「歯周疾患罹患部の象牙質が変質している」この仮説を基に研究を進めています。

研究概要
歯槽骨再生への道のり


★ はじめに
 病院勤務時代に、先輩のお医者さん(医科)から「歯医者さんの考えとることは、よう分からん。」と 言われたことがありました。同じ医学の一分野でありながら医学的な常識で見た時、歯科で行って いる処置や考え方がどうも納得できないという意味でした。しかし歯科医業を専門とする集団の 誰しもが歯科的処置の正当性を主張するものですから、あえて反論する気力もないし、専門家が いうのだからそれなりの理論があるのだろうと半分あきらめにも似た納得をされていたようでした。

 長年歯科治療に携わって色々な症例や疾病の発生過程や治癒過程をを観察し考察を重ねて いくなかで、“歯科界の常識や解釈”と異なる解釈や理論に導かれていきました。  私の“解釈や理論”を医科系の先生に相談するとことごとく「正しい」と答えてくれるのですが、 歯科の先生には全く同意されないのが現実です。「自分の理論は絶対正しい」と確信する反面、 歯科界で全く受け入れられない現実に「ひょっとして自分は間違っている?」という不安な一面も あります。

 その場限りのあまりにも一貫性のない歯科の解釈(失礼(^^ゞ)。特に象牙質知覚過敏症・ 上行性歯髄炎・根尖病巣・歯周疾患・カリエスなどの成因とか治癒に独特な解釈が為されて います。“炎症は異物に対するアレルギー反応の結果”というたった一つのキーワードで 説明する私の解釈との違いです。

★ アレルギー
 スギ花粉・家のホコリやダニ…何でもアレルゲンです。「何でもアレルギーのせいにして! 便利な言葉や」と思っていました。
眼科の先生と話をしていると、「昔は眼の炎症を“細菌感染”と考えていたけど、今はアレルギー が原因と言われてるよ。」「眼に飛び込んだ異物の親和性によって炎症の程度は違うけど、 セラミックなんかだとあんまり炎症を起こさないね」
折りしも、セラミック(バイオセラム)のインプラントを行っていた頃ですからセラミックの親和性には 納得するものがありました。セラミックよりはチタン、チタンよりは免疫処理した他家移植(自家移植 は申すまでも無く)骨の再生が認められます。「炎症に程度= 骨の破壊は親和性の違い!!」そういえば歯牙移植に際して、「膿漏歯はダメ」 というのは定説です。歯周疾患罹患部分は如何に(現状では)表面処理を行っても骨の近接は 望めません。健全部分は癒着までするのに!
 歯周疾患罹患歯を抜けば、炎症は治まり骨は再生します。「健全部分が再生して、罹患部分が 再生しない」ということは「歯周疾患罹患部分が生体にとって異物と認識されているからでは?」

★ 炎症
 「炎症は生体の防御反応である」大学で教わった医学の常識です。講義を受けながら≪痛みの 原因であるあの忌まわしい炎症が何故防御反応なのか?≫と釈然としない気持ちで聞いていました。
 生体に異物が迷入した時、“異物の排除機構が働いて異物を外(体外)に排出する” “排出できなければ肉芽で取り囲んで対応する(被胞化)”これにはおぼろげながら納得したものでした。

   大学を卒業した頃の私は“鯛釣り”に熱中していました。「クソ!!大きな鯛を逃がした!」 糸の点検を怠った私が悪いのです。それまで小物しか釣ったことのない私には糸の点検など 全く無用だったのです。「あの鯛、針と鉛を着けたままどうするのかな?」「針の刺さった部分が 腐ってそのうち糸も鉛もはずれるから心配はいらん! 腐った口もそのうち治るワ。」
 なるほど、炎症が起こって自らの組織を破壊することで異物を排除するということですね。

 「炎症の成立には細菌が関与する」これも確かに医学の常識ではありますが、“細菌の 関与”以前に“異物の存在”や“アレルギー反応の存在”が不可欠のようです。  「バイ菌が入って化膿した」という表現は一般的です。ナイフの切り傷はいくら深くてもあまり 化膿しません。木の尖った部分でケガをした時には化膿しやすいから注意しなさいと子供の頃 よく言われたものでした。ナイフで切った時の方が「バイ菌は入りたい放題なのに?」ともち続けた 疑問が解決したようです。
 「ナイフは異物を残さないが、木は木屑(とげ)を残す」結局、異物とアレルギー反応の存在が ポイントなんだ。

