日付、時間:2003年3月6日 4:47
氏名: EM
所在都道府県: カナダ
職 業: 主婦
年 齢: 29歳
性別: female
質問:
はじめまして。姫路市出身で現在カナダ在住の者です。今カナダの大学の歯学部の日本人
の先生に虫歯の治療をして頂いています。
右下6番、第一大臼歯のことで質問なのですが、この歯は10年位前に(おそらく抜髄後?)
隣の右下5番、第二小臼歯と共につなげて一つの銀歯になっています。どちらも今のところ
痛みも無く、何の自覚症状も無いのですが、(念のため)レントゲンを撮ってくださった先
生によると、6番のほうに根の病気があり、骨が解けかかっている?とのことでした。私も
レントゲンを見せていただいたのですが、一本の根の先端にほんのごく小さな黒い影
がありました。
私は病名はわからないのですが、「今すぐどうなるものでもないけど、これは医学的には
良くない。」とおっしゃられ、一本の悪いほうの根だけ抜く、ヘミセクションをして7番も
削ってブリッジにしましょうと言われました。7番は健常な歯でできれば削りたくないし、
健在な歯を銀歯にしてしまうのもできれば避けたいです。
また、こちらの保険の関係でヘミセクションは$122(約1万円)ですが、ブリッジは保険
が利かず$2000もするといわれ、先生はヘミセクションだけこちらでして、ブリッジは(実は
9月に日本に完全帰国予定なのですが)、帰国後の日本でする(合計9千円くらい)ように勧
めてくれています。
そこでお伺いしたいのですが、
感想:
歯のことで悩んで気持ちが暗くなっていた時にこのHPの存在を知り、今までの私の”悪くな
ってからお世話になる”という歯医者の定義をくつがえされました。これからは歯に対する姿
勢を正していこうと思います。
“医学的には良くない”というのは確かですが、早急に治療すべきものでもないし、ましてや
健全な7番を削るような選択はできるだけ避けるべきだと思います。
「10年前の抜髄、小さな根尖病巣、しかも残る根尖部に異常なし」ということのようですので
根管治療および根管充填の完成度はかなり高いものと思われます。病巣自体、今後も緩慢に成長
して、いずれ何らかの症状がでると思いますが、その時点でも、まず根管治療を試みて回復を
計るべきでしょう。ヘミセクションはあくまでも最終的な選択であって、
今症状も無く使えている歯に対して行うべき方法ではないように思います。
ヘミセクションをして、なお経過不良で残る根っこも抜歯になった時には、親知らずという
選択も考えられますが、5年の寿命という限界を考慮すれば移植よりも通常の人工歯根の移植
(インプラント)の方が有力です。
もしヘミセクションをしたとして、帰国までの空白は何事もないと思いますが、まず、その
ヘミセクション自体行うことには大きな疑問を感じます。尚、保険証がなく初診処置を行った
場合の負担は、約1万円程度です。
大変申し訳ないのですが、また質問させて頂いてもよろしいでしょうか?
実は右上6番を先日治療したのですが、その際こちらの先生は「日本だと虫歯の黒い部分あたり
しか削らないんだけど、僕は虫歯を染める赤い液体を使っている。」と言われて通常より多く
削られたのか、削っている最中に「あ〜神経が見えてきた!」と言って治療を中断されて、
「神経を抜くか、抗生物質を入れて詰めて経過を見るか選んでください。(可能性はすごく
低いが)万が一痛まない可能性もある。しかしここは日本みたいに激痛がきてもすぐに診れる
所ではないので、私は神経を抜くようお薦めする。」と言われて抜髄を選び、結局先生も削る
前は予想外だった抜髄になってしまいました。
治療前、その右上6番は痛みは全くありませんでしたが、鏡で見ると歯の内側に1mm〜1.5mm
位の黒い点のようなものがありました。抜髄後は麻酔が切れるとほんの少し痛みましたが、痛み
止めは必要なく、今はセメントが詰めてあるのですが、2日後の今は全く痛みません。治療も約
40分〜50分くらいかけて丁寧にしてくださったように思います。そこでお伺いしたいのですが、
29歳でこんな抜髄だらけの歯(今回の右上6番で5本目です)になったのは今までの私の管
理が悪かったのですが、もうこれ以上抜髄などされなくても済むように、きちんとメンテナン
スを行なおうと、今回先生のHPを拝見し心に誓いました。
結婚しているので実家は姫路ですが、今後夫の仕事の都合でどこに住むかはまだ判りませんが、
帰国後は、関西圏なら河田先生の元にできる限り通わせて頂きたいと思っています。
毎回長々とメールを送り、先生の貴重なお時間を使って頂いて申し訳ありませんが、よろしく
お願い致します(お返事はお時間の都合のつくときで結構です)。
追伸:姫路で”河田先生は良い先生だ”とお噂は伺っていたのですが、治療方針やメンテナン
スのことなど知らなくて、今回このHPでよくわかりました。姫路に先生のような方がいらっし
ゃって非常に心強いです。
回答:
“虫歯を染める赤い液体”というのは日本にもありますよ。侵された所は徹底的に取るのが
基本ですが、少々残しておいても再石灰化の可能性があるという見解もあります。特に神経
近くまで侵せれている場合には“再石灰化の可能性”に期待してあえて全部を削り取らない
方法を選択することもあります。何れの方法を選択するにしても、これに関して患者さんの
理解を得なければ不信の原因になりますが、患者さんにほとんど知識がなく理解が得られ難い
のが現状です。
初期の虫歯治療や、歯髄を出来るだけ保存する姿勢に関してはほとんど歯科医側に軍配が
上がります。痛みや異常を感じるのはすでに完全な手遅れで、痛みを感じていない時点でも
すでに神経が侵されている場合が多いことを患者さんがご存知ないということです。
このたび検診した時点で結果としてすでに手遅れ状態であったということを理解していた
だく必要があります。毎月検診していればほとんど手遅れになることはありませんが、それ
でも見つかり難く手遅れになる場合だって存在します。ましてや、1年に1度程度では、
もっと高頻度で手遅れ状態の歯が存在するはずです。
以下の説明、および対処は誠実そのものと言えるでしょう。特に“このまま薬を詰めても
いいんだけど、誰かがやらなくちゃいけない”は、治癒率50%という日本の劣悪な根管治療
事情を考えれば、それよりも確率の高い自信があれば親切な提案だと思いますよ。
初期治療の徹底した欧米では、”悪い要素はすぐに排除する”ことで歯の健康を確立して
います。私も見習うべきだと思っていますし、それをより徹底することにより更に健康な歯
を確保することが可能だと確信しています。不幸なことに、手遅れでも何とかしてくれる
(皮肉をこめて本当に何とかです→その先は地獄だよ)日本の悪しき風習では馴染まない
部分もあります。
河田先生、今回の件では大変お世話になりました。こんなふうに専門家の方のご意見をお
伺いできて、今まで無知でされるがままだった患者側としては、このHPは非常にありがたい
存在です。先生の熱心な治療姿勢(と申し上げてもよいのでしょうか)には頭が下がる思い
です。このようなお考えの先生がもっと増えて下されば、患者側も積極的に大切な自分の歯
について学んだり、取り組んだりできるのではないでしょうか?
とにかく今までの姿勢を正して根気強く自分の歯を守っていこうと思います。すべてはこ
のHP、そして先生のおかげです。本当にありがとうございました。帰国後お世話になるかも
しれませんが、その際にはどうぞよろしくお願い致します。それでは失礼します。