今回は、象牙質知覚過敏症を訴える歯周疾患患者において、歯周治療の更なる臨床効果の改善を
目的として、下記の被験歯および試験方法に準じてその治療効果を検討したので報告する。
河田歯科医院を訪れ歯周疾患(歯周診査の結果成人性歯周炎と診断)に伴う象牙質知覚過敏症状
(ハブラシまたは爪楊枝等使用時での疼痛)を強く訴える歯、または本院で歯周疾患の改善にとも
ない惹起してくるような上記症状の歯を対象とする。
対象歯は歯周疾患の進行度がP1〜P3で、上記の疼痛を有し、本院にて@スケーリングおよび
ルートプレーニングを中心に初期治療完了後の歯、またはA歯周治療の途中から上記症状の起こって
くる歯,222本(患者:78名,男性:24名,女性:54名,年齢:21〜72歳)を被験歯とする。
但し、当該部位で齲蝕が認められる歯は除外。
治療法 |
前歯 |
小臼歯 |
大臼歯 |
計 |
---|---|---|---|---|
消炎鎮痛剤投与群 |
59 歯 |
23 歯 |
22 歯 |
104 歯 |
Nd:YAGレーザー照射群 |
23 歯 |
22 歯 |
46 歯 |
91 歯 |
コーティング材塗布群 |
19 歯 |
2 歯 |
6 歯 |
27 歯 |
計 |
101 歯 |
47 歯 |
74 歯 |
222 歯 |
0度:まったく誘発痛がない。
1度:軽い誘発痛がある。
2度:強い誘発痛があるが耐えられる。
3度:強い誘発痛があるが耐えられない。
著効:知覚過敏度の診査において術前3度、2度と判定された症例が0度となる場合。
有効:知覚過敏度の診査において術前3度が1度、2度が1度、1度が0度となる場合。
無効:知覚過敏度が術前と不変の場合。
増悪:治療により、さらに痛みが強くなる場合。
a:消炎鎮痛剤の5日間投与群
b:Nd:YAGレーザー照射群
c:Nd:YAGレーザー照射群
図1.消炎鎮痛剤の5日間投与群 | 図2.Nd:YAGレーザー照射群 | 図3.Nd:YAGレーザー照射群 |
今回は、このような象牙質知覚過敏症に基ずく著しい疼痛の
速やかな改善が、歯周治療で求められる重要性に着目し、その処置法を検討したわけである。
すなわち、3種の上記治療方法を施した結果、消炎鎮痛剤投与は、再発も多いが広範囲の
知覚過敏に有効であること。また、レーザー照射は、平均2〜3回の照射で効果を発揮/
所定の効果が得られるまでの繰り返し照射は可能である/するが象牙質の露出部分のない場合や
多数歯には不向きであること。また一方、コーティング材塗布は、再発も少なくより根本的な
治療といえるようであるが、1歯あたりの治療時間が長く部位によっては、
処置が不可能な場合もあるなど、難点も少なくないことが判った。