★ 歯槽膿漏
 歯周疾患…とりわけ歯槽骨の破壊は炎症が原因であることには異論はありません。ただ、その 炎症が何によって引き起こされたかというところで意見が分かれています。
 「歯周疾患の原因は歯石」と言われた時代もありました。1960年代頃だったと思います。 それがどういゆ訳か「歯石には病原性がない→細菌の多く生息するプラークと細菌そのもの が歯周疾患の原因」というふうに代わってきました。
 歯石を取っても一向に回復しなかったためでしょうか?手術を多く手がけた私からみれば、 「取った積もりでも取りきれていないから一向に回復しない」 と思えてなりません。また、「無菌動物では炎症が成立しない」ことも大きな論拠だと思います。 従って現在の歯科界では、歯周疾患の原因菌の特定や口腔内の無菌化が研究の主流です。
 菌量を減らすことは大切ですが、全く無菌化することは不可能です。また特定の菌種だけを 撲滅することも不可能ですし、菌交代現象を引き起こして問題の解決にはならないと思います。 それ以前に、この進んだ科学の時代にサンプルの豊富な口腔内の大きな細菌が、しかも世界の 研究者を総動員して特定されないのが現状です。「元々、歯周病菌といわれるような特定の細菌 は存在しないのではないでしょうか?」私は、雑菌感染だと思っています。従って、雑菌の撲滅は 不可能なのでは…。

 歯石を除去すれば炎症は治まります。「歯石には病原性は 無いが、細菌の生息環境を提供しているから歯石の除去が消炎につながる」というよう に解釈されていますが。 “歯石を漁礁と勘違いするな!!”と私は反論しています。 あの忌まわしい歯石こそ、最大の異物ではないでしょうか。抜歯窩に歯石が迷入した時、歯石が 眼に飛び込んだ時、激しい炎症が起こります。「歯石に付着した細菌が」という声が聞こえてき そうですが、もし滅菌した歯石を眼や抜歯窩に入れたらどうなるでしょうか? 実験したことがないので何ともいえません。

 口腔外科在局中の出来事でした。嚢胞摘出後開放創にするために滅菌したガーゼに消毒薬 を漬して、摘出後の嚢胞窩に挿入します(勿論抜歯窩に入れるガーゼドレーンも同じです)。 術後数日程経っても痛みが引かないのです。先輩に診てもらったところ、先輩は黙って嚢胞窩の 奥に残ったガーゼを取り出して形ばかりの洗浄を行って、「もう大丈夫、明日には痛みは取れます」 と患者さんに説明していました。
 ガーゼドレーンは、通常翌日か翌々日に段階的に撤去します。当時、長い包帯のようなガーゼを 何本か括って挿入していたのですがその最後のガーゼが解けていたせいか嚢胞窩に残ってし まったのが炎症の原因だったのです。如何に滅菌して消毒薬に漬したガーゼといえども生体内に 残留すれば異物となって炎症の基になるのです。

 「お腹の中にハサミを置き忘れた」というと、予後が悪くって当然。明らかな医療ミスと誰でも 思いますよね。無菌操作中で、滅菌したハサミでも!!
人事のように笑って済ましていますが、実はこの行為を日常に行っているのが歯医者なのです。 神経を取ったあとの根管内に、お世辞にも滅菌したとは言えないワッテ(綿)に消毒薬を漬して 経過を見る。場合によってはそのまま治療終了。これでは根尖病巣ができるのは当然です。 それでも根尖病巣出来ないケースは、生体の抵抗力がやたら強くって“根管口の自然閉鎖” という被胞化を行っているだけ、或いは“歯根嚢胞”という被胞化を行っているだけであることに 気づいていないのではないでしょうか。
 お医者さんの「歯医者のヤルことは分からん」という言葉の原点はここにあります。

★ 歯周疾患組織の再生
象牙質の変化
FOp
FOp
罹患部と非罹患部の相違
サフォライドによる染色
 生体にとって最悪の異物?である歯石を取って(スケーリング・手術・方法はともかく)、以後 歯石が再び付着しないようにメインテナンスを続ければ、炎症もなく 歯槽骨の破壊は停止します
 一方、原則的には歯槽骨の回復はありません。しかし、ほんの1mm以下ですがわずかな歯周 組織の回復があるのも事実です。この回復したところとしないところの違いは何なのか?? 私は、「歯根の性状の違い」だと思います。「抜歯をす れば骨は再生する」とか「歯周疾患罹患歯は移植できない」という事実と同じことが一つ の歯(根)のなかで起こっていると解釈します。

