根管治療は成功?
日付、時間:2003年8月20日 2:09
氏名: Y・A
所在都道府県: 東京
職 業: 主婦
年 齢: 40歳
性別: female
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レベル1:根充剤が歯冠部にしかない
レベル2:根充剤が歯根1/2までしかない
レベル3:根充剤が1/2以上あるものの根尖部までは根充されていない
レベル4:根管充填がきちんとなされている
レベル5:根充剤が根尖孔より溢出している
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質問:
左上4・5・6欠損で、2・3と7を土台にブリッジをする予定です。
その為、健全歯の左2と3番を、神経治療しましたが、違和感や鈍痛があり、再治療してもら
いました。違和感はほとんどなくなり、痛みは他の歯だったことが分かり、今、根管充填し
てもらった状態ですが、根管充填材が前回の位置まで来ていないようなので、気になってい
ます。
前回は根の先まで薬がきれいに入っていると言われましたが、今回はレントゲンを見ると、
そこには少し届いていなくて、前の位置が「・」のように見えました。「・」のように前の
薬が残っていることと、薬が届かなかった部分が空洞になっていることが気になります。根
尖病巣の原因にならないでしょうか?
先生は、前の位置までは届かなかったが問題ないレベルまで入っているし、前の薬は吸収さ
れるとか、空洞はそのうち骨?で埋まるとか言ったと思います。あんまりやり直すと、土台
としての耐久性が悪くなるようなことも言われました。でも、私は、そもそも今回このよう
なブリッジをすることになったのも、もともとブリッジの土台であった4番に病巣ができたこ
とが原因なので、とても気になります。
確かに、「根管治療の実態」というページを見ると、
レベル4に近いところまで入っていたと思うし、もしかしたら前回は根突より少しはみ出した
レベル5だったかもしれません。はっきりした事はわかりませんが、このレベルなら充填しな
おしてもらう必要はないでしょうか?
先生の言う通りなのでしょうか?
明日20日に歯医者に行くつもりです。お忙しいところ申し訳ありませんが、早急に教えて下
さい。
感想:
こんなに詳しくて参考になるhpを見たことがありません。感動しました。
とかく根管治療にはトラブルが付き物ですから、メインテナンスに励んで抜髄という処置を
極力回避するよう心がけてください。今回のケース、話しの内容からおそらくかなりレベルの
高い治療だと思います。話しの内容と痛みがないことから、おそらく根管充填は大丈夫だろう
と思います。
レントゲン的に大丈夫に見えても、結果として不備があれば前回のように症状があります。
逆に推測するなら、症状があれば不備を疑い、症状がなければ合格ラインに達しているという
ことです。根管に空洞があれば汚物が貯留して根尖病巣を作ります。しかし、今回の空洞は、
根管の外、つまり骨の中ではないでしょうか。
おそらく再度の根管治療により、前回の根管充填材が根尖部分から押し出されてしまったも
のだと思います。根尖孔外つまり骨の中に押し出された異物は、それ自体炎症発生の原因には
なりますが、元々生体親和性の良い材質ですので差ほど大きな炎症発生原因にはなりません。
また、骨の中は血液が正常に通っている部分ですので多少の異物は生体に自然吸収されてしま
います。そして骨内の空洞も周囲に炎症を起こすべき原因がなければ、例えば今回の根管充填
がレベル4で的確であるとして、正常に治癒に向かうものと思われます。
返信:2003年8月20日 17:08
早急なご返答と丁寧な内容に改めて感動いたしました。お忙しいところ本当に有難うござい
ます。河田先生にもう少し質問させていただきたくなり、今日、歯医者に行くことになって
いたのをあさってに変更しました。さっっそく質問させていただきます。
“根管に空洞があれば汚物が貯留して根尖病巣を作ります。しかし、今回の空洞は、根管の外、
つまり骨の中ではないでしょうか。骨内の空洞も周囲に炎症を起こすべき原因がなければ、例
えば今回の根管充填がレベル4で的確であるとして、正常に治癒に向かうものと思われます。”
ということですが、根管充填が完璧にレベル4とはいかなくても近い状態で、根管の中に充填材
の残りや空洞があるとしたらどうなのでしょうか?
