このコーナーでは、日常臨床で心に残った症例を紹介します。臨床こそが、私の恩師です。
重症…総入れ歯目前
No 1 No 2 No 3 No 4 No 5 No 6 No 7 No 8 No 9 No 10

歯周外科手術 + 連結固定
48歳 女性 上顎は壊滅状態、下顎も危機的状態
16年後 64歳
 48歳で上顎は壊滅状態、下顎の歯槽骨も1/2以上破壊せれています。
一般には歯周外科手術の対象にもならない状態です。随時1本1本抜歯して入れ歯の面積を 増やしていくか、一層のこと思い切って全部抜歯して上下総入れ歯にするかを選択しなくては なりません。長く保っても5年がせいぜいという状況です。

 私の場合、このようなケースであえて、抜髄の上歯周外科手術(フラップ・オペ)を行い 補綴物による連結固定を行います。勿論、術後のメインテナンスを伴うことは言うまでも ありません。とは言っても、毎月歯石の除去(スケーリング)を継続するだけです。
 抜髄することは歯質をもろくしたり、根尖病巣を作ることにつながりますので賢明な選択 でないように思いますが、こと歯周疾患の進行傾向の強いケースでは神経の存在が歯周疾患 進行を助長し早期の喪失をもたらします。この事実 (有髄歯・無髄歯)は一般に知られていませんし、残念なことに コンセンサスも得られていません。「歯周疾患の進行が罹患象牙質の変質である」という 私の仮説に基づけば十分理解が得られるはずです。このホームページの趣旨は、この仮説を 広めることを目的としていますので、興味のある方は隅々まで読破してください。

 それはともかくとして、このような重症の歯周疾患であっても手術とメインテナンスに より16年間機能しているわけですが、できることならもっと早い時期からメインテナンス に取り組むことが望まれます。

次ページへ進む