 歯周疾患罹患部分の歯根表面の性状が、健全な歯周組織の再生を妨げているという考え方 は歯科界でも一般的です。セメント質内のエンドトキシンもその一つです。 動物実験では、セメント質を除去して健全な象牙質を露出させても歯周組織は再生します。 しかし実際の臨床では、ルートプレーニングや酸エッチングによる根面処理、もしくは罹患部分の セメント質を除去しても歯周組織の再生は起こりません。「動物は 生命力が強いから」と説明されていますが本当でしょうか??

 セメント質の除去だけでは物足りないという動きもあります。 「歯根デブライドメント」根面の覚醒という考え方でアメリカでは結構盛んなようです。
「象牙細管中に細菌の侵入」という研究報告もありますが、 私は“象牙細管内に存在するであろう有機質の変質(腐敗)”こそが“異物”の根源だと 思います。
 歯の構成成分のうち、無機質はともかく歯髄神経の延長ともいえる象牙細管内の有機質が、 “歯石”という最悪の異物に接した場合有機質が 変質するであろうことは想像に難くありません。 ただ私は開業医ですので、この“歯周疾患罹患部分の象牙細管内の有機質変質”を証明する ことができません。研究設備の整った大学病院や民間研究機関ですと簡単に証明できるのでは ないかと思い色々と話を持ちかけるのですがなかなか取り合ってもらえません。
 「研究機関を動かすにはそれなりの根拠と実績がないと」と思い開業医に出来る臨床事例の 収集をこのホームページに蓄積・公開している次第です。とは言っても一朝一夕にできるはずも なく“無限地獄”ともいえる泥沼をさ迷っています。

★ 異物化の解除
 炎症を起こす最悪の歯石を除去したあとも、炎症を起こす程ではないにしろ正常な歯周組織 の回復を妨げているのは、この「象牙細管内に存在するであろう有機質の変質」だという 仮説を基に組織再生の具体的な方法を考えたのがレーザーによる根面処理とかコーティング材 による象牙細管封鎖です。

 生体親和性が良く、骨と癒着するというか一体化するハイドロキシアパタイトの製造方法の一つに 牛骨を1300℃程度に温度を上げて有機質を蒸散させる方法があります。この方法を臨床で応用す るとすればレーザーが最も効率が良いという判断の基に、 根面の温度を上昇させて象牙細管内の有機質を蒸散させて親和性の良い無機質だけを残す試み です。 使用したレーザーは、連続波のNd:YAG LASER(波長1,064μm、最大出力40WのNd:YAG CONTACT LASER;エス・エル・ティ・ジャパン社製)です。
 骨組織の再生、もしくは近接までの好結果が得られていますが、完全な回復には至っておりません。 レーザーの照射方法や組織の変化を追跡調査すればもっと効率の良い手段が発見できると確信して いますがこれも開業医には限界があります。

 一方組織親和性の良いコーティング材(UDMA系光重合 レジン)による象牙細管封鎖は、主に象牙質知覚過敏症に 使用しましたが、歯周疾患罹患部の根面処理にも一部応用しています。  コーティング材の親和性と永続性に問題があって、歯槽骨の近接と破壊の停止という結果で明るい 見通しがあるものの素材の開発(勿論企業に依頼)にも限界があって“今すぐに”というわけには いきません。

よろしく!
歯周組織の正常な回復には至りませんが… 術前 (1994.11) 術後1年 (1995.11)

★ 仮説に基づく臨床症状の解釈
 「痛みと組織破壊は炎症の結果」→万国共通?
 「炎症の原因は異物に対するアレルギー反応の結果である」→医学の世界では常識?
 「歯周疾患罹患部の象牙細管内の有機質は生体にとって異物である」→ひょっとして私だけの常識?