2本神経治療したうちの1本は骨の中だったように思いますが、もう1本はちょうど根の先あたり
で、根管の中だったように思います。もう一度主治医にも確認しようと思いますが、もし根管の
中に充填材のかけらや、空洞があったとしたら、根管充填をやり直してもらった方がよいのでし
ょうか?
それとも、レベル4にほぼ近い形であれば、やりなおすことのデメリットを考えて、主治医が言
うように土台としての耐久性が悪くなるなどの理由で、このままの方がよいのでしょうか?
主治医が、レントゲンを見ながらしばらく考えていた様子や、1回目の神経治療後のレントゲ
ンと比べながら前の方がうまく入っていたようなことを言っていたので、完璧ではなかったのか
なと不安になりました。その場で、やり直した方がよいのか質問したところ、安心する為にこれ
をやり直すことはばかげているしデメリットもある。心配するほどの状態ではないというような
ことを聞きました。おそらくレベル4に近い状態だと思うのですが、河田先生はどのように推測
され、どう考えられますか?
- 実は、去年の9月から神経治療を始めて、どこかはっきりしない痛みと違和感があると言うこ
とで、様子を見ていてことしの6月に神経の再治療をして今に至っているので、長い治療に疲れ
ています。ようやく神経治療は終盤だとは思いますが、ブリッジがかなり無理のあるもので、
左上2番は1番と1〜2ミリ重なる形で内側に引っ込んで生えていて、下の2番は外に出て生え、
逆交合になって噛み合っていません。左上3番は2と並びながらも少し出ているので、下の歯と
は正咬合にはなっていないが、噛みあっています。左上7番は下の歯が欠損しているので、噛み
あっていません。
主治医には、2通り提案されました。
ひとつは、下2番の神経を取って差し歯にして、上2番を前に出し正咬合にする。この場合2・3
番が下と噛みあいブリッジの負担が分担されるメリットがある。7は支えとなる。だが、健全歯
である下7番の神経をとらなければならないし、上2番は前に出すので根にその分の負担がかかる
と言うデメリットがあり、また神経治療で、長引く可能性がある。
もうひとつは、このままの歯並びでブリッジにするという選択。この場合、すぐにブリッジに
できる。今顎関節症がひどくなってきていることを考えると、すこしでも早くしたほうがよい
事や、犠牲が少ないと言うメリットがある。ただ、上3だけがかみ合っていて、2・7番は支えと
しての土台となり、3番はブリッジとしての負担が大きくなるというデメリットがある。ブリッ
ジ自体も2が少し引っ込んできれいなアーチになっていない分作りにくさはある。
どちらの選択にもメリットとデメリットがあるので、どちらがよいかはっきりしないが、顎
関節症のことや、9月からの神経治療の今までの大変さを考えると、このままの歯並びでした
方がよいかもしれない。何が結果的によいのかはわからないので、このままの歯並びでやること
になりそうです。河田先生のご意見もお聞かせください。
- また、ずっと鈍痛があったのは、左下の6番欠損を4・5番を土台にブリッジしている5番だと
分かってきたので、今度レントゲンをとってみてもらおうと思います(問題のブリッジする所
の下です)。歯を磨くと少し痛くなることがあり、何もしなくても時々鈍痛があります。でも、
我慢できる程度です。クラウンより歯茎が少し後退してきているようで隙間があるし、歯茎を
触ると少し痛い感じです。神経はある歯だと記憶しています。セラミックのブリッジなので、
レントゲンでははっきりしないのではずすと言われたらどうしようかと思っています。どうい
う治療が予測されるのか教えて下さい。我慢できる程度ならこのまま様子を見ながら使うという
選択もありうるのでしょうか?それとも、ほうっておくと悪化するだけで、早く処置しないと
いけないのでしょうか。
- いろいろはっきりしない質問ばかりで申し訳ありません。早急に教えていただけると有難い
です。よろしくお願いします
