初診時 パノラマ | 8年後 パノラマ |
全体に、歯槽骨吸収が著しい 37歳・女性 |
1年に1回程度は何らかの理由で来院され、除石はしたけれど… |
口腔内およびX線所見:
口腔内清掃状態は比較的良好そうに見えるが、歯肉縁下歯石の沈着が著明で歯槽骨吸収が
著明。
処置および経過:
右側上顎6番ヘミセクション、左側上顎4番・下顎7番を抜歯し、上顎を抜髄のうえ歯周外科処置
(FOp+HAP)を施行して補綴物による連結固定を行った。
上顎治療終了と伴に来院が途絶え、その後1〜2年毎に何かトラブルを抱えて来院され、その
つどメインテナンスの重要性を説明するがどうしても受け入れられなかった。上顎の歯が全て
ダメになったのが6年後。下顎も5年後頃から、随時脱落もしくは抜歯を繰り返すも、根本的な
処置のないまま現在にいたる。
考察:
このような重症症例では、歯周外科処置を行ってもメインテナンスがなければ5年が一つの目安
です。歯周疾患進行傾向の強い症例では、年に1回程度のスケーリングでは進行抑制は全く不可
能だと思います。
感想:
本人は、「私が来ないから」と納得されてはいますが、医療を行う側としてはどうも後味の悪い症例
です。
初診時 パノラマ | 9年後 パノラマ | |
残存歯数は多いが歯周疾患進行は年相応 51歳 男性 |
全体に順調な歯槽骨破壊進行が認められる |
初診時口腔内およびX線所見:
口腔清掃状態はやや不良。全体に中程度以上の歯槽骨吸収が認められたが、年齢の割には比較
的良好ではあったが、歯石沈着が著しく、歯周疾患進行傾向は強そうであった。
処置および経過:
右下7番を抜髄した上で、智歯抜歯。続いて、左下7番を抜髄してBridgeを予定していたが
その時点で治療中断。
9年間のブランクを経て、右上臼歯部の動揺を主訴に再び来院。平均2mm以上の歯槽骨破壊
が進行しており、特に65|は上行性歯髄炎が原因と思われる急激な歯槽骨破壊により
動揺が著しい。
歯周疾患の進行状況とメインテナンスの重要性を重々説明した上で、765|を抜髄→
連結固定して保存に努めることとしたが、補綴治療終了後今回も来院が途絶えた。
更に2年後には下顎の中切歯の末期状態で来院され現在加療中ではあるが、歯周疾患は一段
と進行しています。
考察:
初診のたびに歯石の除去は行ってはいるが、元々歯石沈着傾向が強く、この程度では歯周疾患
の進行を止める効果は全く認められない。
まさに激変の起こり得る50歳台をそのまま象徴するかたちで、歯牙喪失の筋書き通り突き進んだ
症例のように思います。
感想:
現状と将来の予測については初診のたびに十分説明した積りではあるが、十数年を経てその予測
が当たって初めて理解が得られた?ちょっと寂しい症例です。
初診時 パノラマ | 16年後 パノラマ | 17年後 パノラマ |
カリエスは少ないが歯槽骨吸収は中程度 40歳 男性 |
4|は上行性歯髄炎、7|7は歯周疾患と根尖病巣による歯牙喪失 | |1は上行性歯髄炎、|4は歯周疾患進行による歯牙喪失 |
初診時口腔内およびX線所見:
清掃状態が不良な割にはカリエスは少ないが、歯肉縁下歯石の沈着が著しく歯周疾患の進行程度
は中程度で年相応で進行傾向は強そうであった。
処置および経過:
最初の主訴は8|の疼痛であったが、抜歯
終了とともに治療中断。その後、17年間に9回(初診回数)も来院したが、何れも主訴のみの治療で、
しかも痛みが取れると治療中断を繰り返す最悪のパターンであった。初診のたびに一応スケーリング
は行ったものの、いずれも満足な除去ができないまま経過した。
8度目の初診時も|5の根管治療(即日充
填)のみで中断。1年後に|1脱落に伴う補綴処置を希望して来院されたのが初診より17年目
のパノラマである。脱落した|15以外にも5|
|56の歯槽骨吸収が著明であった。
考察:
50歳を過ぎてからの歯槽骨吸収速度は目を見張るばかりで、特にこの1年間の骨喪失量は異常と
も思える速さである。1〜2年に一度の不真面目な歯石除去では、ほとんど抑制効果が得られない
ことを教えてくれる症例だと思います。
感想:
これじゃあ治療しても無駄。今度こそちゃんと最後まで治療してメインテナンスに持っていけるか
なぁ?
日常の臨床で感動したこと・腹の立ったこと…患者さんに言えないこと…
自慢や非難と誤解しないで
下さい。自らのレベル向上の糧となることを願います。