初診時 パノラマ | 術中 Dental写真 |
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|8歯冠崩壊が著しく、歯髄炎発症直前 52歳 男性 |
歯冠部分の除去ができず、歯根部分から除去 |
初診時口腔内およびX線所見:
口腔内清掃状態はやや不良だが歯石沈着は少なく、歯槽骨吸収も年齢の割には軽度。
|7および|8に深いカリエスを
認めるが、他部位は軽度なカリエスが散在する程度であった。
元々口が小さく、頬粘膜の緊張が強い上に開口は2横指半程度で、診療の困難なタイプであっ
た。
処置および経過:
主訴の|7を抜髄したのち、歯周疾患初期治療とカリエス治療を行い全体の治療を
ほぼ終了した段階で、最後の仕上げとして|8
を抜歯することを提案した。ほとんど粘膜に覆われた完全埋伏状態であるにも関わらず、歯冠
部分全体がカリエスで崩壊しており、今にも歯髄炎を起こしそうな状態で一度炎症を起こせば
ただでさえ困難が予想される抜歯に加えて、麻酔が効きにくく開口不能になれば抜歯不能になる
危険性が迫っていたからである。
現在痛みが全くないことから、抜歯の必然性を感じていないらしく、再三「どうしても抜かないと
いけませんか」という質問に対応しながら抜歯の承諾を得て治療を開始した。
元々開口が小さい上に、歯冠上部が崩壊し術野の確保が困難で難航を極めた抜歯であった。
残存した歯冠下部の先端は歯槽骨に食い込む形で、歯冠カットしたのちも通常の方法では除去
不可能なまま時間が経過。やむを得ず比較的単純な形態をした歯根部分から抜歯して、最終的に
何とか残った歯冠下部を除去して抜歯を終了(所用時間:1時間以上)。
考察:
通常の水平埋伏だと、ほとんど15分以内に終了させる自信はあり1時間以上の抜歯は
数年に1度程度しか遭遇しない。本症例では、術野の確保が困難であったこと以上に、
歯冠下部の咬頭が歯槽骨に食い込んでいたことが抜歯を困難にした最大の理由だった
と考えられる。そのことは、術前のレントゲンでも読み取ることは可能だったと思われるが、
現実には、術中の手ごたえとDental写真を見て始めて実感として読み取ることができた。
感想:
何とか抜けた安堵感と炎症が起きてから抜かなくて良かったという気持ちで一杯ですが、
術後の痛みが大きかったこともあって、「本当に抜かなアカンかったんですか」と恨むような
目で来院されている患者さんは最後まで納得されていない様子です。
後味が悪い (^^ゞ