回答:
とりあえず世の中ではそう簡単にめぐり合えないような完成度の高い治療みたいなのに、今そ
れ以上のものを求めるのは酷な話しです。勿論結果次第では「あの時…」も可能性としては存在
しますが、その一瞬の不安と引き換えにとんでもなく大きなものを失うリスクが存在することを
忘れてはいけません。仮に根管治療に不備があったとして、将来再治療になったとしても根管治
療の腕次第で今と同じ確率で治癒します。成功する可能性のあるものを一瞬の不安のために無用
な治療をして台無しにするリスクも考えるべきです。
歯並びを変えることに関しても同じです。何のための歯並びなのか。審美のためならば、例え
その歯の寿命を縮めたとしてもあきらめはつくでしょう。顎関節症の懸念にしてもそれをいじっ
たからといって治る見込みはほとんどありません。それよりも、いじったことにより一層悪化する
懸念さえあります。顎関節症の項で常々申し上げているとおり、現状をそのまま生涯保ち続ける
努力こそが最善の治療だと認識しております。その観点から、メインテナンスを継続して、更なる
環境悪化を有効に阻止することこそが最善の選択だと確信しています。
鈍痛も本当にブリッジに問題があるかもしれませんが、歯石除去を始めとしたメインテナンス
不足によるのではないでしょうか。極論を言えば、10年もすれば、今何ともないと思っている歯
が次々と失われていく状況をもっと深刻に考えて、それらを確実に生涯保存できる方向に転換す
れば、老い先短い問題歯のことなど二の次だと思います。
返信:2003年8月24日 2:19
早速、お返事いただいて有難うございます。本当に、先生のおっしゃる通りだと思いまし
た。説得力あるお話しに、不安な気持ちが落ち着きました。
昨日、歯医者に行って、左下6欠損で4・5土台にしたブリッジ(鈍痛のあるところ)をレントゲ
ンで診て貰いましたが、4・5は神経のある歯でとくに異常はないそうです。なぜか、6のダミー
の歯をコツコツとミラーでたたかれると一番痛い気がして、5も痛い気がします。助手の人が、
たぶん超音波でそのブリッジの周りをきれいにしてくれて、主治医が注射器で薬を入れてくれ
ました。
もう1年くらい前から1週間時々痛んで1週間は何ともないようなことを繰り返していましたが、
10段階で4か5位だった痛みが2か3位になった気がしますが、まだ痛みがあります。助手の人
(歯科衛生士ではありません)が3〜5分位取ってくれただけなので、表面的な汚れを取っただ
けだと思います。歯茎の奥の歯石を取ってもらった方が良いでしょうか?それとも他に痛みを
とる良い方法がありますか?河田先生ならどのように処置されるのでしょうか教えて下さい。
また、左上2番の神経を抜いた歯に痛みがあると思っていたのが下の歯の痛みだった事がわか
りひとまずほっとしているのですが、歯をこすり合わせたときにアルミホイルを噛んだ時のよ
うなキ−ンとする感じが時々あります。主治医は、良くあることで、気にしなくて良いと言い
ますが、3番の歯は同じように神経を抜いたのに何ともありません。このような感覚は良くある
ことで、かぶせるとなくなるのでしょうか?
今度この歯は、土台を入れて型を取る予定です。お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお
願いします。
回答:
まずそのブリッジが脱離していないかを徹底的に調べてみます。それと、ダミー部分も含めた
歯石除去。それで何ともなければ経過をみて考えるという方向だと思います。“アルミホイルを
噛んだ時のような”というのは異種金属が接触したときに発生するガルバニー電流と呼ばれるも
のでしょう。これは、最終的な補綴物を入れた段階で消失する可能性が高いと思います。また、
その違和感が根管治療に由来している可能性も否定できませんが、過剰な心配をしても始まり
ませんので、ダメだったらその時根管治療と開き直って治療を進めても良いのではないでしょう
か。