ハイドロキシアパタイト人工骨補填術は根本的な治療法とはいえないが… 臨床上重要な意義がある

重症歯周疾患に対するハイドロキシアパタイトの臨床応用


河田克之
Katsuyuki KAWADA
●姫路市・開業



 先人達の研究と努力の結果、多くの歯牙疾患が征圧されつつある現在、中高齢者の歯牙喪失の 第1位要因である歯周疾患への関心が高まっております。

 歯周疾患も他の歯牙疾患同様、その予防が重要な治療法である事は申すまでもありません。 しかし、歯周組織がすでに破壊され咀嚼機能を営むことが困難になってしまった症例に対し 従来の抜歯→義歯という治療では、患者にとって必ずしも満足のいく現状とはいい難いようです。

 歯周疾患の治療として従来歯肉剥離掻爬術が行われておりますが、それだけでは喪失した 歯槽骨の回復に悲観的であると同時に、歯肉の退縮後に生ずる補綴との関係でも問題が 残っていました。


 一方骨量の増加を目的として、自家骨移植が非常に有効な手段であることは以前より 認識されていますが、骨採取に伴う二次的侵襲および、採取量の制約等あり臨床上困難な状態でした。

 このような状況の下、近年種々の人工骨補填材が開発され、それに伴い数々の歯周疾患への 応用が行われてその安全性と有用性が認められつつあります。

 このたび、昭和60年7月より、昭和62年12月の2年6ヵ月の間に、重症度歯周疾患患者 129名 (201症例、558歯)に対し、ハイドロキシアパタイト人工骨補填術を施行し機能回復を計り、 最長3年間の観察を行いましたところ、根管治療の不備3歯、歯根破折3歯、二次カリエス5歯を 含め、15歯の予後不良を除き歯牙の機能回復に成功し、若干の知見を得たので報告いたします。



第9回岡山歯学会総会  1988年11月19日
  岡山大学歯学部4階第1講義室
  (抄)岡山歯学会雑誌 8(1): 118 1989年 4月


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