15歳・男性 | ||
1」完全脱臼 どう処置しますか? |
術後6年 | 術後16年 |
結果:6年後のデンタルX線写真では、根尖に約4mmの歯根吸収を認める。
このままダメになると思い「10年保てば御の字」と患者さんに言い訳。
今後の予定:16年を経過した現在著変なし…経過良好。今後の予定なし。
感想:再植の場合、歯根吸収に備えて根管全体の綿密な充填が必要だと痛感。
死腔を残さない、作らないは医学の原点。
それにしても│1近心の骨吸収は有髄のせい?
34歳 女性 | │1再植直後 | │1再植後5か月 |
初診時 Dental写真 | 歯根崩壊部分まで挙上 | 懸念された│2近心より排膿 |
口腔内およびX線所見:
生真面目な正確を反映し、清掃状態は良好であった。1│12には比較的新しい
メタルボンドが装着されてるが、│1歯頚部の歯肉は腫脹し排膿も認められた。
X線診査により│1遠心側の歯根中央部に破壊像が認められた。また、
│2の歯根中央部にも周囲骨の破壊像が認められたものの歯根そのものには
特に異常は認められなかった。
処置および経過:
一旦罹患歯である│1を抜去の上、歯根破壊部分を処理して再び抜歯窩に
戻す“再植術”以外に方法がないことと、│2にも問題がありそうではあるが同時に治療
することができないことを説明した。
あらかじめ1│12のMBを除去し、TEKによる暫間固定の準備をした上で、│1
の歯牙再植術を施行。2か月間の固定期間を経て連結冠による最終補綴物を装着。
なお、│2は観察期間中に異常が認められなかったため特に治療は行わなかった。
他の治療も終了してメインテナンスに入ったとたんに│2の歯根中央部分が腫脹しはじめた。
根尖部との交通がないことから歯根の破折または、穿孔を疑い、歯肉を剥離した上で根本的な治療
を試みたが特に異常は発見できなかった。
感想:
原因が不明な以上、適切な処置方針が立てられない。全く困った状況です。
根管治療を試みてそれでもダメなら抜歯を覚悟で再植術を行うしかないのかなぁと現在考慮中です。
一難去ってまた一難。患者さんが信頼してくれている分だけまだ救いが有るような気がします。
55歳 女性 | 術後6か月 | 術後2年9か月 |
│5部他家移植直後 | 周囲骨も再生し経過良好 | 再植歯の歯根は全て吸収 |
口腔内およびX線所見:
メインテナンス中の患者さんでもあり、口腔清掃状態は良好。2年9か月前に他家移植を行った
│5が突然動揺しだしたの訴えに若干戸惑いながらX線写真を撮影。根充剤が明瞭に残存する
ものの移植歯の歯根は全く吸収しており、しかも│3では補綴物脱離所見が認められた。
処置および経過:
Bridge切断と同時に│5は脱落し、│3も軽い抵抗ののち容易にポスト部より
脱離した。今後、│3の歯冠修復を行ったのち義歯による回復を計画中。
考察:
術後6か月の所見では、移植歯周囲の歯槽骨再生も認められ、その後も順調な経過をたどって
いたためX線診査も忘れるほどであった。移植歯の歯根吸収は別段珍しくもなく、むしろ当然の
生体反応と考えられる。他の多くの症例では、5年を経過する頃に、歯根吸収に伴う歯肉の炎症が
始まり遠からず抜歯の運命をたどるケースが多い。また、稀には10年以上歯根吸収もなく順調に
経過する症例も見受けられる。この歯根吸収速度の違いに、歯槽骨再生への1つのヒントが隠され
ていると思う。
感想:
患者さんは、3年間何不自由なく咬むことができたので一応満足されている様子ですが、
術者側からみると不満の残る症例です。歯根吸収速度の違いの解明が急務かと思われます。
一応、若い人の移植歯ほど吸収が速いのでは?と思っていますが…
初診時Dental写真 | 術後Dental写真 |
14歳 男性 | │1再植術直後 |
口腔内およびX線所見:
下口唇を中心に強く打撲しており、唇にかなり深い裂傷があり出血も相当であった。
下口唇を押さえている左手は救急隊の応急処置により分厚く包帯せれていた。
右手に砂で汚れた前歯をにぎりしめて幾分ふるえた感じで力無く来院。
出血を抑える意味で即座に局所麻酔をした上でレントゲン撮影を行った。X線診査の結果、
幸いにも骨には異常が認められなかった。また脱落した歯にも破折等の所見は認められなかった。
処置および経過:
まず、出血の著しい下口唇を縫合し、出血を抑えた。歯牙結紮(暫間固定)の準備を指示する
かたわら、綺麗に洗浄した脱落歯牙を抜髄し、抜歯窩の洗浄と歯槽骨の状態を確認して歯牙を挿入。
1│も亜脱臼していたが亀裂等は確認されなかったので2-│-2をワイヤーにて
結紮して処置を終了。
考察:
車による事故の場合は、全身的な損傷は激しいのでまず外科病院に運ばれることが多い。
従って、脱落した歯牙の再植も困難になるケースが普通である。
今回の事故は、自転車による事故であったために歯科医院への搬送となったものと思われる。
再植した歯牙は、ほぼ100%生着するものと思われるが、その先の予後は予想しがたい。その理由
として、この様なケースの予後を10年以上の長期にわたって観察できるチャンスが少ないことが
挙げられる。本トピックスの“No 1”の症例では16年の経過を観察しているが、10年を超えるころから
歯根の吸収像を認めている。
感想:
「抜けた前歯を持って、サイレンを消してすぐに来て下さい!」はなかなか手慣れた対応だった
と自分で納得。以前、サイレンを鳴らしてきた時には、翌日近所の人に説明するのに疲れ果てた経験
があったもので…