骨補填材の限界と臨床的意義

HAP臨床応用の効果


河田克之
Katsuyuki KAWADA
●姫路市・開業



 HAP骨補填材は、各種の製品が日本でも発売されるようになったが、未だ積極的に日常臨床に 取り入れられているとはいえない。

 当院では、歯周疾患の日常臨床に、Fopとともに骨補填材を積極的に応用し、歯肉退縮の防止、 歯牙の延命、口腔内全体の環境の向上に好成績を得ている。

 歯周疾患の原因はプラークであるといわれているが、深い骨欠損を伴う症例では歯根そのものが 異物化しているため、その異物化した歯根に対する適切な処置が必要であると思うが、 現段階においてはルートプレーニング以外に良策はなく、ここにFopの限界がある。

つまり、すでに異物化した歯根部位では、骨との付着は勿論、一定範囲の骨の新生は望めないが、 逆に周囲の骨レベル以下で歯根が異物化していない所までは新生骨の造成が期待できるようである。

 汚染等により異物と認識されたごく一部を除いて大部分のHAPは、その特徴である親和性の 良さのため、生体の中で異物と認識されず骨および歯肉の中で長期にわたり残存する。 これにより歯肉の退縮を大幅に防止し、永久固定ともなる補綴処置が容易となる。


 HAPに対する一般的な評価として、歯周疾患を治療する「魔法の薬」的な期待と、 それに対する失望があるようだが、多数の症例に応用してみた結果、Fopを行うことにより、 周囲の環境を改善し、メインテナンスにより以降の進行を阻止しているだけで、 骨補填材はそれをわずかに補助しているにすぎないようである。

ところが、ここに臨床上大きな意味があり、放置すれば1〜2年で脱落するような症例でも、 骨補填材を積極的に応用することにより、5〜10年、あるいはそれ以上歯を保存し機能させることが 可能で、口腔全体の機能保持の上でも重要な意義があると確信している。



第8回兵庫県歯科医学大会  1990年6月17日
  兵庫県歯科医師会館
  (抄)歯界月報  518: 23 1994年 8月


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