歯根端切除の後始末
日付、時間:2003年2月25日 8:43
氏名: haru
所在都道府県: 神奈川
職 業: 主婦
年 齢: 34歳
性別: female
質問:
はじめまして。もう少し早く先生のHPにたどり着いていたら、歯根端切除術はしなかった
だろうと悔やんでいます。
- 7年前(結婚・出産前)にA医院にて前歯上左右1,2番(4本)をメタルボ
ンドの差し歯(1本8.5万円)にしました。この当時左1、2番に何かしみる感覚があり、医師
に訴えたところ「おかしいですね。神経はもうないのですから」と言わただけでした。そして
4年前左1番の歯茎に膿袋が出き(痛みなし)放置してしまいました。
- その後、1年前遂に夜も眠れないほどの痛みに、近くのB医院に行きまし
た。そこで歯根のう胞と診断され、「せっかくいい素材が入っているのでもったいないから、
歯根端切除をしましょう」ということで、手術をしました。
- が5ヶ月前には、その切開した部分の上部(鼻の穴の下あたり)にコリコ
リしたシコリが気になり鈍痛も感じるようになったので、再度B医院に行きましたが、「昔
なら抜いている歯ですから、もう使えるところまで使いましょう」ということで処置がなさ
れませんでした。その後切開部(縫った部分)にも膿袋が出来てしまいました。
- それでも痛みがあり1ヶ月前に、これは歯根の治療を再度するしかないと
私も決意し、元のA医院に問い合わせたところ、「遠いから通うのが無理なら、(クラウンを)
外すだけ外してあげます」と言われ、外して貰いました。が、ここはどうも信用できず、別の
医院に行くことにしました(そこの先生に「7年持てば元は取れたわね」「腫れたのは妊婦
の時ちゃんと歯を磨けなかったりしたからでしょうね。仕方ないわよ」と言われたのです。
この菌の元はどこからきたのか!?根管治療の不備は???)。
- 今はC医院に行っています。ここでは主訴でもない歯周病のチェックを最
初にし(3.5m−4.5m)、歯石除去をし、ブラッシング方法を丁寧に指導してくれ、歯根処理
にも定評があると聞いております(近所の話)。2回の歯根治療(菌検査にてマイナスが出る
まで)を行い、3回目で歯根充とうをしたところで、現在に至っています。但し先生には「左
1番については予後はよろしくない。保険のきく歯を入れましょう。」「理由は歯根端切除を
した部分(左1番)の根は切除で削られ、その後溶けており、機械で測定をしても歯根の長さ
はあてにならず、レントゲンに何度も撮り直しながら充とうしましたが、根の先が閉じてい
ないため、次第に顎の骨側に薬が吸収されていってしまいますから。」と。土台は銅
色の細いねじのようなものを、クラウンはプラスチックを勧められました。「このねじはもと
もとキツイところにねじ込むならいいのだけれど、あなたの歯はすでに穴の直径が大きく、
キレイな円形の断面ではないので、歯とネジの隙間の粘着剤は、波にさらわれる岩のごとく
徐々に吸収されていってしまうので、外れやすいでしょう」と言われました。要はズボズボ
の壁にとりあえずネジをしておくってことだと思います。
左2番については「歯根の壁が非常に薄く、歯根治療も非常に怖かった状況です。今にも破切
しそうでしたから」と言われ、今度不具合があった場合には、この2本は抜歯しかないのかな
ぁ・・・とおぼろげにあきらめつつあります。鼻の下のコリコリしたものは現在もあります
が先生は「次第になくなると思いますが・・・・」と言われました。しかし予後がよくない
訳ですから、コリコリもなくならないかもしれない、、、と半ば私自身あきらめているので
すが・・・・。充とう後2日目(日曜日)に歯根切除した時の傷跡から再度白い膿袋が出来た
のも危惧されます。(今日は(火曜日)萎んでいますが。)
- ここまで読まれて先生はどのようにお考えになりますか?
充とう完了ですが、再度別医院で根管治療成功の見込みはありえますか?また土台、クラウン
についてアドバイスをいただけないでしょうか?
