10年一昔。初診時の進行状況とメインテナンスの有無によって異なる予後。

トピックス

トピックス   定期健診の効果 U

Topic No139
'99.11.14
抜歯を宣言されて10年後…しっかりメインテナンス
初診時 パノラマ 7年後 パノラマ
歯槽骨吸収は中程度
53歳 女性
骨吸収は抑制され喪失歯もない

主訴は下顎前歯部の動揺。

初診時口腔内およびX線所見:
 口腔清掃状態は比較的良好で、全体に軽度〜中程度、下顎前歯部では1/2以上(重度)の 歯槽骨吸収を認める。

処置および経過:
 通法にしたがって、歯周初期治療とカリエス治療および補綴処置を行ってメインテナンスに移行。 |7の歯根状態不良によるクラウン脱離以外に問題なく良好な予後を観察中。

考察:
 7年を経過して、初診時とのレントゲンを比較しながら説明をしていて驚いた。
「60になって、これだけの歯が残っているのですから、先生には随分感謝しています」
「実は…10年ほど前、他の歯医者で歯を抜いて入れ歯にすると言われてたんです。それで 2〜3年迷ってココに来ました。」
 抜歯の対象となったのは下顎前歯部だったようですが、何のためらいもなく…特別な処置 もなく、メインテナンスを続けて10年後も存在しています。メインテナンスがなければ ナチュラルヒストリー通り今ごろは半分以上の歯を喪失していたかもしれません。

感想:
 こんな歯を抜いて入れ歯にしていたのでは、“8020”なんて程遠い!!!


Topic No160
'00.4.9
メインテナンスの効果

初診時 パノラマ 10年後 パノラマ
中程度の歯周疾患進行を認めるが、年齢の割には良好
62歳 女性
1本の歯も失うことなく10年経過

「左上の奥歯がグラグラして咬めません。」

初診時口腔内およびX線所見:
 清掃状態は比較的良好で、全体に中程度の歯槽骨吸収を認めるが年齢の割には進行が軽度で あった。ただし、歯肉縁下歯石の沈着が著しく、76|67部の歯槽骨吸収は1/2以上で特に |7の動揺は著しい。

処置および経過:
 歯周疾患初期と平行して、|67を抜髄して歯周外科処置(FOp+HAP)を施行した。
そののち、|67の連結固定と全体の歯冠補綴を行いながら76|の経過を観察した が、動揺や排膿等の症状が改善しなかった。76|は歯槽骨吸収が比較的経度であったの で、有髄のまま歯周外科処置(FOp+HAP)を施行しメインテナンスに移行した。
 以後10年間、ほとんど途切れることなく毎月のプロフェッショナル・トゥースクリーニングを継続し、 その間に数本のカリエス治療を追加して現在にいたる。

考察:
 主訴であった|7は、10年後の現在、歯槽骨吸収が進行し必ずしも良好な状態とはいえ ないが、特筆すべきはそれ以外の歯は歯槽骨吸収が完全に抑制され、70歳を過ぎた現在でも骨植 堅固を保ち続けていることである。
 “50歳を過ぎた頃には歯の動揺が始まり、それ以降毎年のように1本づつ歯を喪失する”という 一般的なナチュラルヒストリーと比較して、動揺しだした年齢が10年程遅いとはいえ、喪失すべき 歯を最小限に留めた実績は大きいと思われる。

感想:
 メインテナンスの重要性と効果を如実に語る症例です!


Topic No164
'00.5.7
メインテナンスさえしておけば…

初診時 パノラマ 11年後 パノラマ
臼歯部に中程度の歯槽骨吸収を認める
59歳 男性
歯槽骨吸収はほとんど停止

主訴は、87|2の疼痛。

初診時口腔内およびX線所見:
 口腔内清掃状態はやや不良で歯石沈着は多く、臼歯部に中程度の歯槽骨吸収を認めるが、 全体としては年齢よりやや良好。

処置および経過:
 歯周疾患初期治療と平行して、8|抜歯、7| 5|の抜髄およびカリエスを行ったのち、転勤により5年間治療は中断。 その後、数本の追加治療を行いメインテナンスに移行。現在に至る。

考察:
 メインテナンスを行っていてもカリエスの進行は抑制しきれない(6|遠心、 8|近心)が、歯周疾患の進行は かなり効率良く抑制が可能と思われる。最初の5年間の空白期間中に喪失した部分を 除いて、全体としては満足のできる結果です。このままいけば、“8020”の可能性は十分!

感想:
 若い頃の10年間では歯を喪失しないことが当たり前だけど、50歳を過ぎてからの10年間では 歯を喪失して当たり前。


Topic No169
'00.6.11
いつ見てもプラーク一杯、それでも14年メインテナンス。

初診時 パノラマ 14年後 パノラマ
カリエスは少ないが歯槽骨吸収は中程度
56歳 男性
4|は上行性歯髄炎、7|7は歯周疾患と根尖病巣による歯牙喪失

主訴は87|の疼痛

初診時口腔内およびX線所見:
 清掃状態が不良でカリエスも多く、歯肉縁下歯石の沈着が著しい。口腔内の健康に対する意識 も乏しいが、歯周疾患の進行程度は中程度で年齢の割に比較的良好であった。

処置および経過:
 7|86|抜髄の上 G7E|Bridgeを装着。
「こんなに丁寧に汚れをとってもらったのは初めて」と歯石の除去と治療には熱心ではあったが、 度重なるブラッシング指導にも関わらず清掃状態が改善しないままメインテナンスに移行。
その後もブラッシングの改善がないまま、メインテナンスには几帳面に応じて14年を経過。 その間に次々とカリエスが進行して、抜髄→補綴を繰り返してはいるが、70歳を迎えた現在 残存歯数も多く総合的には経過良好。

考察:
 50歳を過ぎて、まさにこれから“坂道を転げ落ちるが如く”歯牙を喪失していく同年代の方々と 比較して、ブラッシングに問題を抱えながらもプロフェッショナル・トゥースクリーニングを継続 して良好な予後を得た症例だと思います。

感想:
 今更ブラッシングは良いから、このままメインテナンスを続けて“8020”達成を心から願っています。


真実!
日常の臨床で感動したこと・腹の立ったこと…患者さんに言えないこと…
自慢や非難と誤解しないで 下さい。自らのレベル向上の糧となることを願います。

歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏 歯槽膿漏