 この仮説に基づくと、“インプラントの感染”、“根尖病巣の成因”、“象牙質知覚過敏症のメカニズム”、 “上行性歯髄炎症の成因”が容易に説明可能です。また場合によっては“ムシ歯の成因”までも 範疇に含んだ歯科の常識を大きくくつがえす可能性を秘めた理論に発展する可能性もあります。

現状では、それぞれの現象に“歯科独自”の解釈が施されて、その場しのぎの弁明に始終している ような気がしてなりません。「炎症の原因は異物に対するアレルギー 反応の結果である」という解釈(キーワード)を一つ適用するだけで全てが明快に 説明可能だと思います。

 ☆ インプラント
 歴史的にみると、生体の親和性が良いということで“金”や“銀”更に古くは“黒曜石”が素材として 使われたことがありました。脱落を防止する様々な工夫も考案されています。しかし、今の“純チタン” に比べると親和性の良さは比較になりません。結局、それらは実用には至らなかったようですが、 その原因は“親和性の悪さ=異物性の強さ”だったように思います。
 その点、アパタイトセラム(旭光学)は親和性に優れていましたが素材の加工性ともろさに欠点 がありました。バイオセラム(京セラ)は強度には問題がなかったものの親和性にやや劣り単独 植立には至りません(隣在歯に支持を求めた結果臨床上の有効性は十分評価できます)。 結局“純チタン”という成り行きですが、その前にバイオセラムのポーラスタイプというのが後々の インプラントの方向を決める重大な臨床結果を収めていますので一言触れておきたいと思います。

  ポーラスタイプ  従来のバイオセラムは表面性状が“ツルツル”でを破壊するほどの異物性もない代わりに接着も しないという限界がありました。それを解消すべく表面に多孔質の酸化アルミナをコーティングする ことにより、骨との接合面積を広げて単独植立を可能にしようという発想でした。
結果は、うまくいけば(私から見れば余程生体の抵抗力が強い場合)は“癒着”という形で強固な 植立が可能だった半面、その多くは初期の激しい炎症のために撤去を余儀なくされたように思います。 この失敗の原因は“多孔質”だったと回想しています。これは同様の発想から生まれた骨補填材 (ハイドロキシアパタイト→HAP)の多孔質にも共通して見られた現象です。

 親和性の良いとされる材質も、単結晶もしくは表面が“ツルツル”な形態では考えられない現象です。 おそらく、“多孔質”部分に貯留した血液等が変質して異物と認識される状態になったのではないか と推測しています。数年後に起こるコーティングされた多孔質部分の消失(貪食)、アパタイトの 排出や炎症などが異物と認識されたことの証です。

 この苦い経験を今後に引きずってはいけないと思うのですが、インプラントの世界が接合面積を 拡大するために表面性状を“ザラザラ”にする傾向を危惧しています。 素材さえ良ければ、歯牙移植のように如何なる条件でも骨組織の回復が見込める事実をもっと 真剣に考えて欲しいと心から願っています。
失敗の原因を、切削時の発熱とか、術後管理という前に 親和性の良さというか異物性の排除という観点で考えて欲しいと思います。

 ☆ 根尖病巣
 原因は根管内に貯留した“汚物の異物性”だと思います。従って、汚物の除去と再び汚物の 貯留場所とならないように綿密な死腔閉鎖が治療の基本です。細菌の数は少ないに越した ことがないので極力無菌操作が望ましいとは思いますが、細菌の存在は“二の次”です。 この操作が完璧であれば、即日充填が可能です。一部からお叱りの言葉も頂いておりますが 感染根管治療の予後が、即日充填で90%という成果の秘訣はここにあります。  ちなみに10%の失敗は、根管治療不可能なもの・血液の混入・糖尿病などの免疫力抵抗力 の低さ・それと完璧性の欠如などが原因だと分析しています。  あくまでも細菌の進入が原因とする一般的な解釈では、“細菌の 存在”や“細菌の侵入経路”を証明することが出来ない現状を考えると問題はいつまでも“霧の中” ではないでしょうか。

