。

感想:
 メインテナンス中で良かった!!そうでなければ発見が遅れて、おそらく抜歯になっていたことでしょう。


Topic No112
'99.5.9
やっぱり、歯根破折!

疼痛発生時 Dental写真 1ヵ月後 Dental写真
第二小臼歯近心に亀裂?
62歳 女性
第二小臼歯近心に破折線が明確に出現

「歯茎が痛いんです!」 メインテナンス中の患者さんの訴えに嫌な予感。

疼痛発生時口腔内およびX線所見:
 清掃状態は比較的良好で、年齢の割に歯槽骨吸収程度は低い。また、歯周疾患に対する理解 もあり、メインテナンスを始めて6年目である。その間、大きなトラブルもなく順調に経過しており、 全体に歯肉状態は良好であったが、右下5番近心の歯頚部歯肉にわずかな腫脹を認めた。 エックス線所見では、近心歯頚部付近の歯根膜腔の拡大がみられたが、歯石沈着や歯根破折線 などの異常は認められない。

処置および経過:
 半年前に補綴物脱離により再製した際、根管治療を確認し根面処理を行ったばかりで、原因不明 なままスケーリングと抗生剤を投与して一旦症状は改善した。それから1ヵ月、再び同部の疼痛を 訴えたので再度レントゲンを撮影した。1ヵ月前のレントゲンでは確認できなかった歯根部の破折線 が鮮明に確認できたので抜歯を決断。

考察:
 メインテナンス中の患者さんで、歯肉の異常を訴えることは決して稀なことではない。 二次カリエス・補綴物脱離・補綴物の不適合・根尖病巣・歯根破折などはレントゲンで診断可能 な場合が多い。一方、歯周疾患の再発…歯石やプラーク・食片圧入などは肉眼所見に頼る部分が 大きく、清掃→抗生剤注入や内服して症状の経過をみて判断するのが実状です。
 抜歯した歯の破折面は真っ黒に変色しており、破折(亀裂)が随分以前から存在していたことが 推測できた。おそらく、半年前の脱離以前に亀裂が生じていたものと思われる。

感想:
 思わず抜歯してしまったけど、再植も考えられたなぁ。 もっとも、この手の再植は保険が効かないので抜歯以前に術式や費用の説明と前準備が必要なので 、抜いたあとで気づいても無駄。保険規則が恨めしい!!


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