今は審美性よりも根の延命の方が重要に私には感じられるのですが。またもし再発した場合の
治療方針はどの道がベストでしょうか?前歯の入れ歯は、入れ歯と他人が見ても分かってしま
うものですか?(金具で別の歯に引っかけるのだと思いますが、外からも見えるものなのですか)
- もうひとつ右1番2番については、今の所痛みものう胞もありません。が、
レントゲンでは歯根の先にほんの少しだけ黒い影が映り、歯根管内の薬にも影が映っています。
またC医院ではクラウンの大きさが歯茎に対し食い込んでおりオーバーしている(不適合)と
指摘されました。そこの先生は今すぐ治療することには迷いがあるようで、「痛みがないので
あれば急ぐこともないでしょう。本当なら治療したいところですが」と言われました。河田先
生はどのように判断されますか?(参考までに上左右の糸切り歯は現在健在です。)
「腫れたのは妊婦の時ちゃんと歯を磨けなかったりしたからでしょうね。仕方ないわよ」は
困りモノですが、C歯科医院の処置方針は正しいと思いますよ。問題は根管治療の技術だけ。
一度歯根端切除した歯の根管治療や根管充填はなかなか上手くいかないケースが多いように
思います。願わくば予後不良な場合、再度の根管治療をして欲しいものです。それと少し気に
なるのが“薬が吸収されていってしまいますから”というところです。根管の閉鎖をセメント
様のシーラーだけで行っていないでしょうか?
ガッタパーチャーポイントと呼ばれるゴム様の充填材をしっかり押し込んで栓をしするのが
秘訣です。その場合、ポイント等が病巣内に飛び出してしまった場合には掻爬して除去します。
その密封が不完全だといくらしても治癒は見込めません。
当分の間、経過をみた方が良さそうですので仮歯のままで良いと思います。そののち被せる
とすれば、担当医の提案通りでよいでしょう。また、抜歯になったのちの選択としては、イン
プラントを念頭に考える方が有利です。
右上については、おそらく将来的に根尖病巣の症状を現してくるものと思われますが、あわ
てて治療する必要はありません。勿論、歯根端切除なんて選択しないで、根管治療が原則です。
返信:2003年2月26日 9:28
昨日質問させていただいた者です。お忙しい中早速のご返答ありがとうございました。
河田先生のご意見とC医院の先生の方針がほぼ同じようであることが分かり、C先生にお世
話になることにしました(当案件では4件目)。
2点質問を追加させてください。
>根管の閉鎖をセメント様のシーラーだけで行っていないでしょうか?
>ガッタパーチャーポイントと呼ばれるゴム様の充填材
治療の際、スポイトの先が細長い器材が2本テーブルの上にありました。また充填後の先生
の説明で、「肌色の針のような形で(ゴム状?)様々な太さのもの」を見せてくれ「あなた
に入れたものは一番太いこれですよ」と言われました。これがガッタパーチャーポイントで
しょうか?
また今回の充填後のレントゲンで、歯根端切除した左1番の根先あたりに以前充填した充填
材の切れ端が見つかりました。が、先生は「このままでも大丈夫でしょう」とのことでしたが、
悪さをする可能性はありませんか?とった方がよいでしょうか?
回答:
ガッタパーチャーポイントを使用しているようですね。問題は、“以前充填した充填材の切
れ端”その他のゴミです。量が少なければ、生体に自然吸収されて消失しますが、多いとなか
なか吸収されずに残って炎症の原因となってしまいます。
今ある“鼻の下のコリコリ”もそのせいである可能性は高いと思います。ゴミのせいか根管
充填が不十分かのいずれかです。従って、まずそのゴミを掻爬して取ってやるのが先決でしょう。
根尖部の掻爬で歯根端切除術とは違いま
すよ。その経過をみてから、再度の根管治療を考えれば良いでしょう。
返信:2003年7月16日 14:46
2003年2月25日に「歯根端切除の後始末」という題でご相談させて頂いた者です。
中切歯2本及び側切歯2本を7年前に差し歯にし、去年左中切歯は歯根端切除をしました。その後
膿嚢再発で、左2本(歯根端切除をした中切歯、側切歯)を今年2月に再度根管治療し、ガッタ
パーチャーを充填し仮歯のまま現在に至っております。
来週様子を見せに歯医者に行きます。差し歯を入れてももういい時期でしょうか?
あまり仮歯のままで放っておくのはよくないものですか?
ちなみに歯茎の見た目では膿嚢はありません。体調の優れない日に多少浮く感じはありますが。
歯茎上部のグリグリしたものは依然あります(切除除去しませんでした)。
感想:
毎週拝見させていただいております。歯根端切除の相談があまりに多いのに改めて驚かされ
ます。
回答:
根管充填後5か月経過していますので、レントゲン的にもそろそろ結果が現れる頃です。
レントゲン的に骨回復の兆し、そして症状の消失が一応の条件です。“体調の優れない日に
多少浮く感じ”ということですのでちょっと危険信号を感じますが、担当医と相談して
決めてください。経過が悪ければ再根管治療が必要です。