 ☆ 象牙質知覚過敏症のメカニズム
 この問題が一番歯周疾患進行と関わりの深い問題だと認識しています。
その前に“レジンの為害作用”という問題がありました。歯に詰める レジンの構成成分であるモノマーが神経に作用して知覚過敏、更には歯髄壊疽に 至らしめる現象です。「モノマーが象牙細管を伝って、歯の神経を腐らせる」 というように解釈されていますが、何か釈然としない気持ちで大学の講義を聴いていました。 最近は、レジンの親和性が向上してあまり気にすることはなくなりましたが、開業当初(1980年代) は臼歯部の1級窩洞ですら治療するのが怖い状況でした。
 今から思うと、神経を腐らせるほどの為害作用があるならば当然、象牙細管内の有機質 (コラーゲン)を腐食したことは間違いないと思います。モノマーの作用が直接歯髄に届いたか どうかは別にして、腐食した象牙細管内の有機質は異物として認識されて歯髄の炎症を起こした だろうなと解釈することができます。
炎症はあくまでも細菌の侵入によるという考え方では、ムシ歯 による歯髄の炎症は説明できても“レジンの為害作用”は説明が出来ないのではないでしょうか。

素人が「神経が出たせいか歯が滲みようになりました」という表現をなさいます。「距離の問題 ではないですよ」といつも説明していますが、専門家の歯医者でさえ“外界と歯髄の距離”を 重視しているように見受けられます。
「ムシ歯や実質欠損がないのに歯が滲みる。」まさに“象牙質知覚過敏症”は万人にとって 不可解な現象です。そこで登場したのが、象牙細管内の組織液が 波うって外部の刺激を伝え易くなるという“動水力学説”という奇抜な解釈です。
“レジンの為害作用”同様“歯石の為害作用”で象牙細管内の有機質が変質(腐食・腐敗)したと すれば、歯髄に炎症が起こって知覚過敏もしくは歯髄壊疽に至ることは十分説明が可能です。

 知覚過敏に有効とされる治療方法のなかに、フッ化ジアミン銀(サフォライド)の塗布があります。 開口した象牙細管を銀が閉鎖するというのが効果の根拠と されています。それ以外にも古くはホルマリン、最近ですとGLUMAというのが効果を挙げています。 この効果の説明は一体どうなっているのでしょうか?
 これらの薬剤に共通した薬理効果は、“蛋白凝固作用”です。変質した象牙細管内の有機質を 凝固して異物性を減少させると解釈すれば全てが解決します。また、凝固した有機質は周囲に 存在する元素を取り込んで石灰化程度を更新し無機質の度合いを増して、ますます異物性を減少 するであろうことは“化石の成因”をみても推察されます。

 知覚過敏に対するレーザーの効果も、パルス波による歯髄賦活作用 とか解釈されています。私はあくまでも変質した有機質の蒸散(無毒化)による効果だと 思いますので、あえて連続波のレーザーにこだわってみました。

 これらの研究成果が全て、“象牙細管内の有機質変質”の可能性を示唆するものと確信しています。

 ☆ 上行性歯髄炎症の成因
 上行性歯髄炎症の成因は一般に歯周疾患の進行が根尖部におよび 根尖部神経を破壊すると解釈されています。このような現象が全くないとは否定できませんが、 カリエス・レジン・打撲などが全くないのに“歯髄の壊疽”が観察されます。臨床経験の浅い頃には 原因不明の“死”としてうやむやのまま過ごしてきました。
 メインテナンスを長年続けていくなかで、“歯髄の死”は象牙質知覚過敏が原因であると思われる 症例やそれまでの進行状況から考えられないスピードで 根尖部に至る骨破壊に遭遇して従来の解釈に疑問をもつようになりました。

 学会でも、象牙質知覚過敏症の原因が歯髄の炎症であるかどうかも明らかにされていない現状 ですが、象牙質知覚過敏症の末期には歯髄の死があることは臨床上間違いのない事実だと 思います。歯髄が死んで汚物(異物)となれば、異物に接した根尖部に炎症が起こって骨組織 を破壊する(根尖病巣の成立)ことは容易に説明できます。細菌の 感染経路云々は必要ありません。生体内いたるところに細菌は生息しているからです。

 この“上行性歯髄炎症の成因”を明らかにすることも“歯周疾患の原因”を特定し、治療方法を 確立する上で大切なことだと思います。


 本文と同様の趣旨として−理論の展開−、また、 図式対応させた歯周疾患研究骨子を掲載しています。 まだまだ完成していませんが、このホームページ全体が同様の趣旨で構成されています。

 私の考え方には、異論・批判など色々あろうかと存じます。
kkdental@hips.or.jpにメールを下さい。 可能な限り対応させていただきます。メールは、歯科医学発展のため原則として公開とさせて いただきますのでご了解願います。
氏名、年齢、所在などを明記していただければ幸いです。

1